「魔王様」の定義
翔くんとルーちゃん その2
学校帰りにそれは起きた。
友人たちと別れたあとだったのは幸いだろう。
「ほぇ!?」
間抜けな声と共に、翔は空間に引き摺られた。
「成功!!」
喜ぶ金髪の男に思わず翔はどついた。
「あ、ごめん。私の名前はフィルヘイド=クランツ。ここエーベル王国最大の神殿の神官長だよ。で、こちらが魔界の皇子様。君は?」
「首藤 翔」
「カケルね。異世界からようこそ! 君は記念すべき一人目の召喚者だ」
「はぁ!?」
「いやさぁ、魔界の皇子様と一緒に異世界から人を召喚する魔法を研究していたのだよ。で、早速出来たから試してみたってこと」
「それだけ?」
「そ。それだけ。これから時間魔法の研究と、異世界に戻す魔法の研究をするんだ。それが成功すれば、君は私が召喚した同じ時間に戻れる!」
自慢げに言うが、失敗したらどうなるというのだ。
「失敗したら? さぁ、考えたことないよ。でも大丈夫! 今回成功したんだから、失敗するはずないし!」
「どんな理屈だ!?」
産まれて初めて自分がまともな人間だと思ってしまった。
「でさ、早速だけど魔法属性調べさせて?」
変な水晶球を渡され、翔はため息をついた。
「せずとも分かる。翔の持つ属性は光、水、土だ」
「おおう。流石殿下」
初めて「魔界の皇子」と呼ばれていた男が口を開いた。
「あ、殿下に名前聞いちゃ駄目よ? 魔界の掟で我ら人に名前を教えちゃいけないんだ。だから殿下って呼ぶしかない」
「じゃあ、ルシファーなんてどうよ。俺らのところの堕天使の名前」
「……よきかな」
「おおう。殿下も今日はノリがいいね~」
堕天使というところが気に入ったというあたり、結構この皇子も軽いノリの人だな、と翔は思った。
ルシファーの言った通りなのかどうか確かめるため、結局魔法属性を調べることになった。
互いにあだ名をつけるようになったのも、自然な成り行きだった。いつの間にか、ルシファーを「ルーちゃん」と呼ぶようになれば、翔は「かけちゃん」と呼ばれた。フィルヘイドは「フィル」。
エーベル王国の名物ともいえるようになっていた。
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