8月31日の冒険

巫夏希

8月31日(日) 9時 <another side>

 それから数分前。
 俺とアッシュは会議をあらかた終えて、ターゲットについての結論をまとめていた。

「問題はこいつ……か」

 俺はターゲットを指差す。
 デスト、という男は狂っていた。人間を殺し、それ以外も殺した。
 間違いなく、世界最大の殺人鬼。
 そいつが今、この町に来ている。

「ほんとうに厄介だな……。しかも、その目的が二人の子供だとはな……」
「それ、ほんとうなんだろうな?」

 俺はアッシュに訊ねる。

「ほんとうだよ。俺だって当局に確認した。でも彼らが最終的に影響を及ぼすのはあっちじゃ周知の事実だろ」

 それもそうだった。
 だが……。

「しかしなあ……あれをみてみろよ」

 そう言ってアッシュに見せるように指差した。そこにいるのはそわそわした姿の少年。いたって普通の小学生だ。

「あの小学生がほんとうに……『救世主』になるのかよ」
「ああ。確定だ」
「ま、お前のいうことは全部真実だからな。それくらい従ってやらんと」
「ちょっとそれどういうことだ?」
「おっと」

 俺はアッシュの攻撃を避けて、もうひとりの子供がそのテーブルにやってきたのを確認した。

「……時計、合ってるだろうな?」
「ああ。間違っちゃいないぜ。やつは九時に……かならずやってくる」

 アッシュが言った、その時だった。
 突然ガラスがわれ、トラックが店の中に強引に入ってきた。一瞬狂ったやつの犯行かと思われたが、そのトラックは真っ直ぐに少年と少女のもとへと向かっていた。

「あれか!!」

 俺は身を乗り出し、走り出す。
 彼女たちを――殺してはならない!
 そして俺は走る走る走る――。
 だが、人間の走りとトラックのスピード。比べる意味がないくらいに、トラックが早いのは周知の事実。

「間に合えええええええええええ!!」

 俺がそう手を伸ばし、なんとか被害を食い止めようとして――



 ――そして、時が止まった。

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