連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/10/:幸先
「じゃあ【青魔法】使えるネルヴィスとナルスは海で魚を捕まえてきてくれ。回収は後で行く。カテヤとヤルを筆頭に、魔法で動物捕まえられる奴は捕まえてきてくれ。良いか?」
朝から広場で集会を開き、村人に指示を与えて行く。
32人は全員揃っており、それぞれに特徴の合った仕事を与えてるからか、否と言う者は居なかった。
「じゃあ各自作業に入ってくれ。俺は魔法で畑を作ってるから何かあったら声を掛けるように。若しくは最奥の建物にフォルシーナがいるから、そいつの所に行ってくれ。以上だ。今日から頑張っていくぞ!」
「うむ!」
「任せな!」
良い返事を返して皆が霧散して行く。
残ったのは俺と他の緑魔法が使えるという4人のメンバー。
緑魔法で土を肥やし、畑を作る。
畑は大事だ、冬を越すためには食料がとにかく必要なのだから。
今はもう秋に差し掛かっている。
魔法で作物を早く育てることができるが、種を1度東大陸に取りに行かなくてはならない。
それに、服を織る為の生糸なんかも欲しい。
機織り機はフォルシーナがそのうち作るだろう。
だが、結束の薄いうちに纏めている俺が居なくなる訳にはいかない。
もう少し機会を待たないと――。
「――よし、じゃあ畑を作る。地形的には大陸中程の空いてるとこを耕してくことになる。頑張るぞ!」
『おう!』
元気な返事だった。
これが共存だという生き生きとした――。
土を耕す作業は昼間に終わった。
魔法を使って、後は手作業。
自画自賛するつもりはないが、俺いう若くて魔力の多い主戦力がいたせいもあるだろう。
作業の終わりが予定よりもずっと早く終わり、だが昼時にはちょうど良い時間となっていた。
「俺は魚取りに行った奴らを呼んでくる。昼飯にしよう。お前らも手を洗いたかったら海来いよ」
「あっちに川があるんだ。そっちで洗ってくるさ」
「……了解っ。じゃ、後でまた集合だ」
服も汚れ、土の付いた髪を振りながら1人海を目指すして歩く。
その間、行き交う人たちと挨拶を交わし合う。
ささやかながらに信頼を築きながら、森を超えて海に出た。
海岸には魚が何匹も上がっており、魚取りの班がうまくやっている様子が伺えた。
ざっと見た所30匹近くはいる。
腹を満たすには足りないが、取り敢えず飯は食える。
「【無色魔法】、【音響】」
昨日も使った音を響かせる魔法を口に使う。
『魚取りの奴らぁあ!一旦休憩だぁあ!戻るぞぉお!!』
海に向かって1人叫ぶ。
しかし、海の中にいるからなのか返事もなく波の音しか聞こえない。
俺はため息を吐いて音響を解除し、海に潜る為にまず振袖を外そうとして――
「……ん?」
空気の淀みを感じた。
悪寒――とも言える。
兎に角気配が妙で、メイルから抜剣した。
「……誰かいるな」
それはただの勘でしかない。
しかし、善魔力と悪魔力というのは感じ合うものらしく、こういう勘は大抵当たる。
考えてみればこれだけの食料あって、奪いに来ない筈がないのだ。
「……【赤魔法】」
静かに【赤魔法】を発動する。
【赤魔法】は筋力増強と炎を操る魔法。
大剣を持ってようがいつでも俊敏に動けるよう発動した。
神経を研ぎ澄まし、いつどこから姿を現しても良いように臨戦態勢を取る。
背後は森、正面は海、はたまた足元の岩陰からも姿を現すかもしれない。
「……おーい村長! そこでなにしてるんだー!?」
「……お」
しかし、ナニカが現れるよりも先に海から村人の姿が見えた。
朝に海に向かわせたナルスという青年が体長1mはある魚を両手に抱えて褌をそよがせて歩み寄ってくる。
「誰かの視線を感じる! 警戒しろ!」
「ん?村人じゃないの?」
「村人なら普通に正体を現す! 気を付けろよ!」
「りょーかいっ!」
ブオンと音を立て、魚をこちらに投げてくる。
魚は長い対空時間を終えて、ドシンと砂浜に落ちた。
刹那――上空から人影が姿を現す。
その身の落下ではあり得ない速さで砂浜に降り立ち、投げられた魚を拾い上げて走り去って行く。
「逃がすかよ!」
そこで俺も動いた。
限界まで引き上げられた筋肉量によって風をも切って駆ける。
相手も速い。
しかし、それでも俺は追い付いてそいつのケツを蹴り上げた。
「――ラァッ!」
「ッ!!?」
人と魚が宙を舞う。
4mは飛んだ事だろう、落ちれば危険だ。
魚は放っておき、人の落下予測地点に1歩で移動する。
「よっ、と……」
「わっ!」
上手く両手でキャッチする。
それはまるで姫様を抱える様な形で受け止めたのだが、まぁ良いだろう。
「ガキンチョ、盗みは良くねぇよ」
「は、離せ〜っ!!」
俺が捕まえたのは、8歳程度の少年であったのだ。
ボサボサの髪に所々破れた衣服はまぁ大体他の住民と同じ特徴だが、少しぷっくり肉のある体はここらでは初めて見た。
「手は離してやるよ。【束縛】」
「おぶっ!」
黒魔法で作られた錠で少年の手足の自由を奪い、砂浜に落とす。
少し痛いか?
