連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/20/:春前
俺が1度東大陸に帰還して、物資と人員を移送してから、村の発展は著しく早くなった。
魔法で作物を育て、服を織り、昔に使われていただろう水路の復旧なども行われた。
主に発達を促したのは技術班だったが、村人もみんなで作業をこなしてそれが身を成したからこそ成長したのだ。
食料の備蓄は、40人近くとなった村で冬を越すには十分過ぎる量となって、食うに困っている人を探す日々が続く。
秋が終わって全ての葉が枯れる頃には、人口は50人を超えた。
収容した人間で更生が完了したと判断された者、新しくこの大陸に連れて来られて右往左往する者、元からこの大陸に居た者等、出処は様々。
反乱の1つも起きず、参入者とも次第に打ち解けていった。
冬を凌ぐのは意外と容易かった。
寒がりな者の下には赤魔法を使える人間が炎で温め、雪が降った日なんかは雪合戦で遊んだぐらいだった。
途中でこの日を待っていたと言わんばかりの雪投げ機を投入した技術班を引っ叩いた事が記憶に新しい。
そして寒気は過ぎ去り、種が息吹く春が真近に迫って来ていた。
「ん? カラウも少しデカくなったな」
「えー? そう?」
村の表通りで子供用の着物を着たカラウに遭遇した。
数ヶ月前に洞窟でカズラ達を見つけたあの頃より肉付きも良くなってるし、背丈も5cmは伸びている……気がする。
「1人か? カズラとかは今何してんの?」
「お父さんは副長さんの所にお話があるって言ってどっか行っちゃった」
「はーん。話ねぇ〜」
副長とはフォルシーナの事だが、何故村長の俺の所に来ないでフォルシーナの所に?
何か作ってもらうのかね?
「フリュウはどした?」
「お母さんはお仕事だよ」
「あー、機織りか」
技術班が作った魔法型力織機という機械のおかげで住民の衣服は着物が基本となっていた。
糸は定期的にフォルシーナか俺が商会本店に指示を出しに行く序でに取りに行っている。
フォルシーナが生み出した最新鋭の機械だし、多分、どこの国よりも上質な布を着ている。
この辺りは平和で危険意識も薄くなったのか化粧する人まで現れ(主にフォルシーナとか)、みんな身綺麗になったもんだ。
「で、カラウはどこ行くんだ?またタルナのとこに手伝いか?」
「え!? なんでわかるの!?」
「そりゃまぁ、何回も手伝ってるの見てるから?」
タルナは最近建てた総務部に住み込みでカズラや技術班と色んな案を立てているのだが、たまーに見に行くとカラウが書類整理などの手伝いをしている。
よくタルナの事をチラ見してることから察するに……。
まったく、あの猫目のどこが良いんだか。
「年の差とかあるだろうけど、頑張れよ?」
「な、なななんの事かな?」
「ハハッ、わかんねーならいいや。じゃあなー」
「さっさと行って! このバカ村長〜!」
「へいへーいっ」
ませたガキに見送られ、俺はたったか村を練り歩く。
時折出会う人に挨拶され、仕事サボるなと叱られ、畑まで連行されて魔法で作った鍬を持つ。
泥が付いてもいいように半裸になった男達に交わって俺も畑を耕した。
まだまだ肌寒い気候だが、時間が経てば次第に体も熱くなって汗を掻くほどだった。
夕陽が出るまで作業をし、終われば全員で海に向かう。
フォルシーナの計らいで各住宅に風呂が設置されているが、海に入るのが気持ち良いのだった。
日が暮れる頃には家に帰る。
当初から変わらぬ、キィとフォルシーナが住む家に。
ドアノッカーを3回叩いて、それから家に入る。
「うおー、帰ったぞ〜」
