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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/11/:家族

 呆然としていた俺はすぐに気を持ち直してネルヴィスの死体がある場所まで案内してもらった。
 ガキを抱えながら森の中へと入っていく。

「ほら、死んでるぞ」
「……っ。そうだな」

 草の茂みの放り出された遺体は俺の知るネルヴィスのものと一致した。
 半裸の男が這いつくばった様に倒れ、背中が真っ赤になっている。
 当然赤く染めているのは血に他ならない。
 手遅れなのは彼が動かないことからすぐにわかった。

「仲間が死んだのか!? ざまぁ見ろ!」
「お前は少し黙ってろ」
「ガッ!?」

 脇に抱えた少年を落とし、ネルヴィスの手を握る。
 ――まだ体温がある。
 死後20分も経っていないだろう。

「……ナルス、死体とそこのガキを持って村に戻ってくれ。昼飯は悪いけど後だ」
「それは良いが、お前はどうするんだ?」
「俺は犯人を探す。ネルヴィスを殺す目的があるとするなら魚を奪うこと。生で食うバカじゃなきゃ火を付ける筈。上から煙を見つけて殺した奴を捕らえる」
「そんな必要あるのか?」
「……は?」

 思わず抜剣しそうになった。
 ナルスの顔を見やると、相変わらず平然としている。
 何故だ、何故仲間が殺されたのにそんなに冷静でいられる?

「だってほら、人が死んだってそんなの当たり前だろ? 奪う為になら誰でも殺すさ」
「此処じゃそうかもしれない。けどな、ネルビィスは仲間だ。仲間を殺されといて放っておけるかよ」
「放っておかないと村長も死ぬかもよ。そしたら大変だけど、まぁいつもの生活するだけだから良いか」
「…………」

 なんとなくわかってきた。
 こいつは全く協力的なんかじゃない。
 単に村作りが安全かもしれないから、自分が生きて行けるかもしれないからという、自分だけを考えて行動している。
 きっとこいつは、他の奴が役割を果たせず役に立たなければ殺すかもしれない。
 自分の仕事分の利益が保証されないのだから。

「……兎に角、俺は犯人を探す。ネルヴィスの事はフォルシーナに言っておいてくれ」
「わかった。言われたことはやるよ」
「……あぁ、頼んだ。【無色魔法カラークリア】」

 重力を軽くし、斥力で木の葉を押し流しながら空に飛び出す。
 煙幕などは特に上がっている様子はない。
 遠くまで逃げてから食うのか、それとも建物か洞窟を寝ぐらにしてるのか。
 考えてたって仕方がない。

「……まだ近くにいる筈だ。村に向かわないなら北側か、南側か……」

 村に向かったなら十中八九捕らえられるだろう。
 10人は残っている筈だし、フォルシーナも居る。
 無論、それは真っ当に戦ったなら、である。
 暗殺が行われるなら死傷者が出てもおかしくはない。
 けれど、ネルヴィスを殺したのを村人じゃないと仮定するならば、後で犯人の特定はできる。
 殺したのが魔法による物なら魔力痕が残り、フォルシーナならそれを判別できるのだ。
 その事を犯人が知らなければ村人が殺してたっておかしくないが、そうでないことを信じたい。

「……さて、どっちに行くか……」

 北側には1kmもない所に崖があり、下方に洞窟があるかもしれない。
 南は森続きで20分走った所で抜けられるとは思えない。

「……崖だな」

 もし犯人がこの辺りの地形を知ってるなら崖に行くだろう。
 無論、地形だけで判断はできないが、一先ず見て回るべきであろう。
 そう判断を下し、北に向かって俺は飛んだ。
 ゴウッという風を切り分ける音を鳴らして即座に崖まで到達する。
 壁際まで来ると崖の下が目に映る様な低空で飛び回り穴場を探した。

(――あった!)

 数分足らずで穴倉を見つけた。
 大の大人を5人並べても通れる様な、壁にポッカリと空いた穴は先の見えないほど暗く、道の長さを表していた。

「【白魔法カラーホワイト】、【ライト】」

 空に向けた手のひらから光球が出現する。
 白の光は道を照らし、ふわふわと浮いて頭上から光を降り注いだ。
 黄土色の岩に囲まれた洞窟を慎重に歩いていく。
 1本道で、光が照らしても奥はまだまだ深かった。
 その時、かすかにボウッと音がした。
 直後に火球が正面から飛来する――!

「――ッ!」

 光で見える範囲だったからステップを踏んで避ける事に成功する。
 しかし、直後には火球の連弾が襲ってくる。

「【無色魔法カラークリア】、【無色防衛カラーレス・プロテクト】」

 炎を防ぐために薄水色の結界で身を囲う。
 着弾した炎はその威力を結界に叩きつけるも、黒煙を上げて消えていく。
 次々と生まれる黒煙に、俺は一度光球を消した。
 この煙なら俺がやられたか判断がつかないはず。
 そして光が消えたなら死んだと見てくるだろう――。

 ――ザッザッ。

 前方より雑然とした足音がある。
 煙はまだ晴れず、生死の確認は取れていないであろうからこそ近づいて来る。
 俺はただ息を潜め、ゆっくりと片膝を着いた。
 問題なのは俺が生きているかだ。
 生きていて、かつ交戦できるなら立っていると見る筈。
 立っている影が見えればまた火球がたんで来ることだろう。
 しかししゃがんでいればそんなこともない。

 ――ザッザッ。

 足音は徐々に近づいて来る。
 距離がもう3mもないだろうという頃、俺はその場で突進した。

「――フッ!」

 地を蹴り、身を縮こませて闇雲に黒煙の中に突っ込む。
 刹那迎えた衝撃は軽いものであったが、何かを倒すことに成功した。

「ウッ!」

 倒れた何かが放った呻き声。
 だがそんなものに構うことなく、視界を得るために魔法を発動する。

「【緑魔法カラーグリーン】、【強風ウインド】!」

 突如現れた旋風により、黒煙が晴れて行く。
 倒れていた何か――男は風除けのために両腕で顔を覆っている。
 その隙を突いて即座に大剣を抜き、男の頭上に待機させる。
 風が止み、男が腕をどけると同時に刃を首元に添えた。

「――!」
「よう。ちょいと話がある。奥で話をしようじょねぇの」

 頭頂部に髪を括った長髪の男は拒否権が無いことをすぐさま察したのか、頭を縦にブンブンと振る。
 と、俺は大剣を背に戻し、代わりに男の両腕を束縛リストレイントでグルグルに縛り、黒魔法で作った短剣で後ろから脅して男を歩かせながら進む。
 もちろん、視界が悪いから光球も再び顕現させている。

(……にしても)

 男の動きを観察しながら思う。
 こいつは俺と同じで小柄だが、中々に筋肉質だ。
 食うに困ってる人が多かったが、こういう奴もいるもんだなと、これは新たな発見だった。

「……着いたぞ」

 ボソリと男が呟いた。
 確かに道は全てこの先は壁に阻まれている。

「……あなた」
「お兄さん、誰!?」

 そして中には2人の人がいた。
 身綺麗な金髪の女性と、その子供らしき少女だった。
 その足元には、いくつもの魚が転がっている――。

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