まぁ盗みしようとした罰だ。
「何すんだこのクソ野郎!」
「口悪いなお前。お母さんが泣いてるぞ。こんな子に育てた覚えはありません!ってな」
体をくねらせて横向けになり、俺を睨んでくる少年。
なんだかねぇ……。
「お前は絶対殺してやる! 殺して肉を焼いて食ってやる!」
「ガキがそんなこと言うんじゃねぇよ。もっと子供っぽいこと言えないのか?」
「うっせーバーカ!」
「あーそんな感じそんな感じ」
「捕まえたのか、村長」
再び名前を呼ばれて振り返ると、ナルスが此処まで来ていた。
褌姿なのは変わらないのだが。
「なんだお前! 殆ど裸で恥ずかしい奴!キモッ!」
「んだとクソガキー!!」
「……ナルス、取り敢えずお前は服着て来い。あとネルヴィスも呼んでこい」
これ以上面倒なことにならないうちに村に引き上げる為、各々準備に取り掛かった。
俺は魚の回収とガキンチョの見張り。
ナルスはネルヴィスの捜索と服を着てくることを。
魚の回収はさっさと終え、手や顔を潮水で洗い流してから俺はガキンチョの隣に砂の上を座っていた。
そこにナルスも戻ってくる。
連れて来いと言ったネルヴィスの姿はなかった。
「おい、ネルヴィスは?」
「あぁ、死んでたぞ」
「……は?」
あまりにも平然にナルスが訃報を告げ、俺はすぐさま対応できなかった。
朝から広場で集会を開き、村人に指示を与えて行く。
32人は全員揃っており、それぞれに特徴の合った仕事を与えてるからか、否と言う者は居なかった。
「じゃあ各自作業に入ってくれ。俺は魔法で畑を作ってるから何かあったら声を掛けるように。若しくは最奥の建物にフォルシーナがいるから、そいつの所に行ってくれ。以上だ。今日から頑張っていくぞ!」
「うむ!」
「任せな!」
良い返事を返して皆が霧散して行く。
残ったのは俺と他の緑魔法が使えるという4人のメンバー。
緑魔法で土を肥やし、畑を作る。
畑は大事だ、冬を越すためには食料がとにかく必要なのだから。
今はもう秋に差し掛かっている。
魔法で作物を早く育てることができるが、種を1度東大陸に取りに行かなくてはならない。
それに、服を織る為の生糸なんかも欲しい。
機織り機はフォルシーナがそのうち作るだろう。
だが、結束の薄いうちに纏めている俺が居なくなる訳にはいかない。
もう少し機会を待たないと――。
「――よし、じゃあ畑を作る。地形的には大陸中程の空いてるとこを耕してくことになる。頑張るぞ!」
『おう!』
元気な返事だった。
これが共存だという生き生きとした――。
土を耕す作業は昼間に終わった。
魔法を使って、後は手作業。
自画自賛するつもりはないが、俺いう若くて魔力の多い主戦力がいたせいもあるだろう。
作業の終わりが予定よりもずっと早く終わり、だが昼時にはちょうど良い時間となっていた。
「俺は魚取りに行った奴らを呼んでくる。昼飯にしよう。お前らも手を洗いたかったら海来いよ」
「あっちに川があるんだ。そっちで洗ってくるさ」
「……了解っ。じゃ、後でまた集合だ」
服も汚れ、土の付いた髪を振りながら1人海を目指すして歩く。
その間、行き交う人たちと挨拶を交わし合う。
ささやかながらに信頼を築きながら、森を超えて海に出た。
海岸には魚が何匹も上がっており、魚取りの班がうまくやっている様子が伺えた。
ざっと見た所30匹近くはいる。
腹を満たすには足りないが、取り敢えず飯は食える。
「【無色魔法】、【音響】」
昨日も使った音を響かせる魔法を口に使う。
『魚取りの奴らぁあ!一旦休憩だぁあ!戻るぞぉお!!』
海に向かって1人叫ぶ。
しかし、海の中にいるからなのか返事もなく波の音しか聞こえない。
俺はため息を吐いて音響を解除し、海に潜る為にまず振袖を外そうとして――
