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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/47/:無色対決

「【力のフォース――」

 突っ込みながら、左手に魔力を与え、オレンジ色の小さな四角形を生み出す。
 目だけはしっかり敵を捉えており、奴が咄嗟に手を翳すと同時に俺は横に飛んだ。

「【力弾フォース・リボルバー!】」
「ハッ」

 手のひらより放たれる空気砲は当たることもなく通り過ぎて行く。

「リボルバー! リボルバー!」
「馬鹿の一つ覚えかよっ、と」

 手のひらの向きで弾道はわかり、羽衣の力で飛びながら躱して男に迫る。
 弱い、所詮は不意打ちしかできない奴か。
 徐々に距離を詰めて行き、俺は両手で柄を掴んで刀を振り被る。

「【羽衣――」
「【空間停止スペース・ストップ】」
「正――うおっ?」

 振り被った刀が空中で静止する。
 動こうとしても、両の腕が全く動こうとしない。
 腕の部分だけ空気が固定されたのだ。

「卑劣だ、なぁっ!」
「うおっ!?」

 完全に油断していたのか、男を蹴り飛ばすと胸に直撃して吹き飛んだ。

「――四角形スクエア】!」

 その隙に、半ば詠唱していた【力の四角形フォース・スクエア】で固まった空気を吹き飛ばす。
 もちろんのこと、俺の手も砕いて――。

「【回復の六角形ヒールヘキサゴン】」

 手は原型を留めずグニャグニャに曲がってしまっていた。
 だからこそ回復系の形系統の魔法を発動する。
 無数の小さな黄緑の魔法陣が手の周りに出現し、円の面が腕や手を通過していく。
 通過した箇所は完治しており、元どおり五本指もちゃんとくっついている。
 しかし、痛みがなくなるわけではない。
 暫くは刀も握れないだろう。
 手と共に吹っ飛んだ刀の元までバックステップで戻り、俺の影に囲まれるとゆっくりと沈んでいく。

「……ってぇ〜。あーもう、マジ殺してやる」

 コートの男もゆっくりと起き上がる。
 首を手で支えて頭を何度か振り、俺を睨んでくる。

「やってみろよ。【力の四角形フォース・スクエア】」
「【捻れる力フォース・ターン】!」
「【二重デュアル】」
「【フォース!」
「【三重トリプル】」
「チッ!」

 3つで三角形を描くように薄オレンジ色の四角形が宙に浮く。
 それぞれの大きさは俺の身長と同程度の四方であり、放たれる強力な圧力がコート野郎の無色魔法を悉く無力化し、尚且つ追い討ちを掛ける。
 総面積も大した攻撃ではなく、四角形の圧力は一歩で避けられてしまう。
 そんなものは百も承知だ。

「【力の立方体フォース・キューブ】」

 俺はその場にオレンジの箱を置き、再び駆ける。

「【力弾フォース・リボルバー】!」
「当たんねえっつうの!」

 またしても単調な空気砲を放たれるも、最小限の動きで全て避けて近付く。
 だが、またさっきみたいに拘束されるのは厄介だ。
 なので、

「【追尾球体パスート・スフィア】!」

 3つの白い球を出現させ、俺は一度立ち止まる。

「【二重デュアル】!」

 さらに3つのスフィアを出現させ、一気に全てを男に放った。
 距離に3mも無く本来ならば逃げ場もない――。

「【無色防衛カラーレス・プロテクト】!」

 しかし敵は【無色魔法】を扱う。
 得意とする【無色魔法】の防護策で防ぐのが定石だ。

 スフィアが全て圧縮された空気を放ち、爆発を起こす。
 結界は即座に割れ、暴風と粉塵が舞う中俺は地に手を付いて堪えて影から再び反善の剣を取り出した。

「【発散エミッション】!」

 力強く叫ぶ。
 と同時に、後方に設置した力の立方体が爆発した。
 その威力に乗って俺は前方に飛び出し――

「【羽衣正義】!!」

 刀を振り切った――。

 だが、何一つ手応えはなかった。
 結界さえ無く、俺は呆然と立ち尽くす。
 迂闊にもほどがあった。
 粉塵の煙の中に突っ込んだのだ。
 これならどこから攻撃が来たっておかしくは――

