分解っ!
Ⅲ-3
浮ついた表情のフィナを抱きかかえながら、スカイは地下都市を屋根伝いに走っていた。
「エルフ族は確か毒薬系に耐性があるんじゃないのかっ!?」
「媚薬にまで耐性があると子孫が残せないから耐性が薄まったのだ…」
「エルフ族らしいなっ!」
魔法結界の壁を分解で溶かし、さらに低ランク地区へと下っていく。
地下都市にはランクの壁が存在する。
本当に原始的なところから超未来的なところまで。
ランクとランクの間の壁―――それは物理的に突破できない魔法結界だ。
もしランク間の魔法結界を通ることができる者…それはそのランクのトップ。超越者だ。
そうやって超越者をさらに選別していく残酷なまでに無慈悲な区画分けは、今スカイに味方していた。
地上ゲートは最高ランクのみに開放される場所だ。
つまり、その魔法障壁さえ破ればいくらでも下のランクへと下ることが可能だ。
今は厳重な警戒態勢である魔法障壁のおかげで『分解』を使用しているが、
警戒態勢が緩んだ状態であれば逃走はさらに簡単になるのだ。
何時しか三十以上あるランク分けのうち二十ほど下のランクまでやってくる。
ここは地上の一般市民レベルの人々が住む場所だ。
そしてスカイはあと二つほどランクを下げる。
すでに住居環境は劣悪のレベルになり、スラム街の様相を模している。
「ここら辺が最低限だな…フィナ、もう少し待て」
どんなにランクが低い人々であってもこの地下都市においては完全な管理下に置かれている。
さすがに監視カメラが延々と付いて回るということではなく、どこに住んでいるのか、年齢性別などである。
そんな情報をスカイは流し読みしていく。
狙うのは家族構成が女の子のみで年齢は八歳まで。ぼろい家に住んでいることだ。
ランクが下がるにつれてその地区の人口も急激に増加する。
その程度の条件を揃えた子供など、1人位は居るというものである。
適度な人材を八人ほど調べると、そこからさらに条件を絞り込む。「押しが弱い」
1人を見つけることに成功したスカイ。
住所を割り出し、一気にぼろい家へと屋根伝いに向かう。
いかにも暴漢にギリギリ勝ったと言わんばかりの服装に着替え、自身の刀で体を傷つける。
全ての偽装作業を済ませたスカイ。そして倒れこむように見つけた少女の家に入る。
玄関の物音に気付いたのかゆっくりとこちらへ進んでくる少女。
傷ついた(ように見える)スカイと泥だらけになっているフィナをみて駆け寄る少女。
「すまない…少し休ませてくれるだろうか…」
「は、はい!え、えと…えと…と、とりあえずあなたの傷の手当てを!」
「いや、先にこの女性を…」
「ううう…とりあえず風呂に入れてください!泥が落ちてからです!早くその傷を手当てしないとっ!」
「いや、全て浅いから…」
「ふ、ふぇぇぇ!!!」
すでに状況を把握できなくなった少女。パニックになって頭を掻き毟る。
「も、もういいです!とりあえずその女性を風呂に!」
「ああ…」
二時間かけて事態を何とか収拾した少女。
フゥーと椅子に座ってテーブルに突っ伏す。
とりあえずぼろい家である以上ベットは一つしかなく、
女性はベッド、男性をボロボロのソファに寝かせたが…
一つ忘れていた。
「私何処で寝ようかなぁ…」
少女自身も重労働によって体は休息を求めていた。
ウトウトとしている間に、彼女は寝てしまったのだった。
朝―――いつの間にか台所を借りて料理をしている男性。
目をゴシゴシとしながら意識が覚醒する。
「あるぇー?男の人…なんて…え?」
少女が覚えていたのは血まみれの男性と女性だ。
そして今料理をしているのは男性…。
「な、なんでもう料理なんてしてるんですかぁ―――!?」
早朝のスラム街に少女の叫びは響いた。
「ああ、昨日はすまなかったね。大丈夫。傷はもうふさがったから」
「ふ、塞がったって…」
確かに腕にもあった傷跡は全て綺麗に消えている。
「えーと、超越者って言えばいいかな?」
「ちょう…えつ…しゃ…?」
何か情報をとり違えただろうか?と思うスカイ。
確かスラム街を抜けた人間―――その中でもさらに上の地位…というより
ランクへと上り詰めた者を超越者と呼んだはず―――?