「……ん?」
空気の淀みを感じた。
悪寒――とも言える。
兎に角気配が妙で、メイルから抜剣した。
「……誰かいるな」
それはただの勘でしかない。
しかし、善魔力と悪魔力というのは感じ合うものらしく、こういう勘は大抵当たる。
考えてみればこれだけの食料あって、奪いに来ない筈がないのだ。
「……【赤魔法】」
静かに【赤魔法】を発動する。
【赤魔法】は筋力増強と炎を操る魔法。
大剣を持ってようがいつでも俊敏に動けるよう発動した。
神経を研ぎ澄まし、いつどこから姿を現しても良いように臨戦態勢を取る。
背後は森、正面は海、はたまた足元の岩陰からも姿を現すかもしれない。
「……おーい村長! そこでなにしてるんだー!?」
「……お」
しかし、ナニカが現れるよりも先に海から村人の姿が見えた。
朝に海に向かわせたナルスという青年が体長1mはある魚を両手に抱えて褌をそよがせて歩み寄ってくる。
「誰かの視線を感じる! 警戒しろ!」
「ん?村人じゃないの?」
「村人なら普通に正体を現す! 気を付けろよ!」
「りょーかいっ!」
ブオンと音を立て、魚をこちらに投げてくる。
魚は長い対空時間を終えて、ドシンと砂浜に落ちた。
刹那――上空から人影が姿を現す。
その身の落下ではあり得ない速さで砂浜に降り立ち、投げられた魚を拾い上げて走り去って行く。
「逃がすかよ!」
そこで俺も動いた。
限界まで引き上げられた筋肉量によって風をも切って駆ける。
相手も速い。
しかし、それでも俺は追い付いてそいつのケツを蹴り上げた。
「――ラァッ!」
「ッ!!?」
人と魚が宙を舞う。
4mは飛んだ事だろう、落ちれば危険だ。
魚は放っておき、人の落下予測地点に1歩で移動する。
「よっ、と……」
「わっ!」
上手く両手でキャッチする。
それはまるで姫様を抱える様な形で受け止めたのだが、まぁ良いだろう。
「ガキンチョ、盗みは良くねぇよ」
「は、離せ〜っ!!」
俺が捕まえたのは、8歳程度の少年であったのだ。
ボサボサの髪に所々破れた衣服はまぁ大体他の住民と同じ特徴だが、少しぷっくり肉のある体はここらでは初めて見た。
「手は離してやるよ。【束縛】」
「おぶっ!」
黒魔法で作られた錠で少年の手足の自由を奪い、砂浜に落とす。
少し痛いか?
まぁ盗みしようとした罰だ。
「何すんだこのクソ野郎!」
「口悪いなお前。お母さんが泣いてるぞ。こんな子に育てた覚えはありません!ってな」
体をくねらせて横向けになり、俺を睨んでくる少年。
なんだかねぇ……。
「お前は絶対殺してやる! 殺して肉を焼いて食ってやる!」
「ガキがそんなこと言うんじゃねぇよ。もっと子供っぽいこと言えないのか?」
「うっせーバーカ!」
「あーそんな感じそんな感じ」
「捕まえたのか、村長」
再び名前を呼ばれて振り返ると、ナルスが此処まで来ていた。
褌姿なのは変わらないのだが。
「なんだお前! 殆ど裸で恥ずかしい奴!キモッ!」
「んだとクソガキー!!」
「……ナルス、取り敢えずお前は服着て来い。あとネルヴィスも呼んでこい」
これ以上面倒なことにならないうちに村に引き上げる為、各々準備に取り掛かった。
俺は魚の回収とガキンチョの見張り。
ナルスはネルヴィスの捜索と服を着てくることを。
魚の回収はさっさと終え、手や顔を潮水で洗い流してから俺はガキンチョの隣に砂の上を座っていた。
そこにナルスも戻ってくる。
連れて来いと言ったネルヴィスの姿はなかった。
「おい、ネルヴィスは?」
「あぁ、死んでたぞ」
「……は?」
あまりにも平然にナルスが訃報を告げ、俺はすぐさま対応できなかった。
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