「魔王様」の定義

神無乃愛

こんなの嫌だ!


 当然、戦いを見守っていた千紘たちも、魔王の部下も起きた出来事に首をかしげた。
 達樹に与えていた力が無くなった。そこまでは誰しもが分かった。
 問題はそのあと。エリもエルフリーデも力を貸していないのに、またしても達樹が黒い衣と白い翼を手に入れたのだ。
「多分ですけど、新しい黒い衣は魔王の影響受けてます」
 エリの言葉に全員が騒然とした。
「王のことだ、何かやらかして手に入れたのであろうよ」
 ソルトの言葉に千紘は頷いた。
「白き翼は天より注がれた」
 エルフリーデの言葉に千紘たち幼馴染組はため息をついた。
「達樹さん、面白いこと邪魔されるともの凄く怒りますよねぇ」
「怒るな」
「天界に喧嘩売りに行かないといいです」
 エリまでもがしっかりとその性格を把握していた。
 そう、達樹は魔王との戦いを心底楽しんでいた。
「楽しんでいた?」
「あぁ。負けない、、、、事は念頭においていただろうが、楽しむことが優先になってたな」
「どうすればいい?」
「とりあえず、天界に喧嘩を売りに行くのなら、それ止めなきゃなぁ……」
 そうなれば魔王軍とも手を組まざるを得ない。
 誰しもがでかいため息をついた。

 とりあえず魔王軍の偉い人に会うことにした。
「で?」
 全てを話したあと、魔王軍の責任者であるアスタロスが不思議そうに言う。これまた綺麗な漆黒の髪と、一瞬見落としそうになったが、瞳の色は銀色だった。そして、アスタロスの反応こそが、普通の反応なのかもしれない。
「あの、ですね。今の状況で天界に喧嘩を売ったとしましょう。まず、魔王と達樹は負けます。あの馬鹿、楽しい戦いを邪魔されたことに血がのぼっちゃって、他の事忘れてますよ。おそらく魔王もそうでしょう」
「それが天界に行くことと何か関係があるのか?」
「多分ですけど、魔王と達樹は思考回路が似てるんです。とすると、今の楽しい状況を邪魔した輩を叩き潰したくなるんですよね」
「では、ルシファー様が……」
 既に天界に向かっているらしい。
「……止めましょう。魔界と下界の平和の為に」
「…………左様であるな」
 まさかこんなことで魔王軍と手を組むことになるとは思わなかった。

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