おまじない

些稚絃羽

おまじない

もう泣かないように
そう言って君がおまじないをしてくれた日
本当は隠れて1人で泣いてしまった


泣かないで
そう言って頭を撫でてくれる君はいなくて
そうしてまた泣いてしまったんだ


どんなに大切に思っていても
あの頃の僕等はあまりに子供すぎて
時の行方に抗う事なんてできなくて
理解した振りをするしかなかった


知っているんだ
君も泣いていた事
去り際の車の中
笑って手を振った後の涙を


だから決めたんだ
いつも僕の涙を拭ってくれた君の涙を
今度は僕が拭ってあげる
強くなるんだって


君は今の僕を何て言うかな
変わっていないって言うかな
格好良くなったって言ってくれるかな


君が待つベンチへと歩みを進めたら
大きくなった背中が見えた
わざと靴音響かせて
ねぇ、気付いて


会えない間に涙もろくなったね
今度は僕が、おまじない

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