話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/66/:成長

 無事に事を収めた後に、俺はまた全員に向かって一言発した。

「今ここにいる奴で、今言った約束を守れない奴は抜けてくれ別に抜けた後を追うこともないから気にしなくていいぞ」

 それは最終確認といっても良かった。
 協力する以上、人殺しはあってはならない。
 当たり前のことのように思えて、憎しみが蔓延するこの地では難しい。
 だが、この場で去る者はいなかった。
 多少の憎しみがなんだろう。
 それよりも生きることを優先したいはずなのだから、去る事はなかった。

「――よろしい。じゃあ今から、ここに残った全員は俺の仲間だ。俺に従えとは言わない。俺と協力して生活環境をよくしていこう」

 微笑んで大らかに言う。
 殆どの奴が頷きや相槌を返してくれた。
 まずこれで、協力関係は成立した。

「……さて全員で自己紹介でもしててくれ。カララルとフォルシーナはここに待機、俺は人を探してくる」
「明主様の御心のままに!」
「いえいえ、待ってくださいよ」

 カララルは気のいい返事をくれたが、フォルシーナは待ったをかけた。

「流石に1人では行かせられません。キィちゃんを起こすか、私かカララルのどちらかも連れてってください」
「別にいいのに……」
「よくないですよ。不意打ちで死んででもみなさい。これから私たち、どうしたら良いのですか……」
「不意打ちなら回る人数1人も2人も変わんねぇだろ」
「むー……」

 頬を膨らまして怒ったように見せてくる。
 唸らなくてもいいだろ。
 はっきり言って、結界張っておけばいい話だ。
 人員を割いても無駄なのにいてくるということは、何か裏があるのか?
 直接俺に言わないのだからその裏も教えてはくれないだろう。

「……わかったよ。キィ起こして行くわ」
「はい。お願いします」

 渋々と承諾する。
 オマケで悪いが、キィにも少しは成長してもらおうかねぇ。
 そうと決まれば俺はさっさとキィのかたわらへと向かった。
 しゃがんで不機嫌そうなその顔の額にデコピンをかましてやる。
 バチンという良い音が鳴り、衝撃でキィの顎がガクッと動いた。

「……うがっ?」

 薄眼を開けて首を掻きながらゆっくりとキィが起き上がる。
 仕草がおっさんじみてるなコイツ。

「うがっ、じゃねぇよ。おはようさん。寝起きのところ悪いが、ちょい手伝え」
「……あの気持ち悪りぃ男は?」

 気持ち悪りぃ男。
 多分ミュラルルの事であろう。

「倒した。今は空でジタバタしてるよ」
「え? マジか」
「マジだ。だから俺を手伝え。もう次の事やってんだから」
「あ、あぁ。わかった」

 慌てながらキィは立ち上がって、俺と一緒に何件も人が住めそうなところを探した。
 予想通りに、何人も住居に隠れていて、その殆どの人とは和解し、うち一部では襲われたがすぐに【束縛リストレイント】で捕縛した。
 ある程度時間が経って、【力狩りフォース・ハント】の空間作用効果が切れそうなタイミングでミュラルルも捕縛し、彼の腕も空間も元に戻ると地上に下ろした。
 それから夜が来るまではずっと人数集めだった。
 人がいない所よりもいる所の方が多く、100余名は集まった。
 その過程で喧嘩をする者もあった。
 だけれど、俺とキィで止めた。
 キィも止めにかかってくれるのは嬉しかったが、理由を聞くと

「どっかのバカが、“人は仲直りできるから美しい”、とか言ったせいじゃね?」

 などと口を尖らせて言った。
 相変わらず可愛げがないが、それで十分。
 キィは良い奴に成長してくれている――。
 そのことはよく伝わった――。










 その後はミュラルルのみ5人で交代制の見張りにつき、残りは最初の村でやった事と変わりなかった。
 俺らで晩飯を提供し、全員で食べて幾つかの講演をしてからまとまって就寝、という形を取ろうとした。
 初めのうちは全員で外で寝る事にし、数人だけ外れて交代制で見張る。
 俺、フォルシーナ、キィ、カララルのいずれかは必ず見張りに加わるという前提でもあったが、全員睡眠は十分に取れるだろう。
 月も半ば傾いた夜の中に、街の一角は壁に寄りかかるかそのまま地べたに寝そべる人で溢れていた。
 人を恐れず安心して寝る。
 これも協調性を育む上で重要なことだ。

「……まだ起きているのですか」

 多くが眠った街道で、人を踏まないようにしてフォルシーナが壁に背を預けて座る俺を見つけて呟いた。

「お疲れではないのですか?」
「それなりに疲れたさ。けど、嬉しい日ってのは眠れないもんだ。気付いた時には寝てるんだがな」
「……左様ですか」

 言いながら、俺の横にゆっくりと腰を下ろす。
 殆どの人が寝静まっている中だが、なんだか2人きりになったような感覚だった。
 昔から一緒に居るせいだろう。

「いやぁ、今夜は冷えますねぇ」
「寒いか? 俺はそうでもねぇけどな。寒けりゃ赤魔法でも使ってろ」
「ダメですねぇ、ヤラランは。こういうときは「俺が暖めてやる」、ぐらい言わないと」
「気付いたら燃えカスになるかもしれないが、それでいいならあっためてやるよ」
「うまい事言わなくて結構ですよっ……まったく、そんなんだからいつまでも女ができないんですよ」
「……女ねぇ」

 藪から棒に恋愛関係の話を振られるとは、まさか発情でもしてんのか?
 発情してようがどっちでもいいが、俺はもともと女なんて求めてない。

「女ができなくて困ることなんか、俺にはねぇよ。俺は自分の封印までの道を生きるだけだしな」
「……まだそんな可能性の話を信じてるのですか?」

 可能性の話。
 つまりは善悪が平等であるという仮説……。
 それはどこまで本当か定かじゃないが、もし嘘ならばこちらを平和にするだけ。
 まだ嘘であるという確証はどこにもない。

「可能性がある以上は考えを変えないさ。人間、いつかは死ぬ。俺が封印されても、封印されたままか解除されて死ぬだろう。だったら、死ぬまでこの命を世界に使うってだけさ」
「……その世界に命を使うっていう根性には参りますね。いい加減近場の女性の魅力に気付けば良いのですが……」
「ん? なんだって?」
「わざと聞き返さないでくださいよっ。魅力がないと申しますかっ」
「さーてっ、どーだかなっ」

 魅力って一概に言われると、たくさん思い浮かぶ。
 フォルシーナは魔法道具も魔法も専門で口もなかなか上手いし、キィは強くなったし家庭的で良い奴で、カララルもわがままだが魔法が強力だし、一応は年長者だし、独特のキャラが楽しい。
 とはいえ、フォルシーナの言う“魅力”はそういう意味じゃないんだろうけど。

「もっと女磨いて、いい男見つけろよ」
「……他人事のようですね。貴方の言ったいい男の中に、ヤララン自身が含まれていないような言い草です」
「……はぁ。お前は俺の母親かよ。母親でもそんな恋愛云々に口出ししてこねーよ。気にし過ぎだ、寝ろ。あんま起きてると頭固くなるぞ」
「痛いです痛いですっ。もうっ、寝ますから……はぁ……なんだか哀れですねぇ」

 顔を押しのけるが、俺の手を外される。
 何が哀れだ。
 余計なお節介なのだった。

「連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く