連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜
/4/:平和
「なんでこんなに肉持って来たんだよ」
「美味しいからですよ〜。うーん、美味しい」
「……あっそ」
光球を消し、枝木を集めて赤魔法で火をつけて3人で囲っていた。
フォルシーナが持ってきた東大陸ではバカ高い牛肉を細かくして串に刺し、焼いて食べている。
「お前なんて歩けなくなるぐらい太って一生魔法道具でも作ってろ」
「酷い! これでも私、体型気にしてるんですよ!」
「あーそうかい。1ヶ月後には横周りの方が身長より高いなこりゃ」
「む、むむむむぅ〜!! ……でも美味しいものは美味しい……ふぅ……」
「…………」
串肉をもっちゃもっちゃと食うフォルシーナ。
これは本当に1ヶ月後が不安だ。
「なんか、この子見てると食欲失せるわね。折角こんな美味しい物が食べれるのに……」
「お前はむしろ食えよ」
「勿論、頂いてるわよ。はむっ」
キィも串刺しの肉を小さな口で咀嚼する。
硬いのだろうか、中々串から口が離れない。
「むぐっ、ぬぅう……」
「何してんだお前は」
「ぐぅ、硬い……」
「私が食べましょうか?」
「いや、やめて、食欲なくなるから」
「キィちゃんまで私の扱いが酷い!」
串を片手においおい泣き真似をし始める。
食べ物を手放さないあたりからお前の扱いは決まってるぞ、うん。
「……ふぅ、なんとか食べれた」
「はい、水な」
「ん、どーもっ」
水の入った皮袋をキィに渡し、遠慮も無くキィは飲む。
中々な飲みっぷりで、ひとしきり飲んでふぅと息を吐いた。
「……ところで、知ってるか?」
俺たち2人に、キィが言う。
知ってる、と言われても、俺たち2人は今日来たばかりで知らない事だろう。
「なにがだ?」
「火のあるところには人がいる。あわよくば食べ物があるかもしれない。もう言いたいことは、わかるね?」
「……! ヤララン!」
空気が静まり返る。
フォルシーナが即座に立ち上がり、辺りに視線をやり出した。
「……慌てんなよ。そんなことなら、俺でもわかってるから」
宥めるように優しく言う。
光球を出す以上、人目に付くことはわかっていた。
今では煙まで上がっているが、出て来た人間はキィのみ、他は様子を伺って居るのだろう。
しかし、俺たちの会話を聞いて“こいつらチョロいな”と思われ、いきなり出て来て不意打ちで殺されたりするかもしれない。
「こっそり結界張ってある。フォルシーナと2人なら張らんでも良いんだが、キィの命も守るからな。神楽器を持ってる俺の結界を割れる奴は居ないだろ」
「……なら良いんですが」
「なんだい、神楽器っていうのは?」
神楽器という名に、キィが食いついた。
そして創作者様がズイと体を寄せ、答える。
「神楽器というのはですね、魔力量増幅を図った世界初の魔法道具です! 魔力が少なくてやだなぁという魔法使いの皆様の夢と希望を叶える素晴らしい魔法道具ですよ! 制作には当然お金が掛かりましたが、主に私の技術力と、あ、ここ重要ですよ? 主に私の技術力と技術班の力でできた、最高の魔法道具なのです! しかも注目すべきは楽器という――」
「あーはいはい、魔力増やすのね」
「フォルシーナ、少し黙っててくれ」
「ひうっ……私の魔法道具を自慢するチャンスが……」
再び涙を流すフリをし、かつ肉を口元に持っていくフォルシーナ。
その調子でやけ食いしていろ。
「……てーか、そんなもん持ってる奴が、なんたってこんななにもねぇ大陸に居るんだ?奴隷搾取にでも来たのかよ?」
「……あん? 奴隷?」
聞いてみると、妙に引っかかる言葉だった。
奴隷搾取?
