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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/61/:寂れた街へ

 飛行中は風の音しか感じなかった。
 ジリジリと背中に感じる太陽の暖かさが次第にます程度で、特に変化もなく緩やかに飛行を続けた。
 飛行速度がゆっくりなのはキィに合わせるよりも、カララルのためという理由だった。
 カララルは飛べないし、マフラーも渡すかの判断をしかねている。
 別の魔法道具で飛べるようにして欲しいが、フォルシーナにそう頼むより抱えて一緒に飛んで貰えばいい。
 つまり、飛行慣れする必要のないカララルに無理に怖い飛行をさせるわけにもいかないって事だった。
 あまりにも速いと目とか痛いし、早く着く必要もないのでこれで良かった。

 日が少しぐらい傾いた頃に、森から隔離された建物の群れが見えた。
 隙間なく敷き詰められた雑居群は木造のものばかりであったが、看板の付いた建物が比較的に多い。
 そう、今回は旧街だ。
 村とは色々と違う点があるだろう。
 1つは広いこと。
 村跡の3倍は広い。
 その分、人が多くいるかもしれないが……襲われる可能性も大きくなる。
 2つ目は周りの建物が高い事だ。
 そして建物は殆ど隙間なく立っていて、上から狙われたら厄介そうだ。

「まぁ、争いに来たわけじゃねぇけどな……」

 空中に留まって様子を見ながら呟く。
 最初の村跡と同じようにネズミ一匹出歩いておらず、無人であった。
 本当に人が居ないのかなりを潜めているのかは判断できない。
 確認のためにも、降りる必要がありそうだ。

「降りるぞ」
「男なんですから、先行してくださいね?」
「はいはい、わーったよっ…….」

 フォルシーナに言われ、俺は街を半分に割ったような大通りの入り口にゆっくりと降りた。
 草も生えぬ硬い質感を足の裏に感じながら街を眺める。
 上方からはあんまり目立たなかったが、争いの起こったであろう形跡が目立った。
 あちこち壊された跡や燃えて黒ずんでいたりする。
 それが目新しいものなのかはわからないが、人が居たのはわかった。
 俺は一歩、また一歩と足を踏み出す。
 誰か、いるだろうか?
 俺がここに歩いていることに気付いているだろうか?
 いつ襲われてもおかしくない状態だ、気が気じゃない。
 だけれど俺は直実に一歩、また一歩と前に踏み出す。

「……誰もいないのか?」

 何分過ぎただろう。
 俺は道を半分ほど抜けて十字路の真ん中にポツンと立っていた。
 後方からはいつの間にか降りてきたフォルシーナ達が歩いてくる。

「キィ。聞きたいんだが、こうして歩いてたら誰か気付くよな?」
「足音がしたら100m離れてても気付くぞ。まぁこっちは複数人だしな。急に飛びかかってきたりはしねぇだろ」
「なるほどね……で、その100m離れててもわかるキィさんよ。誰かいるか?」
「屋内に立て込まれてる分にゃよくわかんねぇよ。けど、いるとは思ったぜ?」
「……はーん」

 人が居る。
 だったら話は早い。

「【無色魔法カラークリア】、【音響サウンド】」

 例の如く、唇に魔法を発動する。
 さて、なんて言おうか……。
 まずは挨拶か?

『こんにちはぁ〜!聴こえてるか〜?』
「うわ、うるさっ」
「まぁまぁ、キィちゃん……」

 後ろの方から小さな非難を受けながらも、俺は言葉を紡ぎ続ける。

『俺はヤラランって言うんだけど、これからここでみんなと協力して生きたいと思ってここに来た! 協力してくれるって奴は大きな十字路の前に立ってるから出てきてくれ! 1人で生きるのはみんな辛いはずなんだ! 協力しようぜ!』

 ここで言葉を切って、音響サウンドを解除した。
 フゥッと息を吐いて、後ろに向き直る。

「お前ら、誰が出てきても文句言うなよ」
「あまりにも変人じゃなきゃ構わねぇよ」
「美人な女の子出てきませんかねぇ……」

 キィのまともな発言と違い、フォルシーナは頭がふやけてるのかと思われそうな発言だった。
 なぜこの状況で頬を赤らめてくねくねしてるんだお前は。

「……明主様、お腹が空きました」
「お前ら緊張感ねぇのな……」

 カララルも腹を鳴らしながら俺に擦り寄って来て、どうにもみんな緊張感に欠ける。
 気楽過ぎるのも考えものなんだが……。

「ほら、誰か来たぞ」

 体に伝わる緊張が一層増す。
 北の方から恐る恐る歩いてくる影は2つ。
 その影は、俺の目の前までやってきて、こう言った。

「ヤララン様……? ああ、矢張りヤララン様でしたか!」
「このような場でお会いできるとは……この僥倖に感謝いたします!」

 畏まった口調で俺にへつらう少年と少女は見たことがあった。
 それはまだ、俺が貴族のガキだった頃――知り合いだった、同じ貴族の仲間だった。

「セイニス、セラユル。どうしてお前らがこんなところに――?」

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