連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/39/:勧誘
「そっか、西大陸を統一かぁ……」
俺の行動理念を聞き、猫を撫でながら感嘆するメリスタス。
話は短くまとめたつもりだが、キィは飽きたのか猫じゃらしを使って周りの猫と遊び、ナルーは眠っていた。
まだ朝だぞ、寝るんじゃない。
「僕はいつも地下にいるからよくわからないけど、それって大変なんだよね?」
「わかんねぇな、まだ始まったばっかだし。でもよ、できたらいいなと思うだろ?」
「もちろんだよ! みんな寂しいはずだもの! 僕だって……」
「…………」
辛そうに歯噛みする目の前の少年。
動物達に囲まれていても、人間の温もりはないのは寂しいだろう。
言葉が通じるのはおそらくナルーぐらい、それ以外には会話をする相手もいない……。
猫たちだって反応はしてくれるだろうけれど、握手したり、撫でてくれたりはできない。
そりゃあひとりぼっちよりは断然マシだろうが、やっぱり人間といたいものだ。
その寂しさを知っているから、俺の言葉を肯定してくれたんだろう。
「……僕さ、いつも本を読んでたんだ。ここにあるやつはもうだいたい読んじゃったけれど、冒険書とかが一番好きだったんだ……。仲間と一緒に敵を打ち倒すの。ちょっと主人公が羨ましかった。僕もこんな風にたくさん仲間を作れたら、って思ってたけど……本の中とは世界も違うしね。物語は終わっちゃうし、ダメだね……あははは……」
「…………」
儚い声で、俺に苦笑を浮かべる。
仲間と一緒に敵を打ち倒す、冒険……。
そうか……。
「……なぁ、メリスタス。よかったら俺と――」
「ダメだよ」
「…………」
言い切る前に、首を横に振りながら拒否を受ける。
「どうしてだよ……お前、冒険したいんだろ?」
「……したいけどね。けど、僕はここを離れる訳にはいかないんだ。僕は【白魔法】が使える。つまりは光が出せるから、さ……ほら、猫は見えるけど、暗闇だとよく見えない動物もいるから……」
「……むぅ」
そう言われるとこちらも厳しい。
【白魔法】が使える奴を村から引っ張って来ても良いが、それでは大差ない。
それとも此処では使えなくても俺の再興させた村では使えるし、動物全体を移動させても良いが……共生できるかが少し不安だ。
それに、何かに襲われた時に守りきることは厳しい。
「……他の奴に案を考えてもらうか」
「え? じゃあ……キィちゃん?」
「私はヤラランより馬鹿だぞ。思いつかん」
「こういうのが得意な仲間がいるよな、キィ」
「あぁ、変態な女が1人居るな」
「??」
思い浮かぶは銀髪のデカ女。
まぁデカ女といっても痩せ型か。
なんでも作るしネーミングの悪い、ヘンテコな奴。
「……でもよ、ヤララン? フォルは今どこいるかわからねぇだろ? 歩いて戻ってるならまだ森ん中だ」
「歩いてるわけねぇよ。アイツの事だ、効率よく行くためにカララル抱えて飛んだだろ。神楽器を使えば1時間もせず着くさ」
ふざけていても時間を無駄にするような奴ではないというのは俺が一番良く知ってる。
存外真面目な面が強くて頼もしい奴なんだ。
きっと、俺の思ってるように行動しているだろう。
キィは俺の言葉に不満があったのか、それを口にする。
「はぁ……? 少し迷子になったのもあるけどよ、私達は森から近場の此処まで1時間以上掛かったじゃねーか」
「お前に合わせてたんだよ。俺もフォルも飛行には慣れてるからキィの20倍は速く飛べる」
「…………」
「別に遅いからって何も思ってねぇさ、気にすんな」
「おう……」
あんまり言いたくなかったことだが、事実なので伝えておく。
大海を1日立たずで飛んだ俺が1時間も大陸を飛び回れば村跡なんて10は軽く目についただろう。
まぁ遅かったからといって怒りを感じているわけじゃないんだ。
寧ろ1日空いてフォルシーナ達が村に着いているという推測が今できるから、良い。
「じゃあさ、飛行訓練ついでにフォルシーナ呼んできてくれよ」
「……私がか? 別にいいけどよ……」
「迷子になるなよ?あ、メリスタス。地図とかあるか? 俺ら持ってねーんだよ」
「地図? うん、あるよ〜」
メリスタスが立ち上がって本棚の横に立てかけてある黒い筒を持ち、俺にそれを手渡した。
「はい。この大陸全土の地図だよ」
