連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/127/:研究過程その4

 あの日からフォルシーナは睡眠不足を解消し、目元は肌色に戻った。
 危惧するものもなくなり、実験と地面に向かう日々が続く。

「やっぱり、基本的な動力は電気なんですかね?あの光ってる動力は物理的なものではないし、魔力だと思うのですが……電気?黄魔法?」
「動力については分解しねーとわかんねぇつってんだろ。んな事よりわかる事やれ、わかる事を」
「そうですね……了解です。素子の実験をまたやりましょうか」

 ルガーダスとフォルシーナが作業に入る中、俺は腕組みして目の前にある善悪調整装置を見ていた。
 ぼんやりと眺めている俺にルガーダスが声を掛ける。

「おいヤララン。何ボーッとしてんだよ。こっちこい」
「……いやぁさ、ちょっと思うところがあってよ」
「……? なんだ?」
「俺たちはこの装置を制御できればいい。別に中の構造を調べる必要はないんじゃねぇのか?」

 俺の質問に、ルガーダスは耳をほじりながら答える。

「あのなぁ、300年も調べてんだ。ソイツのキーパネルを至る所を押す馬鹿も居たんだよ。だが、装置の電源が切れる事もないし、お前達も見たことのある画面以外の画面になった事はねぇ。仮に、何箇所かのキーを同時に長押しで別画面に移動できたとして、キーの数は1000を超え、3つ同時押しとかになれば10億通りはゆうにあるわけだ。精神力が持たねぇよ」
「……むむっ」

 キーを押してれば操り方もわかるかと思ったが、浅慮だったらしい。
 そうだよな、300年ってそういう事だよな……。
 中身を知って、解析するしかないか。

「わーったら来い。お前は風を変える素子の変換率を求めとけ」
「はいよっ……。つっても、微小電気をどうやって求めるんだよ……」
「文献漁れ」
「……鬼だな」

 まぁ文句を垂れたところでどうともならず、結局は文献を漁ったのだった。
 電気を流すと熱が出るというから、【青魔法】で温度の変化を見ながら頑張って調べたのだった。










「本気出しゃ結構わかるもんだな」

 最下層の空いた広いスペースで、丸い金属に鉄のホースが2本くっ付いてるのを見ながら俺の隣に立つルガーダスが呟いた。
 フォルシーナは一方のホースから【赤魔法】で炎を加えている。

「……まだちっともわかってねぇと思うけど?」
「いんや、2ヶ月ちょいでこんだけやるのは大したもんだぜ。もう40年ぐらいすりゃ、ひょっとしたらひょっとするかもな」
「40年……って、なげぇなあ……」

 俺が今まで生きてきた時間の倍ともなると、途方もなく感じてしまう。
 自分の未来の姿も思い浮かばないし、あまりピンとくる話ではない。

「それで世界平和に繋がるなら早えだろ。まぁその頃には俺も死んでお前らがガキでも産んでる頃か」
「はぁ!?」
「ま、やる事やるのは文句言わねぇけど、俺の居ない所でやれよ? ウザいから」
「いやいや、やらないから! 適当な事言うなっつの……」
「……全部私にも聞こえてるんですが」
「おっと、こいつは失敬。ちょっと俺は王と話してくっから、若い2人で話してろ。じゃな」
「おい! ちょっと、逃げんな!」

 てってけ走ってルガーダスが去っていく。
 ……あのジジイめ、後で覚えておけ。

「……まぁまぁ、ヤララン」
「え!? お、おう……」
「……いつも気にしてないくせに、何照れてるんですか。それより、ちょっと測定手伝ってくださいよ」
「あ、ああ……わかった」

 全部聞いてた割に平然なフォルシーナに促され、俺も測定に加わった。





「なぁ、サァ王よぅ……」
「……? なんだ、ルガーダス」
「……若ぇってのはいいよなぁ」
「?」

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