それはきっと、蜃気楼。

些稚絃羽

1.いつもの朝

ふかふかの掛け布団に包まれて、
オレンジのアロマの残り香の中、目を覚ます。
小鳥の飛ぶ真っ白なカーテンが5月の陽の光に染まる。
今日も心地の良い天気になりそう。


洗面台の前で大きく伸びをして、顔を洗う。
冷たい水が朝の目覚めを感じさせてくれる。
昨日少し夜更かしをしてしまったけれど、
隈はできていないみたい。


キッチンで頂き物のコーヒーメーカーをセットする。
コーヒーを待つ間、冷蔵庫から野菜を取り出して刻む。
今日はレモンの効いたドレッシングにしよう。
包丁を入れたレモンからは爽やかな香りが広がった。


2人掛けのダイニングテーブルには、
サラダとヨーグルトとコーヒー。いつものメニュー。
今日のドレッシング、少しレモンを効かせすぎたみたい。
今度から気を付けよう。


洗い物を終えたシンクの前から、奥の洋間までを見渡す。
やっぱり模様替えしておこうかな。
そろそろ大きい本棚買いたいし。
まぁ、帰ってからまた考えよう。


さて今日は何を着よう。クローゼットを開けて考える。
花の刺繍がされたネイビーのスカートと
レモンイエローのパフスリーブのインナー。
目に入った2つを手に取り、これに決める。


着替えてから、ドレッサーの前に腰掛ける。
胸の辺りまで伸ばした髪を櫛でとくと、
下の方が一房はねているのに気が付く。
どうしてここだけよくはねるの?後ろで一つに括る。
肌には化粧水と乳液。
気休め程度にBBクリームを塗っておしまい。
お化粧は苦手。
もう大人だしちゃんとした方が良いとは思うけれど、
上手くできないから、ちょっと諦めてる。


大きな壁掛け時計が7時20分を指す。
パソコンでまずはメールをチェック。
今日は来てないな。
続いて天気予報をチェック。
今日は少し冷えるかも。ジャケット着て行こう。
パソコンを閉じてクローゼットへ。
お気に入りのオフホワイトのジャケットを羽織る。
やっぱりこの生地、気持ち良いな。


バッグの中に入れておいた書類を確認。
今日の会議の大切な書類。
うん、不備はない。大丈夫。
時計は7時35分を指す。もう出なくちゃ。
ここから徒歩5分の駅で50分発の電車に乗る。
会議のある日はいつもこの電車。
乗り遅れたら結局いつもと同じ時間になっちゃうから
逃す訳にはいかない。


戸締りを確認して、バッグとキーケースを掴む。
玄関でホワイトのローヒールのパンプスを履いて、
行ってきます、と誰もいない部屋に声を掛ける。


玄関の鍵を締めて、眩しい光に目を細めと、
もう降り慣れたアパートの階段を降りる。
外を掃き掃除していた大家さんと挨拶を交わし、
駅までの道を歩いていく。


今日も一日が始まる。
これが私、菅野湖陽かんのこはる、25歳の日常。

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