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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/23/:羽衣天韋

 東大陸であっても、村から村へは馬を引いておよそ2日を要する。
 歩いて行けば5日は掛かるといったところであった。
 雨が降ったりすれば歩もとどこおるし、地形についても詳しくない。
 そりゃ場所くらいは聞いて来ているが、遭難する可能性もある訳で、故に慎重に進まなければならなかった。
 最悪飛んで行けばいいのだが、キィは無色魔法が使えないので飛んでもどっちに村があるか確認するに留まるだろう。
 なんにしても時間がかかるというわけだ。
 歩きながらしりとりでもして時間を潰すか、何かお題を出して連想ゲームでもするぐらいしか時間を潰せず、退屈だった。
 景色は殆どが森続きで腰の辺りまで伸びている雑草を斬りながら進むのみ。
 人を見ることもない。
 こちらが3人だから勝ち目がないとして隠れているだけかもしれないが、会うこともないのだ。
 目新しい事もないと退屈過ぎる。
 しかし、目新しいものは、意外な所から出てきた――。

 夜、焚き火を囲んでボケっとしていた時のこと。
 フォルシーナがぐーっと伸びをしながら独り言を呟いた。

「あぁー……疲れました。いやぁ、歩き疲れるとは、歳なんですかねぇ……」
「お前が研究ばっかで引き篭もってるからだろ。運動しろ、運動」

 呟きを拾って適切と思われる対応を取る。
 だが彼女はニヤッと笑い、自身の影に手を伸ばした。

「フッ、これを見ても同じことが言えますかな?」
「出すなら早く出せ」
「まぁまぁ、慌てずに」

 漸くフォルシーナが影から手を出す。
 同時に出てきたのは毛糸で編まれた薄い紫色のマフラーだった。

「なんだ、随分家庭的になったな」
「いえ、編んだのはキィちゃんです」
「いや、編まされたんだ」
「フォルシーナ、クズになったな」
「いやいやいや、まぁ待ってくださいよ」

 俺たちを制して、よっこらしょとおっさん臭く立ち上がる。
 手に持ったマフラーを垂らし、息を大きく吸い込んで一言。

「【羽衣天韋はごろもてんい】」

 刹那、マフラーは唸りをなしてフォルシーナの手を離れて宙を舞い、薄い面が2つに分裂する。
 やがて彼女の体に巻きつき、羽衣の形を成した。
 ……別に、何とも思わんな。

「……それで?」
「なんとこの羽衣、魔力を送ると空を飛ぶことが可能なのです!」
「へー……そりゃ便利だな」
「あ、私が使うのか? そしたら飛んで行けるだろ?」
「そうですそうです。ほら、研究ばかりも悪くないでしょう? ね? ね?」
「いや、この程度なら前から作れたんじゃねーの?」

 この世には存在し得ない魔力増幅器なんて作った女が、今さら飛行具の1つを作ったってな……。
 どっかしらに似たような物が売ってた気もするし、大した研究じゃなかったんだろう。

「フッ、これを見ても同じことが言えますかな?」
「まだなんかあるのかよ。一片に出せばいいのに」

 キィが俺と同じ様な態度で文句を垂れる。
 お前まで呆れたか。

「いいですからっ! ほら! コイツです!」

 再び影から出したのは、細長い刃ーー刀と呼ばれる武器だった。
 柄はマフラーと同色の紫色で、オシャレに金の鈴が付いている。

「この刀では、【狂気色インサニティカラー】という私が勝手に作った技が、羽衣と合わせることによって発動できるようになります。私じゃ魔力が足りないので、ヤラランにちょっとやってもらいましょう」
「いや、俺にやらせんのかよ……」
「私が発動したら多分、善意も悪意もスッカラカンになっちゃいますよ。お願いしますね。……【羽衣解衣はごろもかいい】」

 羽衣は一瞬にしてフォルシーナの首に巻かれ、ぐるぐると外して俺に渡してくる。
 なんか信用ならねぇなぁ……。

「……【羽衣天韋はごろもてんい】」

 不詳ながら受け取ったマフラーが、体の周りを飛び回って落ち着いた頃には羽衣としてふわふわと浮く。
 続いて刀を渡され、不審がりながらそれを見つめた。
 白銀の刃は大剣と比べると軽く、持ちやすいが……。

「……どうすんの?」
「こう、カッコよく【狂気色インサニティカラー赤】、【羽衣天技はごろもてんぎ七千穹矢ななせんきゅうや】!!!”と言ってください」
「スッゲェ言いたくねぇな……」

 なんだよ、羽衣天技って。
 凄く痛々しくないか?
 言わなきゃダメか?

「ヤララン、早くやれよ」
「マジで?」
「いい暇つぶしになるからな」
「……キィ、テメェなぁ……いや、もうやってやるよ。【狂気色インサニティカラー赤】……」

 投げやりに言葉を呟いた、その時。
 手に持った刀が、赤く光り輝いた。

「……お?」

 柄は伸び、刀は形を変えて弓となる。
 赤く輝く弓は掴んでる感覚もなく、まるで雲を掴んでるようだった。

「……【羽衣天技はごろもてんぎ】」

 呟いた瞬間、俺を取り囲むように鬼火のような赤い光がポツポツと出現する。
 まばゆい赤い光に囲まれ、よくわからない状況だ。

「これ、どーすんだ?」
「矢を持ってるつもりで弓を引いてください。そして、空に向かって撃ってください。あ、撃つ時は七千穹矢ななせんきゅうやって言わないとダメですよ?」
「はいはい、【七千穹矢ななせんきゅうや】っと」

 適当に空へ向かって矢を放つ仕草をする。
 撃つ瞬間に手元から赤く光った刀が現れ、矢として空高くに射出された。
 同時に、全ての赤い光球が矢を追い掛けて空へ行く。
 暗い夜空は赤く染め上げられ、そして――爆発した。
 1つ爆発すると光球は連鎖的に爆発を起こしていく。
 ゴォオオオオオンという音が鳴り響き、思わず弓を落として耳を塞いだ。
 が、次の瞬間にやってきた爆風により、俺の体は弾き飛ばされた。

『のわっ!?』

 俺の隣にキィも飛ばされてくる。
 フォルシーナは予期していたのか、木に捕まっていた。
 風が止むとすぐに起き上がる。
 だが、

「……うわっ」
「なんだ? どうした、ヤララン?」
「……なんかだるい」

 立ってみて、自分の状態に驚いた。
 魔力がごっそり減ってるからか、気を抜くと倒れ兼ねない。
 いくらなんでも、これは減り過ぎだろう。

「どうですか、ヤララン?」

 刀を拾いつつ、フォルシーナが尋ねてくる。

「どうもこうもねーよ。これ3回も撃てないし、使い道とぼしいわっ」
「は?2発“は”撃てるんですか? 流石はトンデモ魔力量ですね。常人が撃ったら干からびて即死ですよ」
「尚更使い道ねーじゃねぇか!」

 普通の人は使えないと。
 じゃあ一体なんのための武器なんだか……。

「まぁまぁ、そんな慌てないでください。この武器にはもう1つ能力があるんです」
「能力多いな、オイ」
「多様性というのは便利ですから」

 フォルシーナはニッコリと笑って、残りの能力を告げた。

「この剣は斬った人間の善と悪を反転させる。あなたが所望した剣ですよ、ヤララン」

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