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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/97/:相談

 2日連続で散歩に連れ出すのも悪いとは思ったが、街全体が消灯してからフォルシーナを散歩に連れ出した。
 昨日と違って散歩など名目だけで、道端に【黒魔法】で椅子を作ってそこで話をする。
 もちろん、話題は今日のこと。
 フォルシーナに話すと、彼女はずっと黙って聞いてくれた。

「……丸く収まったんですね。それは良かったです……」

 心底ホッとしたというように胸を撫で下ろすフォルシーナ。
 逆の立場なら俺も同じ反応をしてるだろう。
 俺だってめちゃくちゃ話すの怖かったんだから……。

「それで、告白されたんでしょう?」
「……そーだな」
「どうするんですか?」
「それが悩ましいから話してるんだろっ。察しろよっ」
「……はぁ。初々しいですねぇ〜」
「むぅ……」

 不満気に唸るもスルーされる。
 なんだなんだ、今日に限って態度が刺々しいぞ。

「貴方は、キィちゃんの事が好きなんですか?」
「……恋愛的にアイツを見たことはねぇよ。仲間としては好きだし、仲良くしてあげてなきゃ、ってのはあったけど……」
「なら断れば良いんじゃないですか?ずるずる付き合ってても、腐食していくだけですよ?」
「……う〜ん」

 ただ断るのもどうなんだか。
 でも断わらないで引きずってるのも変だし、それに、フる理由があるわけでもない。
 あるとしたら、また仮定の話が出てくるだけ……。

「……ダメだ。本当どうしたらいいかわかんねぇ……」
「……貴方がそんなに悩むとは。恋愛には興味ない、みたいな感じで振る舞ってるくせに悩むんですね」
「うるせーよ。だって初めて告白されたんだぜ?そりゃ乱心しますよフォルシーナさんっ」
「……何をニヤついてるんですか」
「ッ!? ニヤついてねーよっ!」
「…………」
「……なんだよ?」
「いえ、別に……」
「…………」

 本当に今日はツレない。
 浮かれてるように見られたのか。
 こういうの俺らしくないから、少し嫌われたのかね……?

「私は――貴方は誰か1人のものにならないと思ってます。これからもずっと、あらゆる人のために、自分の命を惜しまない人だと……そう信じてます」
「……恋人ってのは、他人の所有物になることじゃないだろ。例えキィと恋仲になっても、俺は生き方を変えたりしないさ」
「……何故、そう言い切れるんですか?」
「アイツが今、自分の親と同じ生き方をしているからさ。真実を伝えた今、アイツは俺の生きる道に賛同して追従するはずだ」
「……。そうですね……」

 人の為に生きていたキィの両親。
 なのに今の西大陸がこんな現状なのは、彼女の両親が死んでからまた争いが起きたからであろう。
 もしくは、フラクリスラルのような国が介入しているのか……。
 どちらにせよ、俺らは俺らのやることをするだけだ。
 キィの両親ができなかったことなら、俺たちでやり遂げればいい。

「勿論、お前が付いてくるのも忘れんなよ?」
「随分前から、どこまでも付いて行くと申してるでしょう……」
「だな。きっと、死ぬときまで一緒だぜ」
「…………」

 急にフォルシーナが黙る。
 こちらに向けていた視線も急に逸らされて、何もない方を見つめ出して何がしたいのかわからん。

「……なんだよ?」
「……どうして貴方は、普通にそーいうことを言うのですか……」
「……?」
「……なんでもないですっ。というか、私以外にも同じこと言ってないですよね?」
「はぁ? お前以外にも死に目まで一緒な奴がいるかよ。あー、でもこの先はわからん。誰か俺に恋人でもできれば…………って、今その話をしてたんだよ!!」
「あ、そうでしたね」

 あっけらかんとした態度で肯定される。
 コイツわざとか!?
 なら、話聞きたくないってこと?
 えー、俺の相談相手お前しかいねーのに……。

「そうでしたね、って……。相談乗ってくれねーならそれでいいよ……1人で考えっから……」
「でも実際の所、私が話に乗れないじゃないですか。好きなら受け入れて、好きじゃないなら拒絶する。判断つかないなら返事を延期させて貰えばいいですよ」
「……結局は俺次第、ってこと?」
「当たり前ですよ。あ、勘違いして欲しくないですけど、キィちゃんは拒絶されたとしてもヤラランに付いてきますよ。きっと、彼女自身がスッキリするだけです」
「……ふむ」

 確かに、アイツの性格ならスッキリして済む……かもしれない。
 こういうのは経験ないから俺には判断つかねー!

