連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/17/:商売
「……何言ってんだ、おっさん?」
奴隷かと、さらりと訊かれたもので俺はそのまま質問の意味を問うた。
奴隷?
俺が?
「いや、自分で来たって言ってただろ? こんな所に来るって言ったらそりゃ奴隷狩りぐらいだ。ここの奴らは目付きも悪いし、骨張ってるし、殺しにかかって来るしで面倒だ。だが、売れる奴は売れる。俺にナイフ当てたそこの嬢ちゃんなんか、服装整えりゃ売れそうだがなぁ……」
「……コイツらは俺の仲間だ。奴隷なんかじゃねぇ」
「そうかい。勿体ねぇ。……っと、悪かったな、お前の仲間をバカにしたいってわけじゃねぇ」
「……そうか」
人間を売り物だ商売だ、聞くだけで腹立たしい。
だけど俺は商人だ、ここに奴隷狩りに来たと思われても何らおかしくはない。
奴隷狩りをそて向こうに行けば、連れてこられた奴はば平和を享受できる。
奴隷として行くなら命令を幾つも聞かなくてはならないが、そんなものは些細なことだ。
平和、それはそれは尊いもの。
窮境にいる誰もが欲しがるもの……。
「……なぁ、ドレトスのおっさん。ちょっとばかし時間いいか?」
「ん? もう日も暮れた。早く戻りてぇんだがな……」
「アンタにとっても悪い話にしない。頼む」
「……話ぐらいなら聞いてやる。手短にな」
「ありがたい。っつても、アンタに聞くのは1つだ。ここに来たのは奴隷狩りだな?」
「当たり前だろ?それ以外にこんなとこに来るかってんだ」
「そうかい……」
見たて通り、奴隷狩りに来てるそうな。
そこで俺は、索敵班が全員見える位置に立った。
「お前らの中で、奴隷になってでも東大陸に行きたい奴はいるか? っつてもあのおっさんに認められればだけどな」
『――!』
全員が驚嘆した。
これが彼らにとってチャンスなのか違うのかはわからないが、言う価値はある。
「村を作るったって、外部の奴に殺されない保証はどこにもない。だけど、東大陸に行ければ売れ残ったり、反抗したりしなきゃ殺されることはまずないだろう。多分、行けりゃ毎日飯が食えて仕事して、平和に暮らせる。悪い話じゃない筈だ」
「……良いのかよ、村長? 村人の数だって少ないのに、俺たちが……」
「いーんだよ。別に俺は、お前達を縛り付けたいわけじゃない。お前らがニコニコ笑って生きてれば、後のことはなんでもいい。遠慮は無用だ、行きたい奴はおっさんの所に志願してみろ。ただ1つ言っておくが、奴隷として生きるのも辛いことがある。その覚悟はしておけ」
『…………』
誰も動かず、考える素振りを見せるだけだった。
ただ、キィだけはボケーっと俺の事を見ていたのだが。
「……キィは行かねぇのか? 行きたいって言ってなかったっけ?」
「私にもイロイロと事情があるんだよ。平和は願ってもないが、どーしても行けないのさ」
「……はーん。ま、俺は助かるんだけどな」
村人が減るのはもちろん困る訳で、本当なら行って欲しくない。
でも、これが人の幸せに繋がると信じるなら仕方の無い事なのだ。
「……じゃあな。良い商売できたよ」
「……そりゃ良かったな」
おっさんとの話は終わった。
男女計1名ずつが奴隷としての道を選び、ドレトスの背後に立っている。
志願者は他に居なかった。
「……お前ら、元気にしろよ?」
「村長こそ、ちゃんと村作りなさいよね」
「頑張れよ、村長」
「おう、任せとけっ。出てったことを後悔するような、立派な場所を作ってやる」
胸を張って言葉を返す。
2人は苦笑して、別れも言わずに踵を返した。
「……村作るんだってな、ヤララン」
不意に、ドレトスに訊かれる。
「おう。村作ってからの国だ。そしたら大陸を統一する」
「悪人ばっかの大陸だろ? そんなことできるのか?」
「……それが、数日過ごしたけど、悪人なんて居ないと思うんだよな。殺し合いは起きるが、根っから悪い奴はそんなに居ないんだ」
これは大きな疑問だった。
村作りも皆は一応協力してくれてる。
無論、ナルスみたいにマシな生活できるならという、協力しようという気持ちがなくやってるのかもしれない。
それでも見かけ状は平和だ。
悪い奴が居るんなら、平和を崩そうとする筈なんだ――。
「俺にはまだ、わからないことが多過ぎる。だから、村作りをきっちりやりながら、真実に近付いて行くさ。そして最終的にはこの場所を統一する。夢みたいな話だが、現実にしてみせるさ」
「……そうかい。まぁ、精々頑張れよ」
「あぁ。じゃあな、ドレトス」
「おう。あばよ、クソガキ」
「……まったく、素直じゃねぇなぁ……」
ドレトスも北に向かって歩み始める。
砂の上を3人が進んで行き、俺たちはその様子をそっと眺めていた。
奴隷かと、さらりと訊かれたもので俺はそのまま質問の意味を問うた。
奴隷?