「【防衛――」

 頭が働くよりも口が動いた。
 防衛魔法を張れと体が反応したのだ。

「【フォース――」
「!」

 言葉を最後まで紡ぐ前に、言葉に反応して振り返ってしまった。
 刹那襲った腹部にある激痛と共に、俺は吹き飛ばされた。
 刀は無造作に転がり、俺はうつ伏せに倒れる。

「がっ……」
「お前もバカのひとつ覚えだな。【無色魔法】っつー遠距離攻撃があんのにわざわざ突っ込んで来やがってよ。使い方がなってねぇよ、バカが」
「ッ……ハッ……敵の心配なんざ……余裕、じゃねぇか」
「まぁな。この距離ならテメェがまた妙な【黄魔法】使う前にブッ殺せるからな」
「…………」

 目がくらむ。
 歪んだ視界でも辛うじてコートの男が目前に立っているのがわかる。
 俺の腹はどうなっているんだ?
 とにかくメイルがぶっ飛んで血が出ていることしかわかんねぇ。
 ヤバいなぁ、こりゃあ……。
 意識オトシたら完全にアウトだろう。
 …………。
 ……【羽衣正義】でなんとかしようと考えていた。
 それで可能なら、メリスタスに謝罪させたかった。
 でもどうやら無理らしい。
 ちょっと余裕がない。
 じゃあ――殺す気でやっていいよな?

「ヤララン!」
「動くなよお嬢ちゃん。コイツの頭吹き飛ばすぞ?」
「ッ!! あのバカ!」

 キィが近くまで来てるらしい。
 でもいいさ。
 自分で解決できるから。

「【赤魔法カラーレッド】……」

 ポツリと小さく呟く。
 筋力増強を全開にし、腹筋を絞めて無理に止血を試みる。
 こんなのでも無いよりはマシでだいぶ楽になった。

「ま、嬢ちゃんが動いても動かなくてもブッ殺すんだけどな。あばよ」

 男が俺に右手を翳す。
 それと同時に俺は魔法を発動した。

「【力狩猟フォース・ハント】」

 手にオレンジの光が収束する。
 俺は右手で空気を掴み――勢い良く“破いた”。

「……あ、なんだこりゃ?」

 俺と男との間には灰色のナニカが遮ってしまう。
 俺の右手に残るは地面と建物と男の上体の映った“景色”そのもの。
 布のようにたたれたそれを手から離し、ゆらりと立ち上がる。

「これ発動すると、既に発動済みを別にして無色以外は1時間ぐらい発動できねぇんだわ。代わりに無色は無詠唱でも最大効力なんだけどよ」
「なっ……お前、なんで立ち上が……」
「傷は……ああ、ひでぇもんだな。まぁメイルが幾ばくか守ってくれたんだろ」

 腹部からはポタリポタリと血が滴っている。
 まぁ止血は簡易でも済んだ。
 1時間意識がありゃ死なないだろう。

「悪いけど、これ使ったら加減が利かねぇんだ。だから、死んでも文句言うなよ?」
「ッ――【力弾フォース・リボルバー】」
「…………」

 至近距離で空気の弾丸が放たれる。
 だが俺は避けようともせず、ただ空気を掴み、軌道上の空間をビリビリに破いた。
 破いた後には灰色が残るだけで、空気の弾など来もしない。
 ひょいっと破った後を潜り、男に1歩近づく。
 するとバックステップで距離を取られるが、敢えて追わなかった。

「な、なんだコイツ……変な魔法使いやがって」
「キィ」

 男を無視し、俺はキィの事を呼んだ。
 刀を構えていて今すぐにでも飛び出しそうな姿だった。
 そんな彼女に安心させるため俺は笑った。

「大丈夫だからすっこんでてくれ。大丈夫、本当に。今の俺に勝てる奴は居ないから」
「…………」
「信用ねぇか。そりゃまぁ、腹がこんなんだしな。でも大丈夫」

 そこで今一度、男の事を目にする。

「コイツを殺す事ぐらいワケないから」

 さて、反撃しようかな――。

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