「ここに奴隷を捕まえに狂ってことか?」
「そりゃあな。この大陸には国もねぇ、体制もねぇ、人権もねぇ。東大陸の奴がこっちに来て、奴隷として何人か連れ帰るってのは良くあることさ」
「……そうか」
「まぁ、私だったら連れてってもらいたいけどね。多少こき使われようが、平和な方が100倍マシさ」
「……平和、な」
生きるだけで死に物狂いの西の人にとっては、そりゃあ平和な方がいいだろう。
俺はその中でも、最も平和なところから出て来たのだ。
こんなことは言えないな。
「……お前、東大陸から連れて来られたんだろ? 向こうは平和なのか?」
「あぁ、平和だよ。毎日ブンチャカ音楽が鳴ってる。食いもんが美味い店もあるし、便利なものもたくさんあるよ」
「へー……とても想像できないね。私は西大陸の生まれだから、店だ街だ、そんなの想像もできないよ。奪い合い、殺し合いの毎日だからね」
「……そうかい」
儚くつぶやくキィの表情は曇りがかっていた。
キィはここの出身だったのか。
話を聞くに、辛い日々を送ってきたことだろう。
「できればだけど、行ってみてーな……1度でいいから……」
「…………」
その日、俺たちは何も言ってやることはできなかった。
自分からこの劣悪な環境に飛び込んで来たのだから、何も言えなかった。
私は、変な2人組に捕まっちまった。
服の汚れもねぇ銀髪の綺麗な女に、ちょっとアホな少年だ。
最近はなんも食ってないもんで、まさか鎧に攻撃してしまうとはバカなことをしたが、こいつらの方がよっぽどバカだった。
私は弱い。
弱いから食に苦しんでいる。
なのに、2人はバカで食べ物を私に腹いっぱい食わせた。
ここらに食事になるような物は魚ぐらいしか無いのに、貴重な食料をわざわざ私に食わせた。
しかも強固らしい結界を張って安眠を保証するときた。
本当にバカだ。
こいつらを、利用しない手はない――。
「美味しいからですよ〜。うーん、美味しい」
「……あっそ」
光球を消し、枝木を集めて赤魔法で火をつけて3人で囲っていた。
フォルシーナが持ってきた東大陸ではバカ高い牛肉を細かくして串に刺し、焼いて食べている。
「お前なんて歩けなくなるぐらい太って一生魔法道具でも作ってろ」
「酷い! これでも私、体型気にしてるんですよ!」
「あーそうかい。1ヶ月後には横周りの方が身長より高いなこりゃ」
「む、むむむむぅ〜!! ……でも美味しいものは美味しい……ふぅ……」
「…………」
串肉をもっちゃもっちゃと食うフォルシーナ。
これは本当に1ヶ月後が不安だ。
「なんか、この子見てると食欲失せるわね。折角こんな美味しい物が食べれるのに……」
「お前はむしろ食えよ」
「勿論、頂いてるわよ。はむっ」
キィも串刺しの肉を小さな口で咀嚼する。
硬いのだろうか、中々串から口が離れない。
「むぐっ、ぬぅう……」
「何してんだお前は」
「ぐぅ、硬い……」
「私が食べましょうか?」
「いや、やめて、食欲なくなるから」
「キィちゃんまで私の扱いが酷い!」
串を片手においおい泣き真似をし始める。
食べ物を手放さないあたりからお前の扱いは決まってるぞ、うん。
「……ふぅ、なんとか食べれた」
「はい、水な」
「ん、どーもっ」
水の入った皮袋をキィに渡し、遠慮も無くキィは飲む。
中々な飲みっぷりで、ひとしきり飲んでふぅと息を吐いた。
「……ところで、知ってるか?」
俺たち2人に、キィが言う。
知ってる、と言われても、俺たち2人は今日来たばかりで知らない事だろう。
「なにがだ?」
「火のあるところには人がいる。あわよくば食べ物があるかもしれない。もう言いたいことは、わかるね?」
「……! ヤララン!」
空気が静まり返る。
