アンリミテッドペイン
暴かれいた情報
向里加那が指定した時間は7時30分。電話から僅か15分後。
場所は近場の公園。俺の家から歩いても行ける距離。
場所も彼女からの一方的な指定で、俺は何も言っていない。
当然ながら、俺のほうが早く着くと思っていた。
公園に到着する。小さな公園だ。すぐに先客の存在に気がつく。
敷地内に一つだけある街灯の下。そこにあるベンチに座って彼女は俺を待っていた。
「よう」と軽く挨拶を口にする。彼女から「こんばんわ」と返ってきた。
「それで条件ってなんだ?」
俺は、ベンチに座っている彼女の横に腰を下ろしながら言う。
「やっぱり、貴方は純粋な選手なのね」
何を言われている理解できず、頭に「?マーク」が浮かぶ。
「普通は、最初に疑問を口にするわ。いえ、ひょっとしたら、疑問にすら気がついていないかしら?」
「一体、なんの事だ?」と俺は言った。
疑問?何かおかしい所があるのか?そう言えば、俺とコイツって、なんで戦っていたんだっけ?
俺が真剣に考え込んでいる様子が面白かったらしく、彼女は笑った。
「本当に気がついてないのね。普通は、この場所を指定した時点で変だなって思うはずだけど・・・・・・」
「場所?公園?いや・・・・・・違うな」
俺は、リベンジマッチに釣られて、目前にニンジンをぶら下げられた馬の如くやってきたわけだが、彼女から指摘をされ、落ち着いて考えてみると、確かに奇妙な事がある。
「お前、俺の家を知っていたのか?」
場所を指定してきたのは彼女からだった。それも15分という時間。
逆に言えば15分以内で到着できる場所に俺の自宅があると知っていた事になる。
俺の問いに、彼女は「ご名答」と答えをだす。
コイツはどのくらい俺のことを知っているのか?
そう言えば、すっかり忘れていたことだけれども、彼女は転校初日から俺の事を知っていた。
そうそう、俺と彼女が『アンリミテッドペイン』で戦う事になったのも、彼女は俺が『痛み傷』だと知っていて・・・・・・
勝ったら、その理由を教えて貰う条件で戦った・・・・・・だったけ?
「貴方、自分が何のために戦っていたか、忘れていたのでしょ?」
「あぁ、すっかり、頭から抜け落ちていた。ごめん。」
そう答えると彼女は驚いたような表情を見せた。
「? どうしたんだ?」
「いえ、まさか、ここで謝罪されるとは思っても見なかったから・・・・・・」
「そうか?」
「そうよ」
「・・・・・・・」
会話が途切れた。
正直に言う。
なぜ、彼女が俺の事を知っているのか?
それは、どうでもいいと思っている。
彼女と戦って負けた。それだけで、俺の中では終わた事なんだ。
しかし、彼女は、それを話したいと思っているようだ。
その違いが2人の温度差を作っている。
さて―――
それはわかっているが、どうしたものか?
俺としては、是非ともリベンジマッチに持って行きたい所だが・・・・・・。
いや、そもそも俺が彼女に勝ったら
『なぜ、彼女は俺の事を知っているのか? なぜ、俺が痛み傷だと知っているのか?』
その真相を教えて貰えるという約束で戦ったのだから、そこをゴリ押して行けばリベンジマッチに持っていけるかもしれない。
俺はそんな打算的な事を考えていた。
この状況で、そんな打算的な事を考えるほど、事態を甘く見ていたのだった。
しかし、俺が思っていた以上に事態は深刻な物だった。
「どうして、私が貴方のことを知ってたのか?それはこれを見てくれたらわかるわ」
いきなり、答えを表示されて、リベンジマッチの企みは敗れてしまった。
ガックリと肩を落としながら、彼女が差し出してきたものを見る。
それは彼女のタブレット端末。
それを受け取り、画面を見る。画面に表示されているのはwebサイトのようだ。
「なんだこれ?」
初めて見るタイプのwebサイト。従来のタイプと違い、随分と古いらしく、読み方がわからない。
「昔、流行った匿名性が強いタイプの掲示板型サイトよ。今でも一部の愛用者が使用しているのよ」
「あぁ、小学校のネットリテラシーの授業で習ったな」
タブレット端末を操作していく。どうやら、『アンリミテッドペイン』を取り扱った内容らしい。
明らかなガセネタ。
本気か、ジョークか、わからないような話。
一部にしか知られていないはずの裏話。
これらが箇条書きにされ、一緒に存在していて奇妙な感覚になっていく。
そんな中・・・・・・
タブレット端末を操作する手が止まった。
そこには俺の画像が貼り付けられていた。
『痛み傷』
本名 霞城一郎 (かすみ じょういちろう)
南天昇高等学校 高校2年生 (17歳)
そして、自宅の住所まで書き込まれていた。
なんら間違いもなく、正確に・・・・・・。
場所は近場の公園。俺の家から歩いても行ける距離。
場所も彼女からの一方的な指定で、俺は何も言っていない。
当然ながら、俺のほうが早く着くと思っていた。
公園に到着する。小さな公園だ。すぐに先客の存在に気がつく。
敷地内に一つだけある街灯の下。そこにあるベンチに座って彼女は俺を待っていた。
「よう」と軽く挨拶を口にする。彼女から「こんばんわ」と返ってきた。
「それで条件ってなんだ?」
俺は、ベンチに座っている彼女の横に腰を下ろしながら言う。
「やっぱり、貴方は純粋な選手なのね」
何を言われている理解できず、頭に「?マーク」が浮かぶ。
「普通は、最初に疑問を口にするわ。いえ、ひょっとしたら、疑問にすら気がついていないかしら?」
「一体、なんの事だ?」と俺は言った。
疑問?何かおかしい所があるのか?そう言えば、俺とコイツって、なんで戦っていたんだっけ?
