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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/55/:模擬戦・後編

 赤き光りを放つ衝撃波は巨大だった。
 人間なんか軽く飲み込んでやると言わんばかりの斬撃は地を割りながら俺の元へ迫る。

「【二重/力の四角形デュアル・フォース・スクエア】!!!」

 前に出した両手、そこから生まれた半透明な2枚のオレンジのパネル。
 面の範囲を超えた圧力が、2つの四角形から発射される。
 衝突する斬撃波と圧力は爆風を生み、双方共に・・・・一瞬で消え去った。
 二重/力の四角形デュアル・フォース・スクエアが、相殺だ。
 俺の持つ魔法ではかなり強い部類に入るそれをなんなく相殺に持ち込んだのだ。

「防戦一方かよヤララン! 【青龍技せいりゅうぎ】――」
「ッ――! うるせぇ!! 【緑魔法カラーグリーン】――」

 舌を巻く暇さえなく、次の魔法の準備に入る。
 キィの刀は再び蒼く光り気泡をポゥッといくつも浮かばせ、俺は右腕をキィに標準を定めて魔法を発動させる――。

「【氷雪旋舞ひょうせつせんぶ】!!!」
「【木の四角形ツリースクエア】!!!」

 俺の右手からは身長と同程度の薄緑の四角形が現れ、大量の木の根が一直線にキィまで伸びてゆく。
 キィが放った斬撃から現れたのは、吹雪を伴った旋風だった。
 白い吹雪が輪を成して木の根にブチ当り――根を凍らせ、すぐさま通過した。
 地面と根は氷で合わさり、それ以上の前進も望めない。

「チッ!【羽衣天韋はごろもてんい】!」

 ここで俺もマフラーを羽衣に転換させ、飛行することで旋風を避ける。

「そらぁっ!!」
「なっ!?」

 しかし、飛んだ先にはキィがいた。
 投げやりに振られた刀を紙一重に躱し、後方に距離を――。

「【束縛リストレイント】」

 移動する間も無く、黒い帯が俺のももから肩までを巻き上げた。
 キィの放った黒魔法だった。

「へへへっ。勝負あったな、ヤラランっ!」
「ぐっ……してやられたぜ……」

 刀を顔面に突きつけられる。
 もはや俺には、降伏以外に選択肢がなかった。










 模擬戦後、全員でフォルシーナの魔法講座らしきものに強制参加させられることとなった。
 会場はメリスタスの部屋で、みんな雑然と座っている。
 メリスタスの部屋だから、それすなわちナルーや他にも動物がワイワイしている。
 カララルのことも動物達は慣れたのか、普通に彼女の膝元に猫がごろついていた。

「何故キィちゃんがヤラランの【二重/力の四角形デュアル・フォース・スクエア】を受け止められたか、ですが……魔法威力の上限を突き破った、とでも言いましょうかね。その上限を突き破る方法を教えて差し上げたまでですよ」

 今日も口がぺちゃくちゃと忙しそうなフォルシーナは得意げに語る。
 上限を破る方法?
 確か前に話してた気もするが……なんだったか?
 俺の疑問は、メリスタスが聞いてくれた。

「フォルシーナさん、それって?」
「それはですね、魔法を使うときにものすご〜〜〜〜くへりくだるんです」
「……うん?」

 フォルシーナの言ったことに少年は首を傾げた。
 だが、俺は納得した。
 昔聞いてたな、確か。

「感謝、とでも言ってもいいんですが、少し違うんです。遥か太古に魔法の精霊というのがいたらしく、私の見解では今でも見えないだけで実在してるんです。なのに、人間は魔法を発動するときに『これ発動しろ、あれ発動しろ』としか考えてない。ですので精霊は怒りプンプンなのです。このせいで人間は半分も魔法の効力を発揮できません」
「…………」
「で、遜るんです。『いやぁ〜、精霊様ありがとうごぜぇやす。魔法発動してぇんですけど、いいですかねぇ?えぇ?』みたいな感じです。そうすると精霊もいい気になって力を強くしてくれるんですよ」
「…………」

 身振り手振り説明してくれてるのに、誰もが無言になった。
 いや、それも仕方がないだろう。
 そんな魔法のシステムなんて聞きたくなかった。

「まぁ、ヤラランは『この力のおかげで俺は頑張れる。感謝しきれない』みたいな事を考えて魔法使ってるらしいから結構強いんです。で、私は遜るのも面倒くさくなって弱いんです。下手したでに出るって難しいですね」
「……そ、そうなんだ」
「ちなみにこの理論はまだ発見されてませんからフォルシーナ理論その451と名付けてます。フフフフフッ、敬いなさい」
「誰も聞きたくねぇ理論だな」
「それは私の名前を聞きたくないと!?」
「どっちもだわ」
「おおおおおっ、ヤラランの罵倒が、酷くなりましたねぇ……うううっ」

 胡座あぐらをかいて顎肘つきながら適当言ってるとまたしても泣き真似をする我が従者。
 なんだか欠伸が出るな。
 いや、実際にはしないが……。
 それにしても、遜ってるから魔法が強い、ねぇ。
 【二重/力の四角形デュアル・フォース・スクエア】を防いだんだし、キィは遜りまくったに違いない。
 まぁ結界を打ち破ったカララルの方が強いかもしれないけど、相殺というのは少し悔しい。
 …………。

 ――あれ? なんでカララルは俺の【無色防衛カラーレス・プロテクト】を破れるほどの威力を持ってたんだ?

 ひょんなところで引っかかった。
 あんな暴走状態じゃ魔法に対してへつらう事なんて出来ないだろう。
 どうして彼女の魔法は強かった?
 それに、男に捨てられたみたいなことを言ってたけど、それはいつの話なんだ?
 1ヶ月も経てば落ち着くんじゃなかろうか?
 というか、この大陸で人と縁切りするより殺す方が良いんじゃないのか?
 疑問は絶えず出現し、頭の中をぐるぐると回り続ける。
 俺は唸ることもなく似合わない腕組みをした。

「なぁなぁ、ヤララン」
「……なんだよ?」

 考え事をしていると、俺の丸まった背の上からキィが乗っかってくる。
 今はメイルがないからももの柔らかみがそのまま伝わるんだが、それはそうとしてもお前は女としてそれで良いのかよ。
 あえて公言はしないが。
 してもフォルシーナにからかわれて終わりだから、2人のときにそれとなく伝えよう。

「私、勝っただろ?」
「見たことねー技ばっかで予測付かなかったんだよ」
「お? 負け惜しみ?」
「…………」

 こやつめ、ここぞというときに調子に乗りやがって。
 俺は殺さないがために攻撃全然せず手心加えてたというのに……。
 ……負け惜しみだ、やめよう。

「まぁいいや。私勝ったしさ、今度なんか言うこと聞いてくれよ」
「はぁ? なんかあるなら今言えばいいしゃねぇか」
「今はいいから貸しだっつってんの。忘れんなよ〜?」
「…………」

 死人ではないが、口なしではある。
 俺は渋々と頷いた

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