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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/107/:夜明け前のお話

 フォルシーナが起きたのは、まだ月が出ている時間帯だった。
それでも、7時間ぐらいは眠っていやがったのだが……。

「……足、大丈夫ですか?」
「思ったより辛くないさ。気にすんな」
「はい……」

寝ぼけ目で俺の隣に座ったフォルシーナが枕にしていた俺のももを撫でながら言う。
感覚が無くなるということもなかったし、今では普通に胡座をかいている。

「……起きるのが、早過ぎましたか。まだ夜なんですね」
「夜だけど、すぐに朝になるさ」
「まだ空の色真っ黒ですけどね」
「うるせぇ、話してりゃすぐだ」
「……ああ、そういうことですか」

朝になるまで2時間もかからないはずだ。
話をしていれば1時間も2時間も結構すぐに過ぎるもの、フォルシーナも俺をからかうし、ホントにすぐだろう。
それに、話題もあるしな……。

「……なぁ、世界の善悪を平等にしている装置があるらしいんだ。そしたら、どうする?」
「……あるらしいって、そんなのが本当にあるなら、改造するに決まってるでしょう?」

さも当然、といった風に答える。
流石はうちの魔法技術班トップと言うべきか。

「技巧だって、時間が経てば技術の進歩はするんです。私はその中でも進歩しすきましたがね。私ならそんな装置、善を8、悪を2ぐらいにちゃちゃっと改良します」
「……できるといいけどな」
「させてみせますよ。あ、私の技術力が旅で腐ってるとお思いかもしれませんが、時間さえあれば【自動探知オート・サーチング】や【魔法入力版マジシャン・ボード】で新しい魔法系アルゴリズムの方法を導いてたんですから」
「うんうん、とにかく凄い自慢なのはわかったから俺にわかるように話してくれ」
「それで夜を明かしますか?」
「……そういう意味じゃねー」

魔法の事なんて、俺にはさっぱりだった。
青い魔法の板が出るまでは良いが、それに浮かぶ白い文字を見るだけで頭が痛くなる。
それなのに夜通し話すなんて、俺には無理だ。

「じゃあ、適当に雑談でもしますか。ヤララン、私が寝ている間に何考えてましたか?」
「あぁ……やっぱり、装置のことだな。見てないからどういうものなのかはわからないし、地下神殿とやらにあるらしいんだが……誰がいつ、どうやって作ったのか。そんな、考えてもわからないことを考えてたよ」
「……ふむ。普通に考えれば、昔に世界の善悪を平等にするなんて大層な装置を作れませんしね」
「あぁ……」

過去より現在の技術が優れるなんて、普通はあり得ない。
世界全体の善悪を司るような装置を作れる力なんて、誰にもないはずなんだ。

「……だとすると、空から宇宙人でも来たのかね?」
「ヤララン、発想が稚拙過ぎます」
「……割と真面目だぜ? そうとしか考えられんだろ? お前に善悪調整装置作れるか?」
「それは……流石に無理だと思いますけど」
「だろ? お前に無理なら、過去の人間にできない。だったら、なんのために世界全体での善悪量を半分にしたのか。なんとなく、知ってみたい」
「……そうですね」

何かしら目的がなきゃ、善悪平等なんてアホな真似はしないだろう。
その目的がどこにあるのか、それを俺は知れるなら知りたい。
42年前に東大陸の王が見つけて秘匿にするぐらいだし、今まで隠されてきていつできたのかもわからないだろうその秘密を知れるとは、思えないがね……。

「逆に、お前は何してたんだよ? 俺が寝てて暇だっただろ?」
「あー、日が沈むまではみんなでお喋りですね。半ば尋問でしたが。夜になってここに来て、【魔法入力版マジシャン・ボード】弄って遊んでました」

流し目で遠くを見るフォルシーナ。
つ日没から俺のところに来たってことは……。

「……つまり、半分ぐらいは俺のこと見てなかったんだな? それで膝枕は釣りあわねぇよ……」
「そうなりますかね……えへへ、いやぁ、すみませんねぇ」

へこへこしながらまったく心のこもってない謝罪をしてくるフォルシーナ。
言い方もどことなくムカつくが……こんなことは日常茶飯事か。
ため息1つで我慢しよう。

「……ハァ。お前は相変わらずだよな」
「少しは変わりましたよ? 胸が少し大きくなりました」
「んな細かい事は知らん。内面は何も変わってねぇじゃねぇか」
「そんなことを言うなら、ヤラランだって何も変わってないですし」
「……背は同じぐらいになっただろ」
「そうですねー」

この1年で俺の身長はフォルシーナと同じぐらいになった。
大体170cmくらいだが、まだ17歳だし、伸びしろはあるだろう。
デカくなったからってどうということもないんだが、フォルシーナに背丈が負けてるのは男として嫌というか、ともかく伸びて良かった。

「……いやぁ、ヤラランももう、私が抱きついても胸に顔が来なくなったんですね。少し寂しいです。低くなってください」
「お前のその小さな寂しさのために低くなってたまるかよ……。あと、抱き合うことなんてねぇから。そんなに煩悩爆発させてたら脳みそ溶けるぞ?まぁ溶ける物が詰まってたらの話だけどな」
「脳が溶けそうです! 死んじゃいそうです! 目の前にヤラランが! ……私のこと、助けてくれますか?」
「もちろん」

迷わず即答した。
脳が溶けそうなら外部からの影響であるのは確実、孤立結界アイソレート・プロテクトで遮断すれば防げるだろう。

「……え、そんな……きっぱりと言われたら……」
「……なにおどおどしてんだ。持ちつ持たれつ、助け合う仲だろ?助けろっつわれたらキィだろうがメリスタスだろうが、お前だろうが、俺にできる範囲なら助けるさ」
「……むぅ」

隣で俯いて不満そうに呻くフォルシーナが、俺の肩にもたれ掛かってきた。
膝枕とは違った、もっと大胆で広く触れ合いを感じる。
こんな風にしてくるなんて、一体今日はどうしたんだか……。

「……やっぱり……私は“仲間”で、“それ以上”ではないのですか?」
「仲間以上ってのは言葉が難しいな。家族、友人、恋人、なんでも仲間って言えるし、それ以上はないんじゃないか?」
「……ヤラランはやっぱり、乙女心をわかってませんね」
「……いつものことだな」

いい加減、それについては諦めてくれとしか言いようがないが……。

「……ここまで気を許すのは、貴方ぐらいなんですよ?」
「俺もそうだけど?」
「……貴方の言ってる意味とは、言葉の重みが全然違うのに」
「は? そりゃどういう意味――」

尋ねようとしたその時だった。

――ゴギュルルルルルルゥウ〜。

俺の中にいる腹の虫が鳴いた。
そりゃあもう大音響で素っ頓狂な音が夜に染み渡った。

「……そういや、昨日の朝から何も食ってねぇな」
「……どうしてこう、雰囲気ぶち壊しになるんですかね」
「いや、まったりした空気だったから、別に空気は壊れてねぇだろ?」
「……もういいです。とりあえず、何か作りますね」
「お、おう……」

どこか哀愁を漂わせながらフォルシーナは立ち上がり、黒魔法で即興の調理器具を作り上げた。
……そんなに残念なことかね?
乙女心を知るべく、俺ももう少し女性との関わりを増やしたほうが良いのかもしれん。

そうこうしているうちに、気付けば朝になっていた。
戦闘の跡が残る更地なのに、どうにもそういう雰囲気ではないようだ。

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