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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/103/:赤の弓と黒の槍

「有事の為に私の刀にも【羽衣天技はごろもてんぎ】を使えるようにしといたのですが、正解だったみたいですね」

 桜の花びらの束から姿を現わすフォルシーナが得意げに語る。
 それに伴い、黒き羽を生やした女もニタリと笑い、再び両手に槍を出現させる。

「へぇ……じゃあ、何回で壊せるか試してみる?」
「そんな暇があればいいですね」
「……なに?」
「キィちゃん、メリスタスくん、頼みましたよ?」
『了解っ!』

 フォルシーナの指示でキィとメリスタスが女の元へ落下する。
 無茶な――とは思わなかった。
 一発一発は強いが、当たらなければどうということはない技だ。
 キィは素早いし、メリスタスも仲間になってからキィと打ち合ったりして速さはキィと大差ないはず。
 ならば、接近戦の方が有利だ。

 女はいくつもの弾幕を空に向かって放っていくが、案の定2人は空を舞うように躱し、地表に降り立って斬りかかった。
 2本の刀は槍に受け止められ、弾き返される。
 地上での接近を不利に思ったか、空に飛ぶ女にキィもメリスタスもしがみ付くように飛んで斬りかかる。

「ヤララン、こんな所にいましたか」
「え? あ、あぁ」

 後ろから声を掛けられ、誰かと思えばフォルシーナだった。
 空にはまだ桜の塊があるから離れてないと思ったが、そんな事はなかった。

「ヤララン、アイツはヤバいですよ。【七千穹矢】で殺しましょう」
「! 何言ってんだ……殺すだと!?」
「甘い考えは捨ててください! 早く決断しないとキィちゃんもメリスタスくんも死ぬかもしれませんよっ!? 奴の攻撃は一撃で致命傷です!」
「…………」

 一撃で致命傷だというのは理解できる。
 奴の武術がどれほどのものかは知らないが、甲冑が割れない以上、キィもメリスタスも消耗戦を強いられる。
 勝ち目のない戦いになってしまうのはわかりきっていた。

「はい、刀です。キィちゃんたちに注意が行ってる今拾ってきました」
「あ、あぁ……」
「では、お願いします」
「……でも、よぉ……」
「相手は殺す気満々なんです! 早く!」
「――わかったよ! やりゃあいいんだろうが!!」

 投げやりに叫ぶ。
 確かに、今回の相手は今までの相手の比にならないバケモンだ。
 それでも殺したくない。
 だが――そんな我儘で仲間を殺す方が嫌だ。

 剣戟を繰り広げる戦いの方へと刀を向ける。
 幾らかある戸惑いを振り払うように大きく一呼吸し、素早くフォルシーナの考えた呪文を告げる。

「【狂気色インサニティーカラー赤】!!!」

 刀が赤き弓に姿を変わり、バチバチと雷光を放った光球を星の数ほど生み出される。
 一面は赤く輝く空間と化し、気付いたキィとメリスタスは黒い女から飛び退いていた。
 虚ろな瞳で槍を持った女が、俺の方を見てくつくつと笑う。

「――くっ、あはっ、ひひあっ。凄いねぇえっ! “人間”の出せる魔力じゃないよ! そんな大技――ウチが消し飛ばしてやる!!」
「やってみろよ……【羽衣天技はごろもてんぎ】――」

 細い、光の弦を弾く。
 赤き雷の矢が弓に現れ、目標物に真っ直ぐ向いていて、今から穿たんと弓をしならせる。

「【黒天の血魔法サーキュレイアルカ】――」

 両手を広げ、女は足を踏み込んだ。
 彼女が飛び上がると同時に、俺は矢を放つ。

「――【七千穹矢ななせんきゅうや】!!」
「――【悪苑の殲撃シュグロード】!!!」

 空気を割いて一直線に投げられる2本の槍を、その身を唸らせながら落雷の如く赤の矢と続く禍々しい魔力球の大群が真っ向から向かえ打つ。
 瞬く間に衝突した赤と黒は、爆発を生んだ。
 一瞬で迫ってきた豪風に体が吹き飛ぶが、羽衣の力で空中に留まる。
 空は黒煙で染まり、村の建物は半分以上が全壊して一部が更地と化していた。

「フォルシーナ、いるかっ!?」
「無事です……ゴホッゴホッ……」

 俺が吹き飛ばされるほどだ、フォルシーナは無事じゃないと思ったが、半壊した建物の中から木材を持ち上げて出てくる。
 怪我をしている様子はないし、本人も無事と言ってるから問題ないだろう。

「なら良かった……つーか、今ので相殺かよ。もう魔力少ねーんだけど……」
「大丈夫ですよ。ほら」
「え?」

 フォルシーナが指差すは黒煙の向こう。
 徐々に晴れだした煙の向こうに立つ影が一つあった。
 しかしそれは、フラフラする体を無理に立たせているに過ぎない。
 左腕の肩からドス黒い血が流れるのを右手で抑え、兜の飛んだ頭からは血が流れ、黒い女はガクガクと震えてこちらを睨んでいた。

「【二千桜壁】で防げるんですから、【七千穹矢】があの槍より弱いわけがないですよ。後続の魔力弾が爆発の後を追うのが見えました」

 淡々とフォルシーナが説明する。
 七千穹矢の一部は“喰らった”のか?
 俺の魔力を半分奪うあの攻撃、一部受けただけでも致命傷になりかねないのに……まだ立っていると?

「……ゆ、許さん……貴様ら、屍も残さぬ……滅びろ! 禍いあれ! 死せろ! 死せろ死せろ死せろ死せろーーーーーッ!!!」

 刮目し、痛みも気にせず女が叫ぶ。
 彼女からは青黒く輝く魔力が発せられた。
 羽衣天技と相殺するレベルの攻撃を2度以上使って、まだ……!?

「【黒天の、血魔法サーキュレイアルカ】……」

 女が俺たちの方へと手を翳す。
 その手には自身の黒き魔力が集まり、収束していく――。

「ッ!! フォルシーナ! 伏せ――」

 俺は咄嗟にフォルシーナに呼び掛けた。
 俺は防衛結界があるから即死はしないが、フォルシーナは当たれば死ぬのは免れないであろう。
 しかし、フォルシーナは立ったまま女の方を見ていた。
 神楽器を持たず、防ぐ気もないのに笑みを浮かべている。
 それも、余裕のある、嘲笑するような笑みを。

「【ハウ――」
『【氷雪旋舞】!!!』
「なっ!!?」

 女が技を放とうとした瞬間、彼女の左右両サイドから吹雪の竜巻が襲いかかり、黒い女は竜巻の中に埋もれた。

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