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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/101/:巫女

 弔いを済ませてからキィ達と合流すると、急に俺たちがいなくなって少し怒った様子だった。
 しかし、幻覚を見ていることやらこの村の状態を説明すると文句のもの字も無いようで納得してくれた。

「……血が……こんな道だったのか」
「…………」

 幻覚魔法を解いたキィが呟く。
 いたる所に血がべったりだし、嘆くのも無理はない。

「それで、肝心の術者はどこにいるの?」
「さぁな。待ってりゃ来るだろ」
「うわぁ……ヤラランくん、テキトーだなぁ……」
「む……」

 聞かれたことにちゃんと答えたのに失礼なことを言うメリスタス。
 そのオレンジの髪、全部引っこ抜いてやろうかこのやろう。

「ヤラランの言う通り、待ってれば来るでしょうね」
「ほらほら、フォルシーナもこう言ってる。テキトーじゃないだろ?」
「……ですが、待ちたくないですね。相手の方は、私たちを殺すために来るのですから……」
『…………』

 殺しに来る。
 確かに、それは間違いないだろう。
 だが、人を殺すってことは何かあるはずなんだ。
 ただの殺戮をするほど悪い奴とも取れるが、ごく稀だろう。
 ならば、俺はこの場所での秘密を知りたい――。

「――? なんか聞こえないか?」

 突如、キィがみんなに尋ねる。
 俺は何も聞こえなかったので首を横に振る。
 他の2人も聞こえなかったという反応を示した。

 ――セ――世界――――。

「!   なんか聞こえるぞ!」

 今度は俺も感じ取った。
 人の、女の人の声だった。
 なんだ?何を言っている?

「歌だな……。なんか、嫌な歌詞だぜ……」

 俺に聞き取れた内容はキィの方が良く聞けていて、声の正体を教えてくれる。

「どこからだ?」
「東の抜け道だな……あっちから歌声がする」
「……よし。行くぞ」

 所在さえわかれば行くだけだ。
 その女が争う意思があろうがなかろうが、一先ず会わないに越したことはない。

「待ってくださいよ! 今回ばっかりは危険すぎます! 何百という死体を見たでしょう!?」

 足を進める俺を、フォルシーナの声が止める。
 かなり強い語気で喋る彼女は久しぶりだった。
 確かに、相手は頭がイカれてる野郎かもしれない。
 だが、

「だったら尚更なおさら、放っておくわけにはいかねぇだろ。お前らは来なくても良いが、俺は行くぞ」
「え!? あぁもう! ヤララン!」
「…………」

 意地を張って俺は走り出した。
 他の3人の足音も後ろから聞こえてくる。
 そして、走るに連れて歌声は大きくなっていった。

 ――枯らせ、穿て、草木も命も♪
 ――殺せ、果てろ、醜い人間♪

 キィの言う通り、嫌な歌詞だった。
 世界の破滅を願うような、嫌な歌。
 どんな顔で歌っているのか見てみたいね――。
 その一心で駆け抜け、1つの大通りに躍り出た。

「およ?」

 間抜けな声を出して、女性が振り返る。
 赤の瞳をパッチリと開いた、金のかんざしくくった紫色の髪を持つ女性だった。
 汚れが1つもない白と赤の巫女装束を着ていながら動きにくそうではなく、振り返る動作は素早く、俺を見て笑顔を作る。

「御機嫌よう。今日もいい天気だねっ」

 曇り一つない笑顔で挨拶される。
 まるでここに惨状があったことなど知らないような、平和な笑顔。
 そんな笑顔が出来るってことは――

「御機嫌よう。お前がこの村で死体を溜め込んでた奴か?」

 率直に問う。
 いや、問う意味もないだろうことは明らかだった。
 しかし――

「違うよ?」

 たった一言で、俺の予想の外れを言い渡される。

「違う?」
「ヤララン! 勝手に出――!?」
「おや、お友達さんかな?……あれ?」

 追いついてきたフォルシーナ達も彼女に顔を向ける。
 その中で、巫女はキィを見て硬直した。

「……嘘。シィ様、生きて……」
「……あ?」
「……キトリュー様は……キトリュー様は……!! あああああぁぁぁああぁァァアアアアアアア!!!!」
『!!?』

 発狂と共に、巫女の体が黒く染まる。
 巫女装束は消え去り、全身に黒の鎧が纏われる。
 錯乱してるのか、頭を抱えて悶える背中からは漆黒の翼を4枚露わにし、頭上には拳ほどの大きさの4つの黒い玉が回っている。
 やがて落ち着いたのか、腕をだらりと下げてただ呆然と立ち尽くしていた。

 俺たちはそれぞれ剣を手にする。
 相手はもはや、人間ではない。
 ゆっくりと、ゆっくりと、漆黒のモノが顔を上げ、兜からその瞳をこちらに向けた。

「――殺す。何もかも」
「!! 【無色防衛カラーレス・プロテクト】!」

 呟きと同時に放たれた黒い球体を避けるために無色防衛を展開する。
 4つ同時に薄青い結界に当たるや、勢いを止めることなく魔弾は結界を打ち壊す。

「!?」

 結界が一瞬で壊される驚き、そして避ける手立てがない。
 そんな中、キィとメリスタスが羽衣を纏っていた――。

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