「も、ももも、もしかして超越者!?ま、まずこんなところに来ない方ですかっ!?」
「まぁ、事情が事情だからそこは黙って欲しい…かな」
「は、はいっ!」
一応通じてるみたいで一安心するスカイ。
「あ、あの女性も…」
「ああ、彼女は一歩手前…かな」
「へぇー」
「君、意外と賢いね?」
「そ、そんなことありませんよ!」
「脱出できるといいね」
「…」
言外に子供扱いされたことに少し拗ねる少女。
「さてと…召し上がれー」
カタンと置かれた食事は少女の嗅覚を刺激し、胃は空腹を脳に伝える。
「グゥゥゥ…」
顔を赤くする少女。
「はは。お邪魔してるお礼だよ。悪いね。ちょっとフィナを見てくるから」
女性の名前はフィナさん…覚えとこ。と、食事を頬張りながら考える少女。
「フィナ」
「うんぅ?スカイ…」
「媚薬の効果は薄らいだか?」
「まぁ…一応…?」
まだ俺の事を名前で呼ぶあたり、まだまだ薄れていないようだ…と思うスカイ。
少し奇妙な生活が数日の間続きそうな朝だった。
「エルフ族は確か毒薬系に耐性があるんじゃないのかっ!?」
「媚薬にまで耐性があると子孫が残せないから耐性が薄まったのだ…」
「エルフ族らしいなっ!」
魔法結界の壁を分解で溶かし、さらに低ランク地区へと下っていく。
地下都市にはランクの壁が存在する。
本当に原始的なところから超未来的なところまで。
ランクとランクの間の壁―――それは物理的に突破できない魔法結界だ。
もしランク間の魔法結界を通ることができる者…それはそのランクのトップ。超越者だ。
そうやって超越者をさらに選別していく残酷なまでに無慈悲な区画分けは、今スカイに味方していた。
地上ゲートは最高ランクのみに開放される場所だ。
つまり、その魔法障壁さえ破ればいくらでも下のランクへと下ることが可能だ。
今は厳重な警戒態勢である魔法障壁のおかげで『分解』を使用しているが、
警戒態勢が緩んだ状態であれば逃走はさらに簡単になるのだ。
何時しか三十以上あるランク分けのうち二十ほど下のランクまでやってくる。
ここは地上の一般市民レベルの人々が住む場所だ。
そしてスカイはあと二つほどランクを下げる。
すでに住居環境は劣悪のレベルになり、スラム街の様相を模している。
「ここら辺が最低限だな…フィナ、もう少し待て」
どんなにランクが低い人々であってもこの地下都市においては完全な管理下に置かれている。
さすがに監視カメラが延々と付いて回るということではなく、どこに住んでいるのか、年齢性別などである。
そんな情報をスカイは流し読みしていく。
狙うのは家族構成が女の子のみで年齢は八歳まで。ぼろい家に住んでいることだ。
ランクが下がるにつれてその地区の人口も急激に増加する。
その程度の条件を揃えた子供など、1人位は居るというものである。
適度な人材を八人ほど調べると、そこからさらに条件を絞り込む。「押しが弱い」
1人を見つけることに成功したスカイ。
住所を割り出し、一気にぼろい家へと屋根伝いに向かう。
いかにも暴漢にギリギリ勝ったと言わんばかりの服装に着替え、自身の刀で体を傷つける。
全ての偽装作業を済ませたスカイ。そして倒れこむように見つけた少女の家に入る。
玄関の物音に気付いたのかゆっくりとこちらへ進んでくる少女。
傷ついた(ように見える)スカイと泥だらけになっているフィナをみて駆け寄る少女。
「すまない…少し休ませてくれるだろうか…」
「は、はい!え、えと…えと…と、とりあえずあなたの傷の手当てを!」
「いや、先にこの女性を…」
「ううう…とりあえず風呂に入れてください!泥が落ちてからです!早くその傷を手当てしないとっ!」
「いや、全て浅いから…」
「ふ、ふぇぇぇ!!!」
すでに状況を把握できなくなった少女。パニックになって頭を掻き毟る。
「も、もういいです!とりあえずその女性を風呂に!」
「ああ…」
二時間かけて事態を何とか収拾した少女。
フゥーと椅子に座ってテーブルに突っ伏す。
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「私何処で寝ようかなぁ…」
少女自身も重労働によって体は休息を求めていた。
ウトウトとしている間に、彼女は寝てしまったのだった。
朝―――いつの間にか台所を借りて料理をしている男性。
目をゴシゴシとしながら意識が覚醒する。
「あるぇー?男の人…なんて…え?」
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そして今料理をしているのは男性…。
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「ああ、昨日はすまなかったね。大丈夫。傷はもうふさがったから」
「ふ、塞がったって…」
確かに腕にもあった傷跡は全て綺麗に消えている。
「えーと、超越者って言えばいいかな?」
「ちょう…えつ…しゃ…?」
何か情報をとり違えただろうか?と思うスカイ。
確かスラム街を抜けた人間―――その中でもさらに上の地位…というより
ランクへと上り詰めた者を超越者と呼んだはず―――?
「も、ももも、もしかして超越者!?ま、まずこんなところに来ない方ですかっ!?」
「まぁ、事情が事情だからそこは黙って欲しい…かな」
「は、はいっ!」
一応通じてるみたいで一安心するスカイ。
「あ、あの女性も…」
「ああ、彼女は一歩手前…かな」
「へぇー」
「君、意外と賢いね?」
「そ、そんなことありませんよ!」
「脱出できるといいね」
「…」
言外に子供扱いされたことに少し拗ねる少女。
「さてと…召し上がれー」
カタンと置かれた食事は少女の嗅覚を刺激し、胃は空腹を脳に伝える。
「グゥゥゥ…」
顔を赤くする少女。
「はは。お邪魔してるお礼だよ。悪いね。ちょっとフィナを見てくるから」
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