分解っ!

ノベルバユーザー194919

Ⅱ-4

第八階層。
伝説などで出てくる迷宮のようになってくる目安の階層だ。
罠が初めて現れるのだ。
が、スカイもフィナも罠を解除するような魔法も技術もないので…。
「よし、分解だ」
切り札をここで使ったのである。
分解するだけでバラバラと罠が砕ける。
「主人…せこい」
「仕方ないだろ…」
八階層は迷路だったために罠の数も多く、何度も戦闘をしては罠を解除する…というループに嵌っていた。
戦闘中に罠に引っかかるのはまずいのでいちいち解除しているわけだが、あまりにも絵が地味であった。
が、迷路は一本道がほとんどのため、罠とモンスターに同時に遭遇する確率は低いが、これが広大な平原などのフィールドとなると、罠は分かりにくく偽装され、モンスターと同時に遭遇する確率も高まる。
地味ではあるが、当たりを引いていたのである。
が、戦闘も味気なく、解除も地味なため八階層については省略する。
階段の手前の罠を解除し、2人は九階層へと下って行った。
沼と湿地帯が支配する広大なフィールド。
罠を見つけることは不可能に等しく、足元は水で常に濡れるため、行動が制限されやすい。
もっとも引きが悪い類に入るエリアの一つだ。
「…最悪の地形だぞ主人」
「ま…まぁ頑張ろう」
グチャグチャと靴の中に水が入ってくる感触を感じながら歩き始めるスカイとフィナ。
と、いきなりフィナが罠にひっかかって転ぶ。
「きゃぁっ」
グッと腕をつかんで引き起こすスカイ。
「やっぱり危ないな…モンスターと戦ってる時にこれはまずい」
フィナはスカイの顔が真近にきて、少し顔が赤くなっている。
「フィナ、熱か?まだ風邪にかかるほど水には濡れてないはずだが…」
「い、いや違うんだ主人。大丈夫。問題ないぞ!」
「…そうか?ならいいが―――」
心の中でほっとするフィナ。
(ああ、ばれてない―――…私は今何を考えた?)
少し思考回路が焼きつくフィナ。
「フィナ、早くいくぞ」
「お、おう主人!」
「本当に大丈夫なのか…?」
九階層では何度もフィナが転びそうになるという偶然(?)が起きる中、
水中からの敵に少し手間取りながらも、2人は十階層へと下って行った。

十階層、ボス部屋手前。
スカイとフィナが来た時には、先客がいた。
「ん?見ない顔だな。俺はファシュール。十階層突破に向けていつも努力している」
「スカイだ。始めてこの迷宮には入った」
「ああ…攻略者か」
勝手な勘違いをわざと引き起こすスカイ。妬まれないための予防措置だ。
「で、今はボス戦に向けて装備のチェックといったところか」
「ああ。罠に嵌って武器が溶けた奴がいるんでな」
「うるせぇ!」
いきなり飛んでくる怒声。
「すまないな。シャクルは短気なんだ…」
「黙れ!十階層に来れる奴って言うのは気にな…る…」
明らかに顔が青ざめる男。そしてガタガタと指を震わせながらスカイを指差す。
「お…おま…」
スカイは男の行動から大体を悟る。
「なぁ、シャクルは元冒険者か?」
「あ、ああ…確かに冒険者として長く活動していたらしいが…ここまで怯えるのは初めてだ」
「まぁ気にしないでくれ…先に俺達が行くことも可能か?」
「ああ。少し落ち着かないからな…先に行ってくれて良いぞ」
「悪いな」
彼らのチームメンバー達の間を歩き、
ボスの部屋に繋がる扉を開いたスカイとフィナは扉をすぐに閉じた。
「どうしたんだシャクル、君はBランク冒険者だったんだろう?
まず怯えるような相手などいないはずだが…」
「ファシュール、絶対に今の男と敵対するな。絶対だ」
シャクルはそれ以上スカイに関して一言も話さなかった。

一方、スカイとフィナ。
ボスの部屋には大きな鳥がいた。
例えるならカワセミ。くちばしが大きく、羽は群青色。
「キェェェーーー」
鼓