「ふむ……」
筒を開き、中から丸まった紙を取り出し、テーブルに広げる。
陸を表す緑と海を表す青、そして地名を表す文字が載っている。
うむ、確かに地図だ。
「現在地はここか……キィが行くならこの距離は1日掛かるかもな」
「……なげー」
「だな。行くなら明日に頼む。行かねぇなら俺が今から行くけど、どうするよ?」
「……私が行くよ。練習は必要だろうしな」
やけにショボくれているが、行ってくれるなら良いだろう。
俺も戻ってもいいが、こっちの様子ももっと詳しく知っておきたいしーー折角西大陸の書物もあるから、何かしら読んでおきたい。
文化が違うのだから東大陸と西大陸では伝承、伝説も違う。
本場のここで情報を少し知っておきたい。
作った村でも書物は幾つかあったが、かつての村長の家の書簡に、官能小説があっただけだったからな……。
「了解っ。メリスタス、そういうわけなんだが、一晩俺達を泊めてくれないか?」
「勿論だよ。あぁでも、綺麗な部屋とか無いような……」
「構わねぇさ。野宿なんて日常茶飯事だっつうの」
「そ、そっか。じゃあみんなに邪魔にならないよう、好きに使ってね」
「あぁ。んじゃ、一回外に出るわ。行くぞ、キィ」
「んあっ? 良いけど、この猫連れてって良いか?」
「あっ、その子が抵抗しなかったら、連れてって良いよ? 酷いことしないでね?」
「しないっての……」
猫じゃらしで遊んでた猫を両手で抱えてキィが立つと俺も椅子から立ち上がり、足元の猫を踏まないように扉の方に歩く。
「じゃあ、またな。呼びたかったらさっきみたいに手叩いてくれたらすぐ行くよ」
「うん。じゃあ、また後でね」
「おう」
「またなー」
和かに笑って小さく手を振るメリスタスに見送られ、俺たちは退室した。
なんとか動物達とも友好関係を築けそうだし一応当面の目標は達成しただろう。
あとはフォルシーナ次第でメリスタスが仲間になるかが決まる……はず。
「仲間になるといいな、メリスタス」
「……別に」
「あ? なんでだよ?」
「……自分の胸に聞け」
「?」
キィに何気なく訊いても快い返事は無かった。
どうやらまだ不機嫌らしい。
どうしたら機嫌が直るやら……。
俺の行動理念を聞き、猫を撫でながら感嘆するメリスタス。
話は短くまとめたつもりだが、キィは飽きたのか猫じゃらしを使って周りの猫と遊び、ナルーは眠っていた。
まだ朝だぞ、寝るんじゃない。
「僕はいつも地下にいるからよくわからないけど、それって大変なんだよね?」
「わかんねぇな、まだ始まったばっかだし。でもよ、できたらいいなと思うだろ?」
「もちろんだよ! みんな寂しいはずだもの! 僕だって……」
「…………」
辛そうに歯噛みする目の前の少年。
動物達に囲まれていても、人間の温もりはないのは寂しいだろう。
言葉が通じるのはおそらくナルーぐらい、それ以外には会話をする相手もいない……。
猫たちだって反応はしてくれるだろうけれど、握手したり、撫でてくれたりはできない。
そりゃあひとりぼっちよりは断然マシだろうが、やっぱり人間といたいものだ。
その寂しさを知っているから、俺の言葉を肯定してくれたんだろう。
「……僕さ、いつも本を読んでたんだ。ここにあるやつはもうだいたい読んじゃったけれど、冒険書とかが一番好きだったんだ……。仲間と一緒に敵を打ち倒すの。ちょっと主人公が羨ましかった。僕もこんな風にたくさん仲間を作れたら、って思ってたけど……本の中とは世界も違うしね。物語は終わっちゃうし、ダメだね……あははは……」
「…………」
儚い声で、俺に苦笑を浮かべる。
仲間と一緒に敵を打ち倒す、冒険……。
そうか……。
「……なぁ、メリスタス。よかったら俺と――」
「ダメだよ」
「…………」
言い切る前に、首を横に振りながら拒否を受ける。
「どうしてだよ……お前、冒険したいんだろ?」
「……したいけどね。けど、僕はここを離れる訳にはいかないんだ。僕は【白魔法】が使える。つまりは光が出せるから、さ……ほら、猫は見えるけど、暗闇だとよく見えない動物もいるから……」
「……むぅ」
そう言われるとこちらも厳しい。
【白魔法】が使える奴を村から引っ張って来ても良いが、それでは大差ない。
それとも此処では使えなくても俺の再興させた村では使えるし、動物全体を移動させても良いが……共生できるかが少し不安だ。
