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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/76/:反論

 フォルシーナが俺に対してすぐさま否定的な態度を取る事は珍しく、思わず眉を跳ね上げた。

「……なんでダメなんだよ?」
「あの資金は会社が稼いだものであり、あなた個人のものではありませんよ……。魔法道具――神楽器などを作るにはそれなりに資金も要りますし、あまりにも無駄にお金を使われると困るのですよ」
「…………」

 神楽器だけで開発費が数百億に及んだ、とは聞いた。
 魔法道具自体を作るのはベースの道具さえあればいいから、実際は開発費というより研究費だと言えるが、それでも研究機材等は高かったようで。
 俺の我儘で金を使わせたというので会長への不信もあるかもしれない。

 しかし、俺の知らぬところでフォルシーナが手を伸ばしたおかげで都以外にも支店は多々あり、売り上げは都の本店に集めてそこから賃金を分配している。
 その系簿を見たが、十分以上の給料が払われている。
 余裕があるなら、良いことのために金を使ってもいいんじゃないか?

「まぁ、今後は作りたい物もないので資金は必要ないかもしれません。ですが、貴方が稼いだお金でもないのに私情で2000億使うなんて言語道断です」
「…………」
「会社はみんなで作ってるんです。ですから、今回は諦めてください……」

 みんなで作っている。
 そのリーダーである俺が、私情で金は使えない、か……。

「――わかった、フォルシーナ」
「……わかっていただけましたか。ヤラランにしては頭がやわ――」
「アルトリーユに支店を展開する」
「……はい?」
「なっ、王女様!」
「……え?」

 俺は両手でミュラリルの肩を持った。
 若干凄みを効かせる。
 普段はこんな手段に出ないが、50歩100歩の面倒な言論に入るとくすぶってしまうのだ。
 おわかりかね?
 俺は引きつった顔のミュラリルにニコニコと笑いながら言った。

「商会の稼ぎのため、アルトリーユに店を出す! いくつか土地を買うぞ! 前金は2000億フラ! いいよな!?」
「え? ええぇぇえ!!?」
「いいよなっ! なっ!」
「はっ、ははは、はいっ!!」

 刻々と金の縦ロールの髪を揺らして頷く。
 よしよし、これで取引は完了だ。

「……何てことをしてくれるんですか、貴方は……」
「ダメだったかよ?」
「いえ。そういう所、素敵ですよ」
「ハッ……だろ?」

 観念したようなフォルシーナが微笑む。
 アルトリーユにまでうちの商品が出回ってるかは定かではないが、支店が誕生してくれればいくらかの利益にはなる。
 何店も出して、そこから南大陸の他国にまで行けば半年ぐらいで2000億くらいすんだろ、多分。
 名前で売れてるから、多分できる……はず。
 王族とのパイプもできるわけだしな、うん。

「詳細は後で話そう。とにかく、負債の件で苦しまなくて良くなると思っとけ」
「……ありがとう、ございます……」
「おう、どーいたしまして」

 肩から手を放してやり半泣きになりながらポツポツと紡がれる世辞の句をもらう。
 ……強硬手段に出てしまったのは俺らしくないし、従業員にも悪いことをしたかもしれない。
 だけど、不満言う奴がいたら「目の前に困ってる奴いて見捨てんのか」とか言ってやりたいがな。
 そんな奴を雇ったつもり、少なくとも俺はない。

「しかし、よろしいのですか……? 見ず知らずのわたくし……いえ、アルトリーユなどのために大金を……」
「バカかよ。なんでい事のために金を惜しむんだよ。金なんて開発費と生活必需品と食いもん以外に使わんだろうが。なぁ、フォルシーナ?」
「ヤララン、世に居るカップルや普通の友達のいる人は遊びにお金を使うのですがね。恋人はもとより、友達いますか?」
「仲間と友達が同意義じゃねぇなら、俺には友達はいねぇかもな。だとしても、そんなに金のかかる話でもないさ」

 遊びに金を使うって言ったって、開発費に比べれば可愛いものだ。
 だったら金なんて、善い事するために使った方がいいだろう。

「てなわけで、金の事は気にしなくていいよ」
「は、はい……」

 曖昧ながらも王女様は頷いてくれた。
 そんなに畏まらんでもいいのにな。
 金でできる上下関係って、なんか下劣っぽいじゃん……。

「なぁなぁ、金の話とか私さっぱりわかんねぇから早く話進めてくれね?」
「ん。そうだな……」

 未だに壁を引っ掻いていたキィの催促を受け、次の質問を考える。
 もう聞きたい事は粗方聞いてしまったし、尋ねることがない。
 俺は口を閉ざし、助けを求めるようにフォルシーナに視線をやった。
 彼女は小馬鹿にするようにフッと笑い、俺の代わりに質問した。

「歳は幾つですか?」
「……今年で22歳ですわ」
「ほほう。私達より年上ですね〜。趣味と得意な魔法は?」
「趣味、といいますと……まだまだ下手ですけど、絵を描くことですわ。得意な魔法は遠距離攻撃系で、【雷光線サンダーレイ】かしら」
「雷系ならカララルと相性がいいんですかね。うちのカララルも雷使うんですよ」

 微笑みながら、まるで世間話でもするように質問をするフォルシーナ。
 カララルは本の虫となっており、キィと俺ははてな顏で様子を伺っていた。

「……この問答には何の意味がありますの?」
「おや? 仲良くなるにはまずこういう事を訊くものでしょう?」
「え……」
「ヤラランとはならなくていいですが、私とお友達になりましょう!」
「おいちょっと待て」

 思わず待ったを入れてしまう。
 さっきの「友達いますか?」ってのをまだ引きずって来やがったよコイツ。

「俺とも友達になれ。嫌でもなれ」
「ヤララン、ミュラリルちゃんが嫌ならなれないんですよ」
「知らん。つーかミュラリルは王族で年上なのにちゃん付けかよ」
「呼び捨てのヤラランには言われたくないですよーっ」
「んだとぉーっ!?」

 なんの意味もないいがみ合いが続き、視線の合間に雷でも
 フォルシーナも従者を自称してるくせに最近は俺に食って掛かってきて、なかなか偉くなったもんだなぁ、おぉ?

「……みなさん、本当に良い人なんですね」

 そのさなか、儚い笑みを浮かべながらミュラリルがポツリと漏らす。
 フォルシーナを罵しろうとしたが中断し、自信満々にこう言ってやった。

「当たり前だ。俺は世界一善魔力の多い男だぜ?」
「……そのようですわね」

 俺の言葉は承認され、彼女は辺りを見渡した。
 会話に参加してなかったキィもカララルも、一度静まったからか顔を上げた。

「……みなさん、こんなわたくしでよろしければ…………お友達に、なってくださいますか?」

 おそるおそるといった様子で尋ねてくる。
 俺たちは全員目配せし合って、軽く頷きあい、結論を下した。

『もちろんっ――!』

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