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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/52/:再会と紹介

 場所は村跡から少し離れた平地。
 猫も狼もカララルに反抗するもんだから森に入る手前まで来たのだった。
 今ここに居るのは別れる前の4人とナルー、そしてメリスタスだけだった。

「……夕方を過ぎると思ったが、速かったな」
「へへっ、途中でコツを掴んだんだよ。今ならヤラランとも競えるぜ?」
「ほー? 後で勝負すっか?」
「はいはい2人とも。熱くならないで折角会えた私に抱きつくぐらいは――」
『しねぇよ』
「……私、戻ってこなかった方が良かったのでは……ううっ」

 2日振りに見るフォルシーナの姿は特に変わった様子もなく、赤い着物に銀髪。
 カララルの方も変わらず、赤い着物。
 ただ、フォルシーナより色が濃いが。

「つーかなんでカララルが居るんだよ。お前何しに戻ったわけ?」

 そしてそのカララルはさっきから俺の腰元に抱きついている。
 フォルシーナが俺の声に気付き、眉をハの字に曲げて答えた。

「だって盟主盟主とうるさいんですもの……私だって何してきたのかわからないぐらいです」

 消え入る声でぶつくさ言うあたり、申し訳ないと思ってるみたいだ。
 そんな風にされたら怒るに怒れない。

「……まぁいいや。ご苦労だったな。村も万事OK?」
「万事順調でしたよ。みんながみんな辛い思いを経験しているだけあって、平和を遵守じゅんしゅしてます」
「……そうか。そりゃ何よりだ」

 順調と聞いて安心する。
 ともあれ、半年も絆を築いた仲だし、変な事は起きないであろう。

「……で、こちらでは何があったのですか?少しはキィちゃんから聞きましたが……」
「それについては後で話す。とりあえず、そこのオレンジに自己紹介してくれ」
「お、オレンジって僕?」

 この場でオレンジの色を持つのは1人しかいない。
 どうやら自覚はあるみたいだった。

「はいはい。さ、可愛い女の子さん。私はフォルシーナと言いまして、魔法の学説と何故か商談が得意です。趣味は魔法の道具を弄ることです。どうぞ、よろしく」
「……。……あの〜……」
「はい?」
「僕、男です……」
「…………」

 フォルシーナの顔が、笑顔のまま固まった。
 気持ちの良いスマイルだ。
 ……キモい。

「……男の子、ですか?」
「う、うん……」
「…………」
「な、なに……?」
「……。ヤララン」
「なんだ?」
「この子は私が貰っていきますね」
『えっ!!?』

 極めて和やかにフォルシーナはメリスタスの頭に手を置いた。
 当人とキィの口から驚嘆が漏れる。
 お前は可愛いものならなんでもありかっ。

「俺に許可得る意味がわかんねーよ。本人に訊け」
「ですって! ねぇ僕!? いいですか!?」

 ガシッとメリスタスの手を掴み、脅迫に近い形で銀髪が問いただす。

「え、えーと、それはちょっと……意味もよくわからないし……」
「くぅ〜! フられてしまいました! ところでその可愛さの秘訣はなんですか? 洗顔料などを詳しく――」
「あーもう、フォルうるせーよ。話を進めろ」

 話の流れが面倒くさくなったのか、キィがしゃがんで頬杖つきながらそれとなく注意する。
 一瞬フォルシーナの動きは止まり、メリスタスから離れてわざとらしく咳払いを1つする。

「取り乱してしまいました。飛びながら皆さんとどうやって円満な関係を築こうか考えたわけですが……ここを補給地とさせてくれませんか?」

 この村は侵略せずみんなを俺の村に連れ込むでもなく、休憩所とする。
 それがうちの指揮担当の選択だった。

「補給地?」
「はい。私たちが保有する物資は限られます。ですが、わざわざ海岸近くまで後退するのも億劫というもの。ここに物資を置かせてもらい、後退する範囲を狭めたいのです。どうでしょう?」
「ど、どうでしょう……うーん、ナルー、どうしよう?」
「私は賛成でございますよ。あまり場所を取られると困りますがね」
「うん……ナルーが良いんだったら、僕もいいよ」

 曖昧ながらオレンジの髪を揺すってコクコクと少年が頷く。

「ありがとうございます。それともう1点。私達はこれから人を更生させながら進むので、拠点が幾つか必要になります。その為、ここの一角を拝借したいのです。勿論、無償とは言いません。物資の一部を寄贈しますし、身の安全も保証しましょう」
「ほう。身の安全に勝るものはありませんね。承諾いたしますよ」
「……牛さん、ありがとうございます」

 苦笑を浮かべて謝辞を述べるフォルシーナ。
 牛と取引してんだもんな、そりゃ顔も引きつる。

「て言うと、また戻って人を連れてくる、と?」

 キィが悪態つきながらフォルシーナに質問する。

「いえいえ、こちらは4人もいるのですからその必要はないでしょう。この村を守るのは1人で事足りますしね。皆さんお強いですから」
「私はそんなでもねーぞ」
「謙遜ですよキィちゃん。それと、後で刀の使い方も伝授しますので」
「……おう」

 キィは面倒くさそうに返事を返した。
 伝授とは俺の持つ奴とは違うオマケの技だろう。
 習うのもいちいち面倒くさそうだ。

「さ、じゃあ話も一段落ついたというところですかね。昼食をとりましょう。お腹空きましたし」
「……はいはい、そーだな」

 この場をどうするかの問題もあっさりと解決し、フォルシーナが【黒魔法】で簡易なキッチンを作り、調理に取り掛かった。
 なんともまぁ呆気ない。
 さすがは頼れるフォルシーナ姉さんといったところか。
 なんて、今更なことを思ったのだった。

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