俺が真剣に考え込んでいる様子が面白かったらしく、彼女は笑った。
「本当に気がついてないのね。普通は、この場所を指定した時点で変だなって思うはずだけど・・・・・・」
「場所?公園?いや・・・・・・違うな」
俺は、リベンジマッチに釣られて、目前にニンジンをぶら下げられた馬の如くやってきたわけだが、彼女から指摘をされ、落ち着いて考えてみると、確かに奇妙な事がある。
「お前、俺の家を知っていたのか?」
場所を指定してきたのは彼女からだった。それも15分という時間。
逆に言えば15分以内で到着できる場所に俺の自宅があると知っていた事になる。
俺の問いに、彼女は「ご名答」と答えをだす。
コイツはどのくらい俺のことを知っているのか?
そう言えば、すっかり忘れていたことだけれども、彼女は転校初日から俺の事を知っていた。
そうそう、俺と彼女が『アンリミテッドペイン』で戦う事になったのも、彼女は俺が『痛み傷』だと知っていて・・・・・・
勝ったら、その理由を教えて貰う条件で戦った・・・・・・だったけ?
「貴方、自分が何のために戦っていたか、忘れていたのでしょ?」
「あぁ、すっかり、頭から抜け落ちていた。ごめん。」
そう答えると彼女は驚いたような表情を見せた。
「? どうしたんだ?」
「いえ、まさか、ここで謝罪されるとは思っても見なかったから・・・・・・」
「そうか?」
「そうよ」
「・・・・・・・」
会話が途切れた。
正直に言う。
なぜ、彼女が俺の事を知っているのか?
それは、どうでもいいと思っている。
彼女と戦って負けた。それだけで、俺の中では終わた事なんだ。
しかし、彼女は、それを話したいと思っているようだ。
その違いが2人の温度差を作っている。
さて―――
それはわかっているが、どうしたものか?
俺としては、是非ともリベンジマッチに持って行きたい所だが・・・・・・。
いや、そもそも俺が彼女に勝ったら
『なぜ、彼女は俺の事を知っているのか? なぜ、俺が痛み傷だと知っているのか?』
その真相を教えて貰えるという約束で戦ったのだから、そこをゴリ押して行けばリベンジマッチに持っていけるかもしれない。
俺はそんな打算的な事を考えていた。
この状況で、そんな打算的な事を考えるほど、事態を甘く見ていたのだった。
しかし、俺が思っていた以上に事態は深刻な物だった。
「どうして、私が貴方のことを知ってたのか?それはこれを見てくれたらわかるわ」
いきなり、答えを表示されて、リベンジマッチの企みは敗れてしまった。
ガックリと肩を落としながら、彼女が差し出してきたものを見る。
それは彼女のタブレット端末。
それを受け取り、画面を見る。画面に表示されているのはwebサイトのようだ。
「なんだこれ?」
初めて見るタイプのwebサイト。従来のタイプと違い、随分と古いらしく、読み方がわからない。
「昔、流行った匿名性が強いタイプの掲示板型サイトよ。今でも一部の愛用者が使用しているのよ」
「あぁ、小学校のネットリテラシーの授業で習ったな」
タブレット端末を操作していく。どうやら、『アンリミテッドペイン』を取り扱った内容らしい。
明らかなガセネタ。
本気か、ジョークか、わからないような話。
一部にしか知られていないはずの裏話。
これらが箇条書きにされ、一緒に存在していて奇妙な感覚になっていく。
そんな中・・・・・・
タブレット端末を操作する手が止まった。
そこには俺の画像が貼り付けられていた。
『痛み傷』
本名 霞城一郎 (かすみ じょういちろう)
南天昇高等学校 高校2年生 (17歳)
そして、自宅の住所まで書き込まれていた。
なんら間違いもなく、正確に・・・・・・。
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