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連奏恋歌〜歌われぬ原初のバラード〜

川島晴斗

/2/:到着

 世界にある4つの大陸は東西南北に分かれており、東なら東大陸などと安直な名前をつけられている。
 大陸の大きさは大きい順に北、西、南、東となっているが、昔に勇者だなんだのが召喚されたらしく、東大陸より大きい西大陸との戦争で勝利を収めたらしい。
 俺とフォルシーナは東大陸を馬や龍を使って4年掛からずと見て回れた。
 だか次は西大陸、デカい。
 心をときめかせずにはいられない――。










 店ではフォルシーナの次に信頼できる部下に長期の留守を伝え、多少怒られながらも俺とフォルシーナは【無色魔法】飛行し、西大陸へと向かう。
 空気の壁が痛いほどの速度で空を流星の如く翔けた。
 技術専門のフォルシーナも、神楽器のフルートの力を受けて俺に並んで飛んでいる。
 ただただ空を飛び、陽は暮れて星々の煌めく夜が訪れている中の事だった。

 海を越えるため、当然ながら距離は長い。
 ただ飛び続けるという事を何時間も持続させている。
 暇だし、魔力も徐々に減っていく。
 だが疲れはない。
 魔力の減りも感じない。
 速度を落とすこともなく、滑空を続けられる。
 魔力を40倍にする魔道具、神楽器はそれほどまでに凄かった。

「――着いた!! 降りるぞフォルシーナ!」
「はい!」

 西大陸の東端が視界に入り、陸地に向かって下降していく。
 降り立ったのは海岸、砂浜と岩が出迎え、その奥には木々が立ち並んでいた。
 夜の中にそびえ立つ樹々は幽鬼とも見間違う恐怖があった。

「……暗ぇな。【白魔法カラーホワイト】」

 有り余る善魔力で光を発生させる。
 パァァと光る白い魔力球が生まれてふよふよと頭上3mほどに飛び、岩陰の中まで照らす光を産んだ。

「海辺付近なら魚を取りに来る村人がいるはずだ。つまり、村がある。行くぞ」
「はいっ」

 フォルシーナは2つ返事で返し、道のない樹々の中を歩いて行く。
 道もあるんだろうがこの辺りじゃないかもしれないし、探すのが面倒臭い。
 草を踏み、枝を剣で斬ってひたすらに進んだ。

「……! 建物が見えるぞ!」
「ですね……」

 草木の道はすぐに終わり、灯りのない村に着いた。
 そこらに立ち並ぶ木造の家並、だがそこには人の姿はなかった。

「……誰もいねぇのか。暗いままだしよぉ」
「あらゆる人が悪人の大陸ですよ。夜に人が出歩くわけがないでしょう」
「……そーだな」

 風が吹くと砂埃が舞った。
 月明かりに照らされた気の家々がガタガタと音を立てる。
 住人が見えないようじゃ仕方がないし、俺たちは割と広い通り道を歩いた。

「……! 止まれ、フォルシーナ」
「わかってますよ」

 道を抜けようとしていた所で、俺たちは立ち止まった。
 光球に反射する薄いワイヤーが、張り巡らされていた。
 ここを通ると八つ裂きになってしまう。
 しかし、この先に何かあるということだろう。
 道の先には広場があり、その先には1軒の家が見えていた。
 それも結界の張られた――。

「……どうしますか、ヤララン?」
「どーしようかねぇ……」

 どうするか、非常に悩む所だ。
 突破すれば戦闘は避けられないだろうと思う。
 できれば穏便に済ませたいし、突破は避けよう。

「今日は何もしない。野宿するぞ」
「畏まりました。村の端にでも結界を張りますか?」
「……いや、それは怪しいな。森に行くぞ。獣が出ようが怖くねぇだろ」
「ですね。ヤラランの結界で万事解決ですし」
「主人に任せやがって……」
「何時ものことじゃないですか」

 確かに昔から結界を張るのは俺の役割だった。
 しかし、新しい旅でも俺を使うとは如何なものか……と言っても、安心できるのは俺の結界の方だろうし、仕方が無い。

「わかったよ。一旦森に戻るぞ」
「はい」

 村へは来たものの、夜というのが悪かった。
 しかし初日というのもあるし、甘く見るとしよう。

「……ちょっと、そこの人たち」
『!?』

 踵を返そうとした、その刹那だった。
 背後より声を掛けられ、俺たち2人は恐る恐る振り返る。
 背後に立っていたのは少女だった。
 金髪の髪を持っており、それによって目は隠れている。
 ボロ布の様な衣服を着ていることから生活が貧しいことは察せた。
 身長は150cmといったところか、腕はか細く、食に困っているのが見受けられる。

「……なんだ?」

 俺は少女に歩み寄って尋ねる。
 不用心なのをフォルシーナが咎める隙も与えずに。
 おどおどとした様子で、少女は口を開いた。

「た、食べ物を……持っていませんか?」
「……無くもない。で、どうしたいんだ?」
「……よこせ!」
「!」

 少女の語気が強くなると同時に服の裾からナイフを出し、俺の胸元を穿たんと伸ばされる。
 距離は間近、反射的に避けるには間に合わない――。

 ガキンッ!

 しかし、それは避けるまでもなかった。
 単なるナイフによる攻撃、しかも鎧の着いた胸部への攻撃。
 まぁ顔なら黒魔法で防壁を作ったし、そうせずともバックステップで避けられるかもしれなかった。
 そうしなかったのは、魔力を感じなかったのと、胸元へ来たからというだけ……。
 か細い腕での攻撃は、鎧を通らなかった。

「……ッ」

 少女は歯噛みをしていた。
 動いたことで髪がズレ、見えた蒼い瞳は鋭い。
 俺はなんてことない様に少女のナイフを握った手を掴み、ナイフを取り上げる。

「いいぜ、やるよ」
「……え?」

 ナイフを捨て、俺は黒魔法を発動する。
 月明かりで薄く出た影の中からはなんの変哲もない食パンが3枚、ポーンと飛び出す。
 俺は空いた手で素早くキャッチし、1枚を強引に少女の口に突っ込んだ。

「むぐっ!?」
「良く噛めよ。じゃねぇと肉になんねぇから」

 パンは肉になるだろうかというところから問題だが、少女は渋々と口を大きくして食パンを噛んだ。
 飲み込むところまで静観すると、残ったパンを頭の上に乗せる。

「別に襲ってこなくたって、欲しいならやるよ。水も欲しけりゃくれてやる」
「……私をたぶらかして、どうしようというの?」
「んーなつもりはねぇよ。いて言うなら、少し話をして欲しい。俺たちはここに来たばっかだからな、なにも知らねーんだよ」
「…………」

 少女の手を離してやると、両手で頭の食パンを手に取った。
 2枚のパンを見ながら、何かを考えている。

「……いいよ。食事を出すなら、話をしてあげる」
「…….そりゃ助かる。行こうぜ、フォルシーナ」
「はいはい……。あまり無茶をなさらないでくださいね」
「わーってるよっ」

 フォルシーナが後ろから宥めてくる中、俺たちは森に向かった。
 少女もゆっくりとした足取りで、食パンを頬張りながら着いて来た。

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