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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/26/:羽衣正義

 キィを肩に担ぎ、赤魔法で強化した足で草を蹴り進む。
 自己が出せる最高速度で駆け抜けた。
 歩いた距離は短い。
 大丈夫、だから――無事でいてくれ――。

「――フッ!」

 結界を張ったポイントまで戻ると、空中で一回転して着地、移動を停止してキィを寝かせる。
 着いて10mほど前方、そこには真っ赤なシャツを着た女が1人と、血塗れのフォルシーナの姿があった――。

「――――ッ。嘘だろ……」

 顔は赤黒く、ピンクの着物もあの銀髪も、血の染まっている……。
 木に寄りかかったフォルシーナの前に立つ赤い服の、腰まで伸びた黒髪を持った女。

「……あら?」

 赤服の女は俺の存在に気付き、ゆらりと振り返る。
 鋭い目付きをし、唇がニィと吊り上がった、嫌な女だった。
 服は上から下まで真っ赤。
 シャツの下は長襦袢か、それも血で赤い。
 さしずめ、殺人鬼といったところか。
 成る程成る程、コイツはここで潰しておかないといけない――。

「初めまして……粛清してやるよクソ女……。俺の仲間を殺した事、死ぬほど後悔させてやる!」
「元気な坊やねぇ……アハッ、アハハッ……! 殺す殺すっ!!」

 どこからともなく出された黒い長剣を振り上げ、女は俺の元へと駆けた。
 曲がった背筋から自然と低い体勢での突撃。
 近付く距離の中、剣が投げられるーー。
 飛来する剣は抜刀した大剣を振るって弾き、迫った女にも振り下ろす。
 とっさに横に飛んで躱され、手から出現させた黒剣で突きが放たれる。

「【力の四角形フォース・スクエア】!」

 剣に対して掌をかざす。
 魔力によって出現した半透明のオレンジを彩った四角形は剣をそっくりそのまま圧力で押し返す。

「ヒヒッ!」

 角度もなさずに戻る剣を女は紙一重で躱し、上に飛んだ。
 身動き取れぬ空中など、格好の的でしかない。
 女に向けて掌を翳す。
 女もニヤリと一層深く笑って、俺に手を翳した。

「【力の四角形フォース・スクエア】!」
「【雷鉛リード・サンダー】!」
「!」

 オレンジの長方形から圧力が放たれ、女の手から鈍色にびいろの雷が放たれる。
 雷は圧力を受け流して俺の元へと届いた。

「グウゥッ――!!」

 肉体が焼けるような激痛。
 だが雷、そんなものはすぐに消え――俺の体はガクンと落ちた。
 鉛のように重い――雷の付属効果か。

「ゲフッ――アハハハハッ、痛っ、アハハッ!」

 だが、女も無事ではない。
 空気の衝撃波を思いっきり受けたのだ。
 見えた姿は、片腕を押さえながら立ち上がるところ。
 腕が折れたか。
 好機……。

「【無色魔法カラークリア】、【追尾球体パスート・スフィア】」

 空気がねじ曲がって出来た高圧で人の頭程の大きさの球体を3つ出現させる。

「【緑魔法カラーグリーン】」

 スフィアに【緑魔法】を加え、白濁とした色から緑に変わる。
 その時、女が俺に片手を向けて――

「【雷撃サンダー】!」

 雷撃が放たれる。
 直撃まで間もないだろう。
 しかし、魔法1つ発動するぐらいはどうということはない――。

「【爆破ブラスト】ォ!」

 俺の目の前で、球体が1つ爆破した。
 刹那、【緑魔法】が発動して大量のつるが現れる。
 蔓は網目込まれて雷と俺を挟み、雷を阻む。
 2つのぶつかる衝撃波が壁を越えて俺を襲い来るも、壁は壊れることはなかった。
 そりゃあ防衛結界を一撃で破られた威力、しっかりと魔力を込めて防いださ。
 同時に残りのスフィアが壁を越えて攻撃に向かった。

「!」
「【爆破ブラスト】!」

 驚嘆が聞こえた瞬間に爆破させる。
 高圧の効果は捨て、【緑魔法】で再び蔓を生み出す。
 蔓が女に触れた感覚が魔法を通して伝わったと感じると体全体に絡ませた。

「……捕らえたか?」

 壁から顔を覗かせてみる。
 赤服の女は腕で頭を隠すような姿勢で蔓に縛られていた。
 身じろぎ一つ出来ないことだろう。
 確認すると、俺は女の前に躍り出た。

「……グギッ……殺す……離せ……離せっ!!」
「黙れよ。今からお前を粛清してやる……」

 俺の相棒を殺した罪を償わせる。
 それは別に殺すって意味ではない。
 痛みを与えようだなんていうのは俺らしくないから。
 だからこそ、とある魔法・・・・・を発動する。
 フォルシーナが作った、本来ありえぬ8色目の魔法。
 俺は女の鳩尾みぞおちに、そっと手を置いた。

「……【紫魔法カラーヴァイオレット】」

 発動しようとすると、涙が出た。
 先ほど見た、フォルシーナの亡骸。
 もうアイツは動いてくれない。
 そいつが作ってくれた“形系統かたちけいとう”という魔法の、最後の1つ――。

「【感情エモーション――」
「それには及びませんよっ!!」
「!?」

 謎の言葉に発動を防がれる。
 どこからの声かと辺りを見渡した。

「――【羽衣正義】」

 直後に俺の隣に何かが舞い降りた。
 振り向くとそこには、昨日見た刀で女を一閃するフォルシーナが立っていた。

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