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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/32/:別行動

 さっきからフォルとは2人になるというのに、また2人になってしまう。
 やれやれと思いながら頭を掻いていると、フォルが怪訝な様子で私に話しかけてきた。


「キィちゃん、ヤラランを1人で戦わせないでくださいね……」
「あ? ヤラランはつえーだろ?」

 ヤラランは強い。
 村で過ごした半年で何度か戦いぶりを見たが、魔法を的確に発動し、意のままに操っている。
 普段から簡単にこなしているが、実際はそんなに簡単なことじゃない。

 フォルから教わったことだが、魔法は前方に放つとか、ただ簡単な命令なら誰でも発動できる。
 しかし、意のままに動かすとなると、それは魔法学校とか言う場所で学んでないとかなり難しいらしい。
 例えばヤラランはよく光球を出す。
 あれを私もやっていたが、頭上で固定していないとすぐに消滅してしまう。
 もとより曲がりくねらせる魔法なんて必要としてなかったが、戦闘となるとかなり厄介だ。
 なのに、ヤラランは【追尾球体パスート・スフィア】なんて技を使い、しかも他の魔法を混ぜ合わせている。
 そんな奴を私が心配してやる必要があるかってんだ。
 むしろ私を守ってくれ。

「確かに、半端じゃなく魔法も強いし、俊敏な動きをします。人を殺しても良い、という条件下なら彼は最強と言っても過言じゃありません。ですが、1対1なら私にも負けるかもしれません」
「はぁ……なんで?」
「彼は異常に強いですが、魔法だけです。そして、魔法は人を簡単に殺せますから。だから彼は、躊躇ばかりして敵を倒せません。カララルの腕も治していたでしょう?」
「……確かにな」

 この島で他人を治癒する場面に出くわすことは滅多にない。
 それもその筈、仲間なんていないし、魔力も無駄だ。
 休んでれば、魔力は回復する。
 だがもし、休む余裕がなかったら?
 そう、人助けをする理由なんてないんだ。

 なのに、ヤラランはどうだ?
 相手が誰であれ、本気で慈愛を注ぐ。
 そんな驕りが、自らの死を招くかもしれないのに。
 確かに、そんな奴には戦わせてやれねぇな。

「わかったよ。ま、よーは1人で戦わせなきゃいいんだ。ちゃんと見守ってるよ」
「キィちゃんは戦わないんですか? あぁ、どうせ戦わせてもらえないですもんね」
「そうだよっ。アイツはほんとにお人よしだからな〜……」

 そういう所に好感が持てるんだがな。
 頼りになるし、魔法は得意だし、何をとっても、私はヤラランを嫌いにはなれねえぇなぁ……。
 …………。

「キィちゃん、顔が真っ赤ですよ?」
「え!?」
「冗談ですよ、ウフフフ……」
「しばくぞ銀髪ーーーーッ!?」
「きゃあぁ〜」

 その後、なにやらにやけたフォルを追っかけまわしているうちにヤラランたちが戻ってきて追いかけっこも終わりを告げた。
 村で合流したらしばいてやろう。

「んじゃあ少し別れだ。早くて今晩には戻りてぇなぁ……」
「長くとも待ってますよ。無事でいてくださいね」
「へいへい、わーってるよ」

 長い付き合いで築かれた信頼からか、ヤラランもフォルもこの程度の別れは惜しくないように普通に話している。

「キィちゃん、ヤラランの野生が目覚めたら死ぬ気で身を守るんですよ?」
「あ、あぁ……」
「そんな事はしねぇから! 何回も重ねて言うんじゃねぇよ!」
「盟主様になら私は抱かれても……」
「お前はすっこんでろ!」
「ひうっ!?」
「…………」

 カララルも今日あったばかりだというのにすっかり馴染んでいるし、コイツらよりキャラの薄い私って、なんだか浮いてないか?
 ……いや、浮いてても良いんだけどな。

「だーもう! お前らと居ると口煩くちうるさくて敵わん! キィ、行こうぜ」
「おう。じゃあまたな、フォル、カララル」
「うぅ……キィちゃん、お気を付けを」
「うわーん! 盟主様ぁあ!!」

 泣いたフリをするフォル、カララルに至っては聞いてもいない。
 まぁそれも致し方なし、か。

『【羽衣天韋】』

 私とヤラランは同一の言葉を呟く。
 刹那、マフラーが羽衣へと姿を変えた。
 身にまとわりつく水色の羽衣に若干違和感を覚えながら、これで飛べんのかとジャンプしてみる。

「お?」

 重力による落下はせず、そのまま高度を増していく。
 停止、と頭の中で考えれば停止し、右に移動しようとすれば移動できる。
 凄えなぁ、これは。
 空を飛ぶのは初めてだが、中々楽しいかもしれない。

「じゃあな! また村で会おうぜ!」

 木々を超えた高さで浮遊する私に追いついたヤラランも、紫の羽衣で飛び上がる。

「お気をつけを!」
「盟主様ぁ! 嫌ぁああああ!!!」

 フォルは笑顔で手を振って、カララルは泣いて手を伸ばすだけ。
 ここまでくるとヤラランも可哀想だな。
 2人を無視してヤラランは私に指示をする。

「行くぞ、キィ。旧エリト村は向こうだ」
「あいよっ」

 ヤラランが指差す方へ、私たちは飛んで行った。
 猫の村、楽しみでもあるが気を緩めてはいけない。
 とりあえず死なないように、頑張るとしよう。

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