スキルゲ!!

チョーカー

『普段』からの『異常』

 それから1週間、僕は滝川晴人からの襲撃を受け続けていた。
 受け続けていた……らしい。
 らしいと言うのは、僕にはその実感がなかったからだ。
 滝川晴人から受けた襲撃の数は42回。一週間で42回という事は、1日平均で6回。
 そんな数の襲撃を、僕に気づかれないように、三島さんと東郷さんは撃退していたらしい。
 芦屋先生が太鼓判を押すだけあって、2人は凄腕だった。
 そこまで撃退されても生存し続ける滝川晴人も凄いと言えばいいのだろうか。
 僕が平凡で平和な一週間を送っていた裏側では殺伐とした戦いが繰り広げられていたと思うと、薄ら寒い感じもするのだが、しかし、イマイチ実感が湧いてこない。
 狙われている身ながら、どうも他人事に感じてしまう。
 もう自分とは無関係。自分とは切り離された事件。もはや過去の出来事として処理しようとしている。
 そりゃそうだろう?誰だって死にたくない。誰だって自分が襲われるなんで考えたくもない。
 それも相手は人間ではなく、モンスターだなんて……。
 現実的ではない。あり得ない。
 だからそう……
 自分の中では無理やり終わった事にしてしまったのだ。
 そして油断した。致命的なほどの油断。
 その日は不運が重なった。
 買ったばかりの目覚まし時計を30分ほど進めてセットしてしまい、それに気づかず起きてしまった。
 普段なら携帯電話の時計で気がつくはずが、夜に充電を忘れてしまい、携帯電話は沈黙していた。
 正確な時刻を知る機会はあったはずなのに、なぜかその日は不運が重なったとしか言いようがなかった。
 普段よりも30分早い登校。
 普段ならば朝練を終えた体育会系の部活に所属した生徒が教室にいてもいい時間帯。
 しかし、普段とは違い、教室には誰もいなかった。
 これが奇妙な出来事だとわかっている。
 あまりにも『普段』と違う。たぶん、意図的に『普段』とは変えられているのだろう。
 それに気がついたのは、僕が無人の教室に入って暫く経過した後の事だった。

 僕の机の上。その上に置いてあるのは、生徒手帳。
 てっきり、僕が前日に落としたものかと思ったけれども、自分の生徒手帳は胸ポケットにしっかりと収まっていた。
 じゃ、この生徒手帳は誰の者か?手に取り中を開いてみると……誰?
 生徒手帳に貼られている写真は女性。名前は橘あかね。
 第一印象はどこかで見た事があるような少女。……そうか、クラスメイトか。
 しかし、クラスメイトの生徒手帳が、どうして僕の机の上に?
 常識的に考えて、前日に紛失した生徒手帳を拾った人がいて、その人が近くの机に置いた。ということなのだろう。そう結論付け、彼女の生徒手帳をどうしたものかと悩み始める。
 黙って教卓の上に放置しとくか?
 直接、持ち主に渡すという選択肢もあるが、まだしゃべったことのない相手、それも女子に気さくに話しかけれるほど僕のコミュニケーション能力は高くない。
 女子生徒の生徒手帳を持て余していると、何が落ちた。
 どうやら、生徒手帳の中に何か、挟んでいたようだ。
 白いメモが一枚。ヒラヒラと地面に舞い落ちていく。
 それを何気なく拾い上げる。その最中にメモに書かれた文字が目に入る。



 『彼女は人質だ。無事に解放してほしければ、今すぐに体育館へ来い。
 無論、誰にも伝えず1人だけでだ。違えれば、彼女の命は保障しない。 
 滝川 晴人より』



 

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