俺が?
「いや、自分で来たって言ってただろ? こんな所に来るって言ったらそりゃ奴隷狩りぐらいだ。ここの奴らは目付きも悪いし、骨張ってるし、殺しにかかって来るしで面倒だ。だが、売れる奴は売れる。俺にナイフ当てたそこの嬢ちゃんなんか、服装整えりゃ売れそうだがなぁ……」
「……コイツらは俺の仲間だ。奴隷なんかじゃねぇ」
「そうかい。勿体ねぇ。……っと、悪かったな、お前の仲間をバカにしたいってわけじゃねぇ」
「……そうか」
人間を売り物だ商売だ、聞くだけで腹立たしい。
だけど俺は商人だ、ここに奴隷狩りに来たと思われても何らおかしくはない。
奴隷狩りをそて向こうに行けば、連れてこられた奴はば平和を享受できる。
奴隷として行くなら命令を幾つも聞かなくてはならないが、そんなものは些細なことだ。
平和、それはそれは尊いもの。
窮境にいる誰もが欲しがるもの……。
「……なぁ、ドレトスのおっさん。ちょっとばかし時間いいか?」
「ん? もう日も暮れた。早く戻りてぇんだがな……」
「アンタにとっても悪い話にしない。頼む」
「……話ぐらいなら聞いてやる。手短にな」
「ありがたい。っつても、アンタに聞くのは1つだ。ここに来たのは奴隷狩りだな?」
「当たり前だろ?それ以外にこんなとこに来るかってんだ」
「そうかい……」
見たて通り、奴隷狩りに来てるそうな。
そこで俺は、索敵班が全員見える位置に立った。
「お前らの中で、奴隷になってでも東大陸に行きたい奴はいるか? っつてもあのおっさんに認められればだけどな」
『――!』
全員が驚嘆した。
これが彼らにとってチャンスなのか違うのかはわからないが、言う価値はある。
「村を作るったって、外部の奴に殺されない保証はどこにもない。だけど、東大陸に行ければ売れ残ったり、反抗したりしなきゃ殺されることはまずないだろう。多分、行けりゃ毎日飯が食えて仕事して、平和に暮らせる。悪い話じゃない筈だ」
「……良いのかよ、村長? 村人の数だって少ないのに、俺たちが……」
「いーんだよ。別に俺は、お前達を縛り付けたいわけじゃない。お前らがニコニコ笑って生きてれば、後のことはなんでもいい。遠慮は無用だ、行きたい奴はおっさんの所に志願してみろ。ただ1つ言っておくが、奴隷として生きるのも辛いことがある。その覚悟はしておけ」
『…………』
誰も動かず、考える素振りを見せるだけだった。
ただ、キィだけはボケーっと俺の事を見ていたのだが。
「……キィは行かねぇのか? 行きたいって言ってなかったっけ?」
「私にもイロイロと事情があるんだよ。平和は願ってもないが、どーしても行けないのさ」
「……はーん。ま、俺は助かるんだけどな」
村人が減るのはもちろん困る訳で、本当なら行って欲しくない。
でも、これが人の幸せに繋がると信じるなら仕方の無い事なのだ。
「……じゃあな。良い商売できたよ」
「……そりゃ良かったな」
おっさんとの話は終わった。
男女計1名ずつが奴隷としての道を選び、ドレトスの背後に立っている。
志願者は他に居なかった。
「……お前ら、元気にしろよ?」
「村長こそ、ちゃんと村作りなさいよね」
「頑張れよ、村長」
「おう、任せとけっ。出てったことを後悔するような、立派な場所を作ってやる」
胸を張って言葉を返す。
2人は苦笑して、別れも言わずに踵を返した。
「……村作るんだってな、ヤララン」
不意に、ドレトスに訊かれる。
「おう。村作ってからの国だ。そしたら大陸を統一する」
「悪人ばっかの大陸だろ? そんなことできるのか?」
「……それが、数日過ごしたけど、悪人なんて居ないと思うんだよな。殺し合いは起きるが、根っから悪い奴はそんなに居ないんだ」
これは大きな疑問だった。
村作りも皆は一応協力してくれてる。
無論、ナルスみたいにマシな生活できるならという、協力しようという気持ちがなくやってるのかもしれない。
それでも見かけ状は平和だ。
悪い奴が居るんなら、平和を崩そうとする筈なんだ――。
「俺にはまだ、わからないことが多過ぎる。だから、村作りをきっちりやりながら、真実に近付いて行くさ。そして最終的にはこの場所を統一する。夢みたいな話だが、現実にしてみせるさ」
「……そうかい。まぁ、精々頑張れよ」
「あぁ。じゃあな、ドレトス」
「おう。あばよ、クソガキ」
「……まったく、素直じゃねぇなぁ……」
ドレトスも北に向かって歩み始める。
砂の上を3人が進んで行き、俺たちはその様子をそっと眺めていた。
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