スキルゲ!!

チョーカー

物語は彼の視線で始まった

 休日の街中。いつもと変わらない平凡な空気が流れていく。
 人ごみの中、1人の少女に目が止まった。
 休日でありながら、制服姿。部活帰りだろうか?
 しかし、彼女から体育会の雰囲気は皆無だ。
 髪は三つ編みで1つに纏められている。やや、大きめのメガネで顔を隠している印象がある。
 なるほど、よくよく見れば整った綺麗な顔の持ち主だ。
 そんな彼女に二人組みの男が近づいていく。
 金髪の短髪。黒髪のロンゲ。
 チャラ男という表現はよく似合いそうな2人組み。
 2人は彼女に対しておどけた、わざとらしい表情を浮かべ、なにやら話しかけている。
 どう見てもナンパ以外の何者でもない。
 彼らと少女に声をつけるとしたら・・・・・・。

 「やっほっ、彼女暇してる?」
 「俺ら、ここら辺の土地勘なくてさぁ。案内してくれたら、うれしんだけど、どう?」

 そんな2人に少女は小柄な体を小さくして
 「いえ、あの、すいません。私も待ち合わせしているので・・・・・・」
 明らかに迷惑そうだ。しかし、ナンパ2人組も引こうとしない。
 「じゃ、ツレも一緒でいいから、遊ぼうジャン?」
 少女はキョロキョロと困り顔で辺りを見渡す。
 誰かに助けを求めているのかもしれない。
 そんな、都会にはありふれている光景。しかし、次の瞬間にその光景は一変した。
 少女の背後。空間に亀裂が生じる。
 それに気がついた通行人に悲鳴が上がる。
 亀裂はさらに広がり、ついにガラスのように空間が砕けて落ちた。
 亀裂の向こう側。蠢く何かが、こちらに出て行く。
 人間の倍はあろうかという巨大な肉体。緑色の皮膚。

 そいつの正体はトロールだ。

 町のど真ん中に現れたトロールは、一番近くにいた少女を睨みつける。
 少女は助けを求めるためか、さっきまでいたナンパ男の方を向くが、すでに彼らの姿はない。
 彼女を置いて、逃げ去った後なのだろう。
 そんな彼女に向け、トロールは一切の慈悲を見せることはない。
 大きく天に伸ばした拳を彼女に向けて振り落とす。
 思わず、目を背けたくなる瞬間が訪れる。
 しかし―――
 トロールの腕は彼女を傷つけることはなかった。
 なぜなら、少女は、いつの間にか日本刀を手にしており、振り落とされるトロールの腕を抜刀と共に切り落としていたからだ。
 緑色の血をばら撒いて宙を舞うトロールの腕。
 少女は高く飛び上がり、痛みに苦しむトロールへ、とどめの一撃を振るおうと舞い上がる。
 高く舞い上がった彼女は、更なる高みを見つめ、日本刀を振り下ろす。
 しかし、彼女の一撃はトロールに届かない。
 なぜなら、トロールはもう一匹いたのだ。
 そのトロールは飛び上がった少女を片手で掴む。
 そのまま握り潰すつもりなのか、少女の顔が苦痛に歪んでいく。
 だが、しかし―――そうは、ならなかった。
 少女を掴んだトロールの腕。そこに謎の爆発が起きる。それも2つ。
 見れば、先ほど逃げたはずの2人組みのナンパ男がいた。
 その両手には炎が渦巻いている。魔法スキルだ。
 おそらく、先ほどの爆発は彼らの攻撃だったのだろう。
 トロールの捕縛から放たれた少女は、再び宙を舞う。
 華麗に華やかに、凛として、そして力強く。

 彼女の技がトロールを切り裂いた。

 

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