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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/79/:花見・前編

 結局の所、フラクリスラルから寄せられた人々が多いために花見と演奏会をやることになった。
 フラクリスラルの表向きは音楽の国であるため、楽器を演奏できる者が多い。
 ステージは俺が即興で建てるし、演奏の技量が問われない神楽器を各々に使わせることにし、特に準備もいらなかった。
 神楽器をやすやすと渡すわけにはいかないが、能力さえ言わなければ大丈夫であろうと判断した。
 誰が楽器持って魔力上がるって予想できるんだよっていう。

 そんなわけで、花見をしに町人全員連れて森の中にやって来た。
 緑魔法で邪魔な木と草をうめてスペースを広げ、雑然と座って花咲く木を眺めながら、今日のために募った調理担当の料理を食べる。

「この辺りの花は紫なんですね。しかも、影に入るとピンク色に見えるとは不思議です」
「そーだな〜」

 なんの木なのかわからないが、辺りの木には紫の花びらが5枚付いた花が成り、花びらが1枚ずつ落ちていく。
 落ちた花びらは影の暗がりに入ると色を変え、色素の薄いピンク色になっていた。
 その花びらの一つを俺の隣に座るフォルシーナが取り、ジロジロと眺めていた。
 俺の乗ってるシートの上にはあとキィ、カララル、それからミュラリルが座っていた。
 今日のキィは最近見慣れつつあるツインテールで、また名も知らぬ草を食べて渋い顔をしている。
 カララルは本を読んでいるし、ミュラリルはやることもなさげに肩を狭めて小さく座っている。
 まだ陽光は緩やかな傾斜を描いており、朝と昼の中間といったところ。
 なのにみんな揃ってテンション低めだ。
 俺も木に寄りかかって半寝状態だけど。

「……ヤララン、どうされました? 今日は折角の催し物なのに元気ないですね?」
「だってさ、花とか見てあははうふふ言う歳でもないぜ? 珍しい花は良いが、あまり興に乗じることはできねぇよ」
「なんと、ヤラランは心まで捻くれてしまったのですか……。はぁ……」
「なんだそのガッカリの仕方は。男らしいと言え、男らしいと」
「どうせモテないんですから、可愛い子でも探してきたらどうですか?」
「人の話を聞かない上に卑下するとかどういう了見だよテメーこの野郎……」

 罵倒しながらも、俺の言葉には覇気が無かった。
 ぼんやりしていると眠くなったのだ。

「……おやおや、おねむですかヤラランくん。膝枕でもして差し上げましょうか?」
「木が頭の後ろの方が気持ちよさそうだからいいよ……遠慮しとく」
「……カチーンと来ましたよ。ヤララン、こちらに来なさい」

 ポンポンと自分の膝元に手をやるフォルシーナ。
 薄目でその様子を見て、生返事を返す。

「嫌だよ、億劫な。暇ならデザイン性あるステージでも建ててろ」
「なんですって〜! そんなんだからいつまで経っても彼女ができないんですよぉお〜!」
「痛い痛い、首が曲がる……」

 着物の襟を掴まれ、前後に揺すられる。
 力が入らず、首がガクンガクンと揺れて気持ち悪い。

「……はぁ。身の回りにこれだけ女性がいるのに、ヤラランはどうして身の内の獣を露わにしないのでしょう……」
「なんだよ、身の内の獣って。俺は俺だ」
「ぬぬぬぬぅ、ヤラランは思春期ですらないのですかっ! それはもう、男として終わってますよっ!」
「思春期とか言われてもわかんねぇよ……。割とロマン求めてるし、男らしいだろ?」
「……ファァァァァアア!!」
「ぬおっ!?」

 勢いよく放り投げられる。
 難なく着地し、フォルシーナへと迫った。

「何すんだ! あぶねぇだろ!?」
「ヤラランなんてもう知りませんから! バーカバーカ! うわぁぁぁあん!!」
「は? ……え?」

 フォルシーナは子供みたいに怒って森の奥へと走り去っていった。
 なんなんだ一体?
 いつものアイツらしくねー……。

「……どうしたんだよ、フォルの奴?」

 フォルシーナの悲鳴に気付いたキィが草を噛みながら尋ねてくる。

「いや、俺にもよくわからん。珍しいな、アイツが泣いてどっか行くなんて」
「珍しいって、初めてじゃねぇの?」
「何度かあったよ。でも理由はよくわからん。ほっとけばそのうち戻ってくるよ」

 昔もそうだった。
 勝手に泣き喚いてどっか行ったら数時間してしょぼくれながら帰ってくる。
 ここ3年余りはそんな事無かったが、2年前からそれより前には月に一度ぐらいの頻度で今みたいに走り去ってった。
 理由は不明だし、人様に迷惑かけなければ別にほっつき歩こうが知ったことじゃない。

「……でも、ここより森の奥なんて危険だろ?町人以外が居たら危ないんじゃ……」
「確かにそうだが、フォルシーナも一応7色使えるし、【力の四角形フォース・スクエア】作ったアイツが見知らぬ輩に負けるとは思えねぇよ」
「……なら良いけどな」

 実際、キィの心配は杞憂でしかない。
 フォルシーナは戦闘慣れしてないだけで本当は俺より強いかもしれない。
 お互い配慮し合って上手く模擬戦とかできそうにもないからわからんけども。

「……皆様、お若いですわね」
「??」

 何気なくなのかワザとなのか、ミュラリルがポツリと呟く。
 どこか含みのある笑みをしているが、どうだろう。

「ヤラランさん、フォルシーナさんを追いかけなさい」
「え? なんで?」
「いいですから、ほら」
「……わーったよ。どうせ暇だしな」

 ミュラリルに言われ、首を回してからノソノソと森に足を踏み出した。
 昼寝は暫く、お預けになりそうだ。

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