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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/設定/:フォルシーナ先生の魔法教室①

 それはまだ、ヤラランがフラクリスラルに渡る前の話。
 ヤラランとフォルシーナは商会を作り上げ、書類整理や魔法道具の研究に追いやられていたが、フォルシーナはともかく、ヤラランは居なくても大差なかった。
 否、交渉役や指導者としては必要なのだが、居なくても商会の運営が成り立つとフォルシーナが結論を出して白目を剥いたのだ。

「私の主人がそんな事でどうするんですかっ!! 貴方の仕事は一従業員となんら変わらないと言うか、なんで貴方がトップなんですか、えぇ!!?」

 商会の書簡にて、椅子に座らせたヤラランに向かってフォルシーナが机を叩いて激しく言い放つ。
 ヤラランは怒っている少女に動揺することもなく言葉を返した。

ほとんど俺とお前でやり繰りしてきたわけだし、上に立つのは不思議じゃないと思うけど……やる事やってるし、いんじゃね?」
「……やる事やってるだけでいいんですか。甘い、甘いですよ! こうなったら私の魔法の知識を与えますから研究室にも来れるようにしてください! 視察できる部分が増えればもっと会長らしくもなるでしょう!」
「はぁ……なんか、面倒臭そうだな」
「基礎的な部分だけですから、聞きなさい。いいですね?」
「……わーったよ」

 渋々ながらもヤラランが頷く。
 休日に無理やり連れてこられた彼だが、魔法の勉強をするのもたまには悪くないと思うのであった。

 フォルシーナはガラガラとキャスターの音を立ててホワイトボードを出し、ペンを取る。

「まず、知ってるとは思いますが、世の中の魔力は善魔力と悪魔力に分かれています。これらは意志の強さだけ増量するので、こころざしの強さイコール魔力で表せるのは明らかですね」

 フォルシーナが縦に志、横に魔力を取ったグラフを描く。
 志が1増えれば魔力も1増えるから、斜めに線が伸びる。

「でも別に、近所付き合いが良いぐらいで日常生活における魔力あるので、無関心でない限りは誰でも魔法が使えます。戦う敵も居ませんから無理に魔力を増やしたりしません」
「おう、そうだな」
「さらに言うなら、魔力は悪魔力が増えたからといって善魔力が減少するような相対性はありません。どちらも独立しているので、両方を伸ばそうとするツワモノも世の中には居ますが、悪意と善意を同時に伸ばす事は不可能です。意志については相対性があるんですよ」
「……普通だな」
「基礎部分と言ってるでしょう? でも、長い話ですよ」

 長い話と聞いて、ヤラランは頭を抱えた。
 彼には長い時間話を聞くほどの集中力はない。

「しかし、魔力の最大値を伸ばせばいいのです。善意が一時期どっと出て、2週間後は凶悪犯罪者になった場合、善意はなくとも善魔力は残りますから、とても魔力量の多い犯罪者さんの出来上がりです。このような魔力最大値の自然減少量は微々たるものなのは20年前ぐらいに発見されました」
「……それ知っててなんか良いことある?」
「ヤララン、今この瞬間も自分の魔力が減ってると思ってください。嫌じゃないですか?持ってるものが減るの」
「……別に。魔法は便利だが、必要不可欠なもんじゃねーしな」
「クッ! これだから私の主人は穀潰しと呼ばれるのです!」
「……お前、もう従者辞めろよ」

 明らかな侮辱に対し、ヤラランは苦笑して言葉返した。
 というかそもそもの話、従者というのはフォルシーナが勝手に自称しているだけなのだから、ヤラランとしては辞めてもらっても一向に構わないのだった。

「はい、次ですね」
「無視かよ……」
「私の持論ですが、魔法には管理者がいます。私達が魔法を使う際、世界か何かに許可を得て、その契約の元に発動しています。だからへりくだったりすると強い魔法が出たりします。遜れば遜るほど強くなるので、頑張ってください」
「頑張んねーよ……」
「それと、魔法は私が使う【魔法入力版マジシャン・ボード】等を使う事で人間に魔法を使えるようにしたりします。ただ、使い手には使える系統の魔法が生まれながらに決まってるので、無色魔法しか使えない人は【赤魔法】や【青魔法】を入力しても使えません」
「そーだなー」

 ヤラランの使う力の四角形フォース・スクエアも魔法入力版で入れられたものであり、よくわかっている。

「つーかさ、別に【魔法入力版マジシャン・ボード】を使わなくても良いんじゃね? 【魔法入力版マジシャン・ボード】で確実な魔法を作る、ってのはわかるけど、別に、そんなの無くても適当に考えた魔法が使えるしな」
「そう、そこは盲点です。ですが、想像して魔法に適当な名前を付けても使えません。それはとっくの昔からの変わらぬ事実です。想像しただけでその魔法がなんでも使えるわけではなく、魔法には系統の次には型があり、例えば、【力の四角形フォース・スクエア】の様な“空気を押し出す”という型。【赤魔法】では炎を出す、筋力を増強するという、確実な型があり、発想だけでは使えません。そこで【魔法入力版マジシャン・ボード】を使うと〜っ! 想像したものを魔法として作り上げっ! 発動までできるんですっ! 型破り! これが神業ですっ!!」
「……よくそんな喋れるな」

 フォルシーナが脳の絵を描いてはバツを付け、四角い絵を描いてぐるぐると丸で何重にも囲う。
 ヤラランは説明よりも話し方などに気を取られているが、フォルシーナは構わず話す。

「魔法作るのは楽しいですが、普通の人は作るまでに半年は勉強しなくてはなりません。ヤララン、やりますか?」
「やんねーよ」
「ですよね。だから魔法技術者のパートナーである私に感謝してもいいんですよ? 惚れてもいいですが、私はお高いですよ? ふふん♪」
「……カレーパン食いてぇ」

 刹那、フォルシーナがヤラランの頭を鷲掴みした。

「痛い、離せ」
「カレーパンと私、どっちが大切ですか?」
「フォルシーナだが、今はカレーパンが食いてぇんだよ」
「……カレーパンと自分を比較されるのもアレですし、この話はもうやめます」
「? おう」



 魔法道具と意志幻種編に続く……かもしれない。

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