「む、ヤラランか。丁度夕飯の準備が終わった所だぞ」
家の中はランプが照らす淡い光とキィによる白魔法で明るく照らされていた。
フォルシーナの姿は無く、水色の着物の上からエプロンを着たキィが帰ってきた俺を出迎えた。
キィもフォルシーナの手によって髪を整えられ、骨張った体にも肉が付いて随分可愛らしくなった。
口調は相変わらずだが、目付きもやんわりとしてるし、基本的には家事と魔法の練習をさせてるだけだから家庭的になった。
村の中でも美女と噂されているが、本人はよくわかっていないそうな。
「すぐ食べるか? あ! 髪濡れてる! 海入って来たろ! タオルどこだっけな〜……」
「別に探さなくていいっての。お前も世話焼きだな……。他の家の家事とかも手伝いに行ってんだろ? 行かんでいいのに」
「だーって魔法の練習だの家事だのはもう飽きたんだよ。それに、みんな働いてんのに私は家事と魔法の練習してたら……なんか、悪いじゃんか」
「……そうだな」
キィには村での仕事を与えなかった。
それは自発的にみんなのためになりたいという善意を伸ばすためだったが、その成果が出ている模様。
俺は微笑みを返し、部屋の中へと進んだ。
「キィ、魔法の調子はどうなんだ?」
「あ? 相変わらずだよ。最近は伸び代が無くて困ってんだ」
「そうか。伸び代、ね……」
キィはこの世界では珍しく、4色の魔法が使えた。
それなのに弱かったというのはどういうことなのかとフォルシーナがメニューを組んで練習させていた。
善意が増えたからか、魔力量も増えてメニューをこなせるようになったのが冬のこと。
あとは我流でやってくださいとフォルシーナが投げやりに言ってたからか、魔法の実力は伸びないとか。
「……じゃあ、そろそろ頃合いかな?」
「……?  何がだ?」
「みんなで協力するようになって、もう俺やフォルシーナが中心である必要も無くなって来た。食料もある。ここは安全になった。だから――」
もうここは良いんだ。
ここじゃない何処かの諍いを収めに行こう。
「キィ、お前にも神楽器を渡す。俺と西大陸の中側に来てくれないか?」
魔法で作物を育て、服を織り、昔に使われていただろう水路の復旧なども行われた。
主に発達を促したのは技術班だったが、村人もみんなで作業をこなしてそれが身を成したからこそ成長したのだ。
食料の備蓄は、40人近くとなった村で冬を越すには十分過ぎる量となって、食うに困っている人を探す日々が続く。
秋が終わって全ての葉が枯れる頃には、人口は50人を超えた。
収容した人間で更生が完了したと判断された者、新しくこの大陸に連れて来られて右往左往する者、元からこの大陸に居た者等、出処は様々。
反乱の1つも起きず、参入者とも次第に打ち解けていった。
冬を凌ぐのは意外と容易かった。
寒がりな者の下には赤魔法を使える人間が炎で温め、雪が降った日なんかは雪合戦で遊んだぐらいだった。
途中でこの日を待っていたと言わんばかりの雪投げ機を投入した技術班を引っ叩いた事が記憶に新しい。
そして寒気は過ぎ去り、種が息吹く春が真近に迫って来ていた。
「ん? カラウも少しデカくなったな」
「えー? そう?」
村の表通りで子供用の着物を着たカラウに遭遇した。
数ヶ月前に洞窟でカズラ達を見つけたあの頃より肉付きも良くなってるし、背丈も5cmは伸びている……気がする。
「1人か? カズラとかは今何してんの?」
「お父さんは副長さんの所にお話があるって言ってどっか行っちゃった」
「はーん。話ねぇ〜」
副長とはフォルシーナの事だが、何故村長の俺の所に来ないでフォルシーナの所に?
何か作ってもらうのかね?
