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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/53/:祈りごと

 夜になり、この村跡にいる人間たちは全員旧村長宅に集まっていた。俺がフォルシーナに名指しで話を持ちかけられるまでは。
 折角カードゲームに興じていたのに光なき村道を歩かされ、少し気分が悪かった。

「なんだよ、改まって話って?」
「別に改まって、というわけでもないでしょう。私達はずっと2人だったではありませんか」
「そうだけど……2人でなきゃできない話ってのがわからん。一体なんなんだ?」
「……別に、大した話ではありませんよ」
「はぁ……」

 曖昧に返事を返す。
 月の照らす暗闇の道を歩きながらも俺は疑心暗鬼の念が頭に詰まっていた。
 フォルシーナが2人で話そうだなんてロクなことにならない。

「……まぁ、軽い話をしましょう。ねぇ、ヤララン? 私がいなくて寂しかったですか?」
「いや、そんな事考える暇もなかったな」
「ひ、酷いぃ……私は2人の事をすごく心配したんですよぉお」
「無駄な心労だな。俺が居る以上キィは死なせねぇし、まず俺が死なねぇっつの」

 よく知った事のはずだ。
 俺は色々と危機に瀕する事はあるが、死ぬ事はなかった。

「えぇ、ホントに無駄な心労でしたよ……ですけど……」
「なんだよ、歯切れ悪いな」
「……キィちゃんの方も、無駄に貴方の事を心配していたようですので、後で心配掛けたなど労ってあげてください」
「…………」

 意外な言葉だった。
 怪我するところも見せたし心配掛けたかもしれないが、フォルシーナが知ってるってことはまだ心配してんのか。
 今は誰にも襲われることもないのに。

「飛んでる間に話は幾つか聴きましたよ。随分、あの子に想われてるようですね」
「はぁ? 寧ろ嫌われるような事ばっかしてたと思うんだが……」
「貴方がどう行動しても、感じるのは本人ですから」
「…………」

 一昨日あたりからツーンとした反応ばかりしてたアイツが、ねぇ……。
 まぁ悪く思われてないならそれでいいんだがな。
 フォルシーナの言う事は元々びた一文信用ならないから実際どうだか知んねぇけど。

「ま、そういうことにしておいてやる」

 だから肯定もせず否定もせず言葉を返した。
 フォルシーナはそれに微笑んで、両手で自分の頬を持ち上げた。

「はぁ、こうして私の知らないところでヤラランは大人になるのですね……私は嬉しくもありどこか虚し――」
「お前は俺の親かよ。お前、俺がキィとはそんな関係にはなれねぇって知ってんだろ?」
「フフフフ、それは貴方の推測でしかないというのもお忘れなく」
「…………」

 不敵に笑うコイツが今の俺には悪魔にすら見えた。
 確かに、俺の考えた可能性というのは最悪な話だと思う。
 キィの過去を聞いて俺の推測が現実でない可能性なんて――。

 ……いや、考えたって仕方がない話なんだ。
 適当に話題を反らすとしよう。

「つーかお前も年頃なんだから男でも見つけりゃいいのに……」
「あら、私の心配までするだなんて……私が貴方に惚れちゃいますよ?」
「適当言いやがって。銀髪を引きちぎって猫じゃらしにしてやろうか? さぞかし綺麗な猫じゃらしに猫様も大喜びだぜ?」
「ひ、酷いっ! 髪は女の命ですよっ! 抜くだなんて言ったらダメですっ」
「それとも7、8本引き抜いて綿毛作って飛ばしてやろうか? 飛んでる途中で鳥についばまれるとか素敵だろ?」
「それが私の髪じゃなければ、そうですね……」

 ため息混じりに肩を落とすフォルシーナさん。
 俺も話の腰を折れて安堵し、肩を落とした。

「……なんだか、どうでもよくなってきました。主要な用件をお話ししますね?」
「おう」
「明日から数日、ここに留まって刀の能力に慣れてもらいます。キィちゃんも、ヤラランもね」
「……俺も?」
「【七千穹矢】があるんです。一千とか二千とか名付けた必殺技があるに決まってるでしょう?」

 わかってないなぁというように頭を振りながら息を吐く銀髪。
 お前のセンスなんて知らん。
 が、狂気色インサニティカラーで赤があったのだから黄色や青があっても不思議ではないと思ってはいた。

「まぁヤラランには実際に発動はしてもらいません。干からびて死んでしまいますからね。代わりにキィちゃんと模擬戦をしてもらいます」
「……俺、死ぬかもな」
「何言ってるんですか……剣の小技は厄介なものですが、ヤラランなら多分どうにかできますよ」
「……そうかい」

 別に、俺が不安視してるのは剣ではなくてキィに殺意があるかの有無だがな。
 フォルシーナはああ言っても俺はキィに自分が嫌われてるようにしか思えない。
 模擬戦を体のいい理由に殺されたりしないよな……?
 ……そんなことがないと祈ろう。

「以上です」
「…………」
「なんですか?」
「……いや」

 話はどうやら終わりらしい。
 主要な話と言ってたが、それならみんなと話せた。
 つまり、主要な方は前置きの方だったのだろう。

「さ、私は少し夜の散歩に行って参ります。ヤラランは戻っててください」
「……あいよ」

 隠れ藻もない拒絶を受け入れる。
 研究専門のフォルシーナだ、1人で考えたいことも多いだろう。
 俺はその場を後にし、キィやメリスタスの元へと戻っていった。










 実際には、私は散歩などせず適当な屋根の上から月を眺めていました。
 今夜はどうも雲が多くてあまり良い空は見えないようで、私も少し複雑な思いでした。

「……いつかは折り合いをつけなくてはいけませんよ……」

 そっと呟いた独り言は誰にも拾われないで消えていく。
 この儚さは彼らの関係を表してるようで皮肉に思えたのでした。
 推測は推測でしかない。
 だけれど、半分は確実に当たっている。
 だからキィちゃんにはまだ伝えていないけれど、これからは折り合いをつけて話をするでしょう。
 ヤラランもヤラランでもう半分の推測を信じてしまっている。
 それはそれで構いません。
 だって不仲になることはないですから。
 まぁ、後はキィちゃんがどれだけ親殺しの犯人を恨んでるかですね。
 一応ヤラランに好意を持たせるようには促しましたが、これがどれだけ効くのか――。

「……願わくば、仲良しでい続けたいですね」

 そうなることを願って、私は生まれて初めて月に祈りを捧げたのでした。
 神聖とも言えぬ、この夜に――。

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