「魔王様」の定義

神無乃愛

再出発です!


 ソルトには「短期間で色々やりすぎるから負けるのだ」と言われたが、達樹としては元がとある少女を助けるために呼ばれたのだ。
 そちらも解決しないことには千紘たちを元の世界に帰してやることも出来ない、それが急ぐ理由だ。
「わわわわ私たちもついて行きますぅぅぅ!!」
 再度旅の準備を進めていたら、エリが声をかけてきた。
「たたたた達樹さんたちと、いいいい一緒に旅してるとなれば、たたたた他国からこちらに私たちを、ゆゆゆゆ誘拐しようということが、おおおお起きないかなぁぁぁぁ」
「とりあえずエリさんたちが言いたいのは、ここの人たちが変な騒動に巻き込まれないように俺たちについて行きたいということ?」
「そそそそそうですぅぅぅ!」
「で、どうしたらいいわけ? 千紘兄」
「有体に言えば、達樹の体調を考えるとエルフリーデちゃんがついてきてもらったほうが助かる。治癒力が半端ないからな。エリに関しては……高度な闇魔法が使えるという点で連れて行ってもいいんじゃないか?」
「僕からもお願いするよ。いくら自警団とギルタブルルの守りがあるからといって、エルフリーデ様たちをお守りするのは心許ない。こちらに我々が根付くのが先だしね。住民もエルフリーデ様たちと達樹が一緒にいる方が安心するようだし」
 誰がそんなデマ情報を流せと言った! そう叫びたくなるのを達樹は必死に堪えた。
「誰もそんな情報流していない。住民がお前を見てそう思った、だったらお前はどうする?」
 哉斗が珍しく訊ねてきた。
「分かった。二人は連れて行く。翠兄と哉斗兄にエリさんが歩けなくなったときお願いすると思うけど」
「んなもん、最初から織り込み済み。お前は指揮を取ってりゃいいんだよ」
 その後も方々に言いたいことを言われ、旅の準備をすすめた。

 今回、アリーは留守番をしているという。
『ここを守る妖精ピクシーも必要だろうしね。エメラルド王女優先の侍女だけが残るよりギルタブルルと連携を組みやすい』

「今度こそ、アネッサ嬢の行方の手がかりを持ってくるよ」
 残り一ヶ月とちょっと。その間で終わるとは思えない。それでも達樹は明るく留守番役に笑いかけた。
「エリザベスさん、留守中の交渉お願いします。……特にあの狸と存分にやりあって下さい」
「かしこまりました」
 いつの間にやら携帯の使い方を覚えていた侍女が、何かあったら連絡すると笑っていた。

 正直な話、ただのやり取りに「空間を繋ぐ」という高度な魔法を毎回使うのもどうかと思ってしまうが、それがこの国のやり方になってしまっている。

 神殿の転移装置を使って、魔王領近くの国まで飛んだ。

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