連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/94/:真相・②
これは旅の中で知った話であり、噂話程度のことで真実かは不明な話。
俺の生まれる42年前、フラクリスラルは西大陸全土を相手にし、勝利を収めた。
親父も若き兵として活躍したらしいが、それは余談。
西大陸で一番大きな国、そこの王族はほとんどが陵辱、惨殺され、数名は禁固刑になったという。
その中で、10歳ほどの王女がいた。
魔法は4色使えたらしく、フラクリスラルにて、幼き姫は昼に労働、夜は豚みたいな貴族共の慰み者にされていたらしい。
その他にも生体実験や危険な魔法練習をさせられたりと、死んだほうがマシと思えるような扱いを受けていたようだ。
10歳の少女が精神を壊すのに時間はかからなかった。
3ヶ月も経てば、狂ったように笑っていたらしい。
そんな少女を哀れんだ、1人の貴族の青年がいた。
青年は家名を捨て、少女を助け出して西大陸へと発った。
青年は西大陸の惨状にも嘆いた。
フラクリスラルの軍人が陵辱や殺戮の限りを尽くし、魔法で建物を壊し、木々は枯れていったから。
青年は軍人と戦った。
軍人とは言え一般市民、貴族は多色使えるので勝利は揺るぎなかった。
そうして、青年は心に決めた。
軍人を殺し尽くし、西大陸の再生をしようと。
青年は建物を修復し、種を植えて作物を実らせ、人々の役に立った。
やがて幼き王女も心を取り戻し、青年と2人で大陸を回っていた。
それから多くの時が流れ、共に過ごした2人は子供を成した。
残念なことに、青年はフラクリスラルから来た兵に捕縛されてしまう。
その後青年はフラクリスラルで晒し首にされ、父親となることはなかった……。
この話が単なる噂かどうかは今となっては知る由もない。
だが、俺はキィから聞いた身の上を聞いて、確信したのだ。
この話が、真実であると――。
今から4ヶ月前に、フォルシーナが悪意調査のため、キィの生まれ育ちについて聞いた。
少し、その話をしよう――。
お母さんは私を守ってくれるし、強いし、優しい人だった。
なんでも教えてくれるし、私が声を掛けるとどんな事でも微笑んで聞いてくれる。
だけれど、2つだけ教えてくれないことがあった。
1つは、お父さんの事。
子供が生まれるには、男と女がいなきゃいけないらしい。
だったらお父さんが居るはずなのに、何も教えてくれなかった。
もう1つは、お母さん自身のこと。
過去のことはどうしても話してはいけないらしい。
それはフラなんたらって国の奴のせいらしいけど、お母さん自身も喋るのが辛いらしく、聞きたいとは思えなかった。
5歳の頃から魔法を教わった。
ただ生きていくために、人の獲物を奪う術と動物を殺すため、自分の生活に必要な力を得るため……。
どうやら私は、お母さんと同じ色の魔法が使えるらしい。
同じってだけで、嬉しかった。
いつも貧しかったけれど、生きる喜びがあった。
6歳からは、お母さんと共闘した。
私たちの魔法は生産性がないから、兎に角奪うこと、殺す事が必要不可欠だった。
他人と協力することは、幼い私が殺されるかもしれないというリスクを恐れ、お母さんがしなかった。
――ベチャリ。
肉片から血が垂れる。
草木にこびりつく赤黒い液体は、先ほどまで命あったものを象徴とする。
――バチャッ、バチャッ。
お母さんが血の水溜りを踏んで死体から獲物を取る。
そうして、私たちは喜んだ。
抵抗はなかった。
これが生きる術、これが生活するのに必要なこと。
私の日常だったのだから。
だけれど、お母さんはたまに泣いていた。
私に見つからないように、私が寝たときに。
私は寝たふりをして、お母さんが泣いている時のことを見たことがある。
悔しそうに、悲しそうに、鼻をすすって絶え間なく涙を流していた。
汚れた着物の裾で涙を拭って、ぐしゃぐしゃな顔で言葉を漏らす。
「どうして私には、あの人のようなことができないの……?なんで私は黄魔法や、緑魔法が使えないの……?人のために旅をしてきたのに……なんで、殺さなきゃっ……! ……うぅ……やだよぉ……もぅ…………私は…………」
寂しい呟きだった。
その日から、お母さんが泣いた次の日に、思いっきりお母さんを抱きしめた。
毎回やってると流石に盗み聞きがばれたのか、「弱いお母さんでごめんね」と謝ってきたけど、強い強いと反抗しておいた。
そしたらまた泣くし、よくわからなかったけど、お母さんのらためになれたと思えたから、良かった――。
「私、絶対この命大切にするから! お母さんが守ってくれたんだから、ぜっつたい、すぐには死んでやらないもんね!」
「死なないでよ〜……お母さん、悲しいもの……」
「お母さんこそ死なないでよね! 私が悲しむから!」
「……。もちろん、私は死なないよ……」
私たちはずっと戦い続けた。
時には剣を使い、主に魔法で、罠もよく張った。
ある時に、村を1つ占拠した。
私は大して強くなかったけれど、お母さんは赤魔法がとても強かったから……。
村を占拠すると、私たちに勝てないと知っている人々は私たちに遭遇すると持ち物を納めた。
命を取らずに、何回も貢がせる。
このやり方がとても効率の良いものだった。