「……なんかもっと助言とかないですか、フォルシーナさん」
「ないですよ。私だって恋愛なんてよくわからないんですから……」
「えー? だってお前、商会出て都ほっつき歩いてだろ? 男と遊んでたんじゃないの?」
「……それ、もし本気で言ってるんだったら一発ぶん殴りますよ?」
「え?」
「……ふんっ!」
「いたっ!?」

 思いっきりゲンコツをくらう。
 俺の思い違いだっただと?
 そんなバカな。

「いいですか? 私が外に出ていたのは他の商会と座談会をしたり国の魔法技術者に技術を売ったりしてたからですし、遊びで外に出ても服や飾り物を見たりしてただけで、男なんて寄せ付けるどころか遠ざけてましたからねっ」
「……そうだったのか。いや、てっきり豪遊してるものかと……」
「豪遊なんてしませんからっ。見てくださいよ、今の身なり」
「ん?」

 今更ながら良くフォルシーナを見てみる。
 髪飾りなど一切付けてない銀髪、いつも見る整った顔立ちと衣服は長襦袢の上にピンク一色の着物。
 確か、都では花柄の着物とか着ていた。
 今着てるのはこの大陸で土の付いた所も見える着物。
 洗濯はしてるだろうし、着物の替えも何着かあるだろうが、きっと全部同じような状態だろう。

「……もうちょっと、身嗜みにも気を使いたいですね。まぁ、綺麗になっても、好きな人に振り向いてもらえなきゃ仕方ないですがね……」
「あ? お前、好きな奴いるのか?」
「いますけど、ヤラランだけには絶対教えませんから」
「……はぁ? なんじゃそりゃ」
「好きな人ができても、普通は同性にしか言わないもんなんですよ」
「へー、それは知らなかった」

 そういうことならば仕方がない。
 俺には男の友達もいないから恋愛うんぬんの話が今までなかったのか?
 言われてみれば、フォルシーナの催促ぐらいしか恋愛関連のことはない。
 という事は、かなり心配してもらってたのかねぇ……。
 そこまで深く考えてたのかは知らないがな。

「つーか、結局話が逸れてるよな。お前さては聞く気ねーだろ」
「あ、バレました?」
「バレバレだっつの……。でも、思ったより心が軽くなったよ。ありがとな」
「その一言が貰えれば、相談に付き合った甲斐があるというものですよ」

 言って、彼女は立ち上がった。
 先にスタスタと歩くフォルシーナに、俺も立ち上がって椅子を消し、早足で歩いて追いつこうとする。

「……そうそう、一つだけ言い忘れてました」
「あん?」

 振り返る彼女に、俺は追いかける足をピタリと止める。
 艶やかに微笑みながら、彼女は言った。

「例え貴方がどんな選択をしても、私はずっと貴方の味方ですから。もし変な失敗とかしたらフォローは任せてくださいよ?」

 優しい言葉だった。
 まったくコイツは、あまり助言できなかったわりに、俺の心は助言を貰った以上に軽くしてくれる……。
 そんな奴だからこそ、ずっとパートナーでいて欲しいんだ。

「あたぼうよっ。つーか昔っから任せてるっつーのっ」
「フフッ、そうでしたね……」
「ほら、もう帰るぞ」
「はいはい……。さて、明日はどーしましょうかねー」

 それから幾らかの駄弁をしながら帰路に着く。
 明日、明日か……。
 女は待たせるもんじゃない。
 早急に答えを出すとしよう。

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