それに、何かに襲われた時に守りきることは厳しい。
「……他の奴に案を考えてもらうか」
「え? じゃあ……キィちゃん?」
「私はヤラランより馬鹿だぞ。思いつかん」
「こういうのが得意な仲間がいるよな、キィ」
「あぁ、変態な女が1人居るな」
「??」
思い浮かぶは銀髪のデカ女。
まぁデカ女といっても痩せ型か。
なんでも作るしネーミングの悪い、ヘンテコな奴。
「……でもよ、ヤララン? フォルは今どこいるかわからねぇだろ? 歩いて戻ってるならまだ森ん中だ」
「歩いてるわけねぇよ。アイツの事だ、効率よく行くためにカララル抱えて飛んだだろ。神楽器を使えば1時間もせず着くさ」
ふざけていても時間を無駄にするような奴ではないというのは俺が一番良く知ってる。
存外真面目な面が強くて頼もしい奴なんだ。
きっと、俺の思ってるように行動しているだろう。
キィは俺の言葉に不満があったのか、それを口にする。
「はぁ……? 少し迷子になったのもあるけどよ、私達は森から近場の此処まで1時間以上掛かったじゃねーか」
「お前に合わせてたんだよ。俺もフォルも飛行には慣れてるからキィの20倍は速く飛べる」
「…………」
「別に遅いからって何も思ってねぇさ、気にすんな」
「おう……」
あんまり言いたくなかったことだが、事実なので伝えておく。
大海を1日立たずで飛んだ俺が1時間も大陸を飛び回れば村跡なんて10は軽く目についただろう。
まぁ遅かったからといって怒りを感じているわけじゃないんだ。
寧ろ1日空いてフォルシーナ達が村に着いているという推測が今できるから、良い。
「じゃあさ、飛行訓練ついでにフォルシーナ呼んできてくれよ」
「……私がか? 別にいいけどよ……」
「迷子になるなよ?あ、メリスタス。地図とかあるか? 俺ら持ってねーんだよ」
「地図? うん、あるよ〜」
メリスタスが立ち上がって本棚の横に立てかけてある黒い筒を持ち、俺にそれを手渡した。
「はい。この大陸全土の地図だよ」
「ふむ……」
筒を開き、中から丸まった紙を取り出し、テーブルに広げる。
陸を表す緑と海を表す青、そして地名を表す文字が載っている。
うむ、確かに地図だ。
「現在地はここか……キィが行くならこの距離は1日掛かるかもな」
「……なげー」
「だな。行くなら明日に頼む。行かねぇなら俺が今から行くけど、どうするよ?」
「……私が行くよ。練習は必要だろうしな」
やけにショボくれているが、行ってくれるなら良いだろう。
俺も戻ってもいいが、こっちの様子ももっと詳しく知っておきたいしーー折角西大陸の書物もあるから、何かしら読んでおきたい。
文化が違うのだから東大陸と西大陸では伝承、伝説も違う。
本場のここで情報を少し知っておきたい。
作った村でも書物は幾つかあったが、かつての村長の家の書簡に、官能小説があっただけだったからな……。
「了解っ。メリスタス、そういうわけなんだが、一晩俺達を泊めてくれないか?」
「勿論だよ。あぁでも、綺麗な部屋とか無いような……」
「構わねぇさ。野宿なんて日常茶飯事だっつうの」
「そ、そっか。じゃあみんなに邪魔にならないよう、好きに使ってね」
「あぁ。んじゃ、一回外に出るわ。行くぞ、キィ」
「んあっ? 良いけど、この猫連れてって良いか?」
「あっ、その子が抵抗しなかったら、連れてって良いよ? 酷いことしないでね?」
「しないっての……」
猫じゃらしで遊んでた猫を両手で抱えてキィが立つと俺も椅子から立ち上がり、足元の猫を踏まないように扉の方に歩く。
「じゃあ、またな。呼びたかったらさっきみたいに手叩いてくれたらすぐ行くよ」
「うん。じゃあ、また後でね」
「おう」
「またなー」
和かに笑って小さく手を振るメリスタスに見送られ、俺たちは退室した。
なんとか動物達とも友好関係を築けそうだし一応当面の目標は達成しただろう。
あとはフォルシーナ次第でメリスタスが仲間になるかが決まる……はず。
「仲間になるといいな、メリスタス」
「……別に」
「あ? なんでだよ?」
「……自分の胸に聞け」
「?」
キィに何気なく訊いても快い返事は無かった。
どうやらまだ不機嫌らしい。
どうしたら機嫌が直るやら……。
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