だけれど、一箇所に止まったからこそ、私達は――別離する事になった――。
俺の生まれる42年前、フラクリスラルは西大陸全土を相手にし、勝利を収めた。
親父も若き兵として活躍したらしいが、それは余談。
西大陸で一番大きな国、そこの王族はほとんどが陵辱、惨殺され、数名は禁固刑になったという。
その中で、10歳ほどの王女がいた。
魔法は4色使えたらしく、フラクリスラルにて、幼き姫は昼に労働、夜は豚みたいな貴族共の慰み者にされていたらしい。
その他にも生体実験や危険な魔法練習をさせられたりと、死んだほうがマシと思えるような扱いを受けていたようだ。
10歳の少女が精神を壊すのに時間はかからなかった。
3ヶ月も経てば、狂ったように笑っていたらしい。
そんな少女を哀れんだ、1人の貴族の青年がいた。
青年は家名を捨て、少女を助け出して西大陸へと発った。
青年は西大陸の惨状にも嘆いた。
フラクリスラルの軍人が陵辱や殺戮の限りを尽くし、魔法で建物を壊し、木々は枯れていったから。
青年は軍人と戦った。
軍人とは言え一般市民、貴族は多色使えるので勝利は揺るぎなかった。
そうして、青年は心に決めた。
軍人を殺し尽くし、西大陸の再生をしようと。
青年は建物を修復し、種を植えて作物を実らせ、人々の役に立った。
やがて幼き王女も心を取り戻し、青年と2人で大陸を回っていた。
それから多くの時が流れ、共に過ごした2人は子供を成した。
残念なことに、青年はフラクリスラルから来た兵に捕縛されてしまう。
その後青年はフラクリスラルで晒し首にされ、父親となることはなかった……。
この話が単なる噂かどうかは今となっては知る由もない。
だが、俺はキィから聞いた身の上を聞いて、確信したのだ。
この話が、真実であると――。
今から4ヶ月前に、フォルシーナが悪意調査のため、キィの生まれ育ちについて聞いた。
少し、その話をしよう――。
お母さんは私を守ってくれるし、強いし、優しい人だった。
なんでも教えてくれるし、私が声を掛けるとどんな事でも微笑んで聞いてくれる。
だけれど、2つだけ教えてくれないことがあった。
1つは、お父さんの事。
子供が生まれるには、男と女がいなきゃいけないらしい。
だったらお父さんが居るはずなのに、何も教えてくれなかった。
もう1つは、お母さん自身のこと。
過去のことはどうしても話してはいけないらしい。
それはフラなんたらって国の奴のせいらしいけど、お母さん自身も喋るのが辛いらしく、聞きたいとは思えなかった。
5歳の頃から魔法を教わった。
ただ生きていくために、人の獲物を奪う術と動物を殺すため、自分の生活に必要な力を得るため……。
どうやら私は、お母さんと同じ色の魔法が使えるらしい。
同じってだけで、嬉しかった。
いつも貧しかったけれど、生きる喜びがあった。
6歳からは、お母さんと共闘した。
私たちの魔法は生産性がないから、兎に角奪うこと、殺す事が必要不可欠だった。
他人と協力することは、幼い私が殺されるかもしれないというリスクを恐れ、お母さんがしなかった。
――ベチャリ。
肉片から血が垂れる。
草木にこびりつく赤黒い液体は、先ほどまで命あったものを象徴とする。
――バチャッ、バチャッ。
お母さんが血の水溜りを踏んで死体から獲物を取る。
そうして、私たちは喜んだ。
抵抗はなかった。
これが生きる術、これが生活するのに必要なこと。
私の日常だったのだから。
だけれど、お母さんはたまに泣いていた。
私に見つからないように、私が寝たときに。
私は寝たふりをして、お母さんが泣いている時のことを見たことがある。
悔しそうに、悲しそうに、鼻をすすって絶え間なく涙を流していた。
汚れた着物の裾で涙を拭って、ぐしゃぐしゃな顔で言葉を漏らす。
「どうして私には、あの人のようなことができないの……?なんで私は黄魔法や、緑魔法が使えないの……?人のために旅をしてきたのに……なんで、殺さなきゃっ……! ……うぅ……やだよぉ……もぅ…………私は…………」
寂しい呟きだった。
その日から、お母さんが泣いた次の日に、思いっきりお母さんを抱きしめた。
毎回やってると流石に盗み聞きがばれたのか、「弱いお母さんでごめんね」と謝ってきたけど、強い強いと反抗しておいた。
そしたらまた泣くし、よくわからなかったけど、お母さんのらためになれたと思えたから、良かった――。
「私、絶対この命大切にするから! お母さんが守ってくれたんだから、ぜっつたい、すぐには死んでやらないもんね!」
「死なないでよ〜……お母さん、悲しいもの……」
「お母さんこそ死なないでよね! 私が悲しむから!」
「……。もちろん、私は死なないよ……」
私たちはずっと戦い続けた。
時には剣を使い、主に魔法で、罠もよく張った。
ある時に、村を1つ占拠した。
私は大して強くなかったけれど、お母さんは赤魔法がとても強かったから……。
村を占拠すると、私たちに勝てないと知っている人々は私たちに遭遇すると持ち物を納めた。
命を取らずに、何回も貢がせる。
このやり方がとても効率の良いものだった。
だけれど、一箇所に止まったからこそ、私達は――別離する事になった――。
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