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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/15/:愚行

「商人の息子だ、コイツは金になるぜ」
「ふへへへ、簡単なもんだなぁ」

 とある薄暗い一室で、男が2人が話をしている。
 その中に、ヤラランこと俺は居た。
 魔力を封じる特性の錠で両手を後ろ手に縛られ、何故か俺はここにいる。
 どうしてこんなことになったのか、話は今から数時間前に遡る。

 フォルシーナが商談をしている間、俺はそこの商人さんの息子であるレーノスくんと魔法で遊んでいた。
 歳が近いということもあり、男同士だし、それなりに冒険の話もしてやっていた、と。

 その時、突然変な匂いがした。
 なんだろうと思って嗅いだら意識が急変し、気付けばこの有り様。
 そしてこの2人組、バカなことに俺とレーノスくんを間違えてやがるのだ。
 大方この後どっかの商会に俺を人質に取って身代金を要求するんだろうが……レーノスくんは家にいるだろう。
 意味のわからん架空請求に誰が付き合うだろうか。
 まぁ、そのうちフォルシーナが助けに来るだろう。
 アイツも俺と同じで、全色の魔法・・・・・が使えるのだから、こんな奴ら一掃できる。

「さぁて、通達の入った手紙を届けに行くかっ。ついでに奴らの慌てる顔も見ようぜ!」
「ヒヒッ、そうだな! さ、金だ金〜!」
「ガハハハハッ!」
「…………」

 笑い合うバカ2人に、俺は頭が痛くなる。
 ああ、早くフォルシーナこねぇかな……。






 所変わって、ドレトス商会付近。
 商談は上手くいかず、このままでは仕入れが難しい局面であると判断した私ことフォルシーナはトボトボと街中を歩いていた。

(難しいですねぇ……)

 口の回るベテラン達を相手にまだまだ若い私が相手をするなどキツいと力不足を実感する。
 取り敢えず街を見て回って甘いものでも――。

「――あれっ!?」

 なんか子供が倒れているのが見えた気がした。
 気のせいだったらいいな――あ、気のせいじゃないですねコレ。
 木を背にして倒れている。
 ただ昼寝しているようにも見えなくはない。
 しかし、残念ながらもう夜になる。
 こんな時間に歩いている人も少なく、誰も少年に気付かなかったのだろう。
 しくは面倒が嫌で触れなかったのか、それは定かではない。
 しかし、倒れている少年は商談相手の息子だった。
 私は慌てて駆け寄り、彼を揺り起こす。

「……ん、んんっ?」
「起きてください。私のこと、憶えてますか?」
「あぁ、フォルシーナさん」

 パチリと少年の瞳が開く。
 どうやら無事なようだ。
 でも――。

(――おかしい)

 確かヤラランはこの子と一緒だったはず。
 彼も子供だが、同じ様な子を夜に、しかも木に寝かせて放置するような人だろうか?
 そんなはずはない、絶対に。
 何か理由があるはず。

「――レーノスくん。ここで何をしていたんですか?」
「……あれ? なんだっけ……。変な匂いがして……そしたら眠くなって……」
「……。なるほど、眠らされたってことは……」
「……さらわれた!?」
「その可能性が高いでしょう……」

 攫われたとしたら、それはレーノスくんと間違えられたんでしょう。
 ヤラランを攫う理由がないですからね。
 いやはや、なんというか……。

「取り敢えず、助けに行きましょうか」
「……居場所に心当たりがあるの?」
「街に入る前にある程度調べておいたんです。この街の空き家は全て把握してますよ」
「マジで!? フォルシーナさんすげぇー!」
「ふふんっ」

 誇らしげに笑う。
 というのも、野宿したくないし宿はお金掛かるから空き家探してただけなんですが。
 しかし、場所は大体割れてる。

「私は魔力少ないんですけど、サクサクっと解決させてきます。1人で家に帰すのも危ないですし、私に付いて来てください」
「はい!」

 そして私は空き家を探しまくり、犯人の2人を捕らえてヤラランを確保。
 魔力が無いからと言って2人捕らえるぐらいは楽勝でした。
 自警団の人達を男の身柄を引き渡し、3人でドレトス商会に帰還しました。

「レーノス!! こんな時間までどこに!!」
「父さん、ごめん……。実は……」

 レーノスくんがリオ会長に事情を説明する。
 会長は話を聞くたび、段々顔色が悪くなった。

「……今の話は本当なのかね ?君たちが4人組で自作自演したのでは?」
「な!? そんなわけないじゃないですか!! 犯行が行われた手紙が証拠としてあるでしょう!?」
「だから4人でグルだったのではないかね?」
「父さん! この人達は僕の恩人なんだ! そんなこと言わないでよ!」
「レ、レーノス……」
「……ハァ」

 自作自演だのなんだのと疑われ、コイツの心の狭さについため息が出てしまう。
 私を見てヤラランが吹き出し、レーノスくんが愕然としていた。

「父さん……絶対にこの人達に有利な条件で商売してよ! じゃないと出て行くから!」
「レ、レーノス!? 何を言うんだ!」
「ふんっ!!」

 レーノスくんはそのまま店の中に行ってしまう。
 そしてリオ会長も忌々しげに私達を睨み、この場を後にした。

 しかし、次の日の商談では仕入れの額を半分以下で提供してもらい、なんとか無事に商談を終えたのでした。










「なんかそんな事もあったなぁ」

 話を聞いて納得する。
 そうか、あの時の人相悪いおっさんがこんな所に来てたのか。
 しかもキッチリ俺の名前まで憶えていやがって。

「あの時感じた私の屈辱は感無量だった。貴様の自作自演のせいでうちの家計が火の車になったというのに……!」
「いや、フォルシーナはそんなにブン取らなかったんじゃねーの?」
「あの女はそうだ、一歩手前で引いた……。だが、次の商談も、私にはあったのだっ!」
「そんなお前の都合なんざ知らねぇよ……」

 言いがかりもはなはだしいし、そんな理由でよくもまぁ人を殺そうと思えるなと感心する。
 というか、良く考えれば気付くのだが――

「もし俺たちの自作自演だったとしたらさぁ、普通に考えて、レーノスくんを連れ去って身代金要求した方が稼げるだろ? 態々わざわざ返すなんておかしいだろうが」
「ふん! 貴様の言い訳なんぞ聞き飽きた!」
「そんなに言い訳言ってないけどな」
「どっちでもいい! とにかく貴様を殺してやる! 傭兵さん、奴を殺せぇええ!!」
「うわー、コイツ適当だよ……」

 手を休めていた傭兵達が一斉に魔法を木の根元に放つ。
 下方での爆発による衝撃によりぐらつくが、落ちずに体勢を保った。
 さて、もうこれは四の五の言ってる場合じゃあない。
 1人ぐらい、殺しに掛かるとしよう。

「さて、死んでも文句は言うなよ……ん?」

 魔法を発動する直前、視界の端に動くものがあった。
 辺りを見渡してみると海岸の岩陰に誰かいる。
 目を凝らしてよく見てみると――あれは索敵に向かわせた班の人間。

「森を見てこいって言ったんだが……この木を見てこっちに来たのか?……おおっと……」

 ドォン!という音と同時に木が揺らぐ。
 このままだとこの巨木ももたないだろう。
 アイツらが俺に協力してくれるなら、なんとかなるかもしれないが――。

 その時だった。
 岩陰から1つの影が飛び出す。
 音もなく静かに岩を飛び越え、商人に向かって行くのはキィだった。

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