「フリュウはどした?」
「お母さんはお仕事だよ」
「あー、機織りか」
技術班が作った魔法型力織機という機械のおかげで住民の衣服は着物が基本となっていた。
糸は定期的にフォルシーナか俺が商会本店に指示を出しに行く序でに取りに行っている。
フォルシーナが生み出した最新鋭の機械だし、多分、どこの国よりも上質な布を着ている。
この辺りは平和で危険意識も薄くなったのか化粧する人まで現れ(主にフォルシーナとか)、みんな身綺麗になったもんだ。
「で、カラウはどこ行くんだ?またタルナのとこに手伝いか?」
「え!? なんでわかるの!?」
「そりゃまぁ、何回も手伝ってるの見てるから?」
タルナは最近建てた総務部に住み込みでカズラや技術班と色んな案を立てているのだが、たまーに見に行くとカラウが書類整理などの手伝いをしている。
よくタルナの事をチラ見してることから察するに……。
まったく、あの猫目のどこが良いんだか。
「年の差とかあるだろうけど、頑張れよ?」
「な、なななんの事かな?」
「ハハッ、わかんねーならいいや。じゃあなー」
「さっさと行って! このバカ村長〜!」
「へいへーいっ」
ませたガキに見送られ、俺はたったか村を練り歩く。
時折出会う人に挨拶され、仕事サボるなと叱られ、畑まで連行されて魔法で作った鍬を持つ。
泥が付いてもいいように半裸になった男達に交わって俺も畑を耕した。
まだまだ肌寒い気候だが、時間が経てば次第に体も熱くなって汗を掻くほどだった。
夕陽が出るまで作業をし、終われば全員で海に向かう。
フォルシーナの計らいで各住宅に風呂が設置されているが、海に入るのが気持ち良いのだった。
日が暮れる頃には家に帰る。
当初から変わらぬ、キィとフォルシーナが住む家に。
ドアノッカーを3回叩いて、それから家に入る。
「うおー、帰ったぞ〜」
「む、ヤラランか。丁度夕飯の準備が終わった所だぞ」
家の中はランプが照らす淡い光とキィによる白魔法で明るく照らされていた。
フォルシーナの姿は無く、水色の着物の上からエプロンを着たキィが帰ってきた俺を出迎えた。
キィもフォルシーナの手によって髪を整えられ、骨張った体にも肉が付いて随分可愛らしくなった。
口調は相変わらずだが、目付きもやんわりとしてるし、基本的には家事と魔法の練習をさせてるだけだから家庭的になった。
村の中でも美女と噂されているが、本人はよくわかっていないそうな。
「すぐ食べるか? あ! 髪濡れてる! 海入って来たろ! タオルどこだっけな〜……」
「別に探さなくていいっての。お前も世話焼きだな……。他の家の家事とかも手伝いに行ってんだろ? 行かんでいいのに」
「だーって魔法の練習だの家事だのはもう飽きたんだよ。それに、みんな働いてんのに私は家事と魔法の練習してたら……なんか、悪いじゃんか」
「……そうだな」
キィには村での仕事を与えなかった。
それは自発的にみんなのためになりたいという善意を伸ばすためだったが、その成果が出ている模様。
俺は微笑みを返し、部屋の中へと進んだ。
「キィ、魔法の調子はどうなんだ?」
「あ? 相変わらずだよ。最近は伸び代が無くて困ってんだ」
「そうか。伸び代、ね……」
キィはこの世界では珍しく、4色の魔法が使えた。
それなのに弱かったというのはどういうことなのかとフォルシーナがメニューを組んで練習させていた。
善意が増えたからか、魔力量も増えてメニューをこなせるようになったのが冬のこと。
あとは我流でやってくださいとフォルシーナが投げやりに言ってたからか、魔法の実力は伸びないとか。
「……じゃあ、そろそろ頃合いかな?」
「……?  何がだ?」
「みんなで協力するようになって、もう俺やフォルシーナが中心である必要も無くなって来た。食料もある。ここは安全になった。だから――」
もうここは良いんだ。
ここじゃない何処かの諍いを収めに行こう。
「キィ、お前にも神楽器を渡す。俺と西大陸の中側に来てくれないか?」
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