フォルシーナが即座に立ち上がり、辺りに視線をやり出した。
「……慌てんなよ。そんなことなら、俺でもわかってるから」
宥めるように優しく言う。
光球を出す以上、人目に付くことはわかっていた。
今では煙まで上がっているが、出て来た人間はキィのみ、他は様子を伺って居るのだろう。
しかし、俺たちの会話を聞いて“こいつらチョロいな”と思われ、いきなり出て来て不意打ちで殺されたりするかもしれない。
「こっそり結界張ってある。フォルシーナと2人なら張らんでも良いんだが、キィの命も守るからな。神楽器を持ってる俺の結界を割れる奴は居ないだろ」
「……なら良いんですが」
「なんだい、神楽器っていうのは?」
神楽器という名に、キィが食いついた。
そして創作者様がズイと体を寄せ、答える。
「神楽器というのはですね、魔力量増幅を図った世界初の魔法道具です! 魔力が少なくてやだなぁという魔法使いの皆様の夢と希望を叶える素晴らしい魔法道具ですよ! 制作には当然お金が掛かりましたが、主に私の技術力と、あ、ここ重要ですよ? 主に私の技術力と技術班の力でできた、最高の魔法道具なのです! しかも注目すべきは楽器という――」
「あーはいはい、魔力増やすのね」
「フォルシーナ、少し黙っててくれ」
「ひうっ……私の魔法道具を自慢するチャンスが……」
再び涙を流すフリをし、かつ肉を口元に持っていくフォルシーナ。
その調子でやけ食いしていろ。
「……てーか、そんなもん持ってる奴が、なんたってこんななにもねぇ大陸に居るんだ?奴隷搾取にでも来たのかよ?」
「……あん? 奴隷?」
聞いてみると、妙に引っかかる言葉だった。
奴隷搾取?
「ここに奴隷を捕まえに狂ってことか?」
「そりゃあな。この大陸には国もねぇ、体制もねぇ、人権もねぇ。東大陸の奴がこっちに来て、奴隷として何人か連れ帰るってのは良くあることさ」
「……そうか」
「まぁ、私だったら連れてってもらいたいけどね。多少こき使われようが、平和な方が100倍マシさ」
「……平和、な」
生きるだけで死に物狂いの西の人にとっては、そりゃあ平和な方がいいだろう。
俺はその中でも、最も平和なところから出て来たのだ。
こんなことは言えないな。
「……お前、東大陸から連れて来られたんだろ? 向こうは平和なのか?」
「あぁ、平和だよ。毎日ブンチャカ音楽が鳴ってる。食いもんが美味い店もあるし、便利なものもたくさんあるよ」
「へー……とても想像できないね。私は西大陸の生まれだから、店だ街だ、そんなの想像もできないよ。奪い合い、殺し合いの毎日だからね」
「……そうかい」
儚くつぶやくキィの表情は曇りがかっていた。
キィはここの出身だったのか。
話を聞くに、辛い日々を送ってきたことだろう。
「できればだけど、行ってみてーな……1度でいいから……」
「…………」
その日、俺たちは何も言ってやることはできなかった。
自分からこの劣悪な環境に飛び込んで来たのだから、何も言えなかった。
私は、変な2人組に捕まっちまった。
服の汚れもねぇ銀髪の綺麗な女に、ちょっとアホな少年だ。
最近はなんも食ってないもんで、まさか鎧に攻撃してしまうとはバカなことをしたが、こいつらの方がよっぽどバカだった。
私は弱い。
弱いから食に苦しんでいる。
なのに、2人はバカで食べ物を私に腹いっぱい食わせた。
ここらに食事になるような物は魚ぐらいしか無いのに、貴重な食料をわざわざ私に食わせた。
しかも強固らしい結界を張って安眠を保証するときた。
本当にバカだ。
こいつらを、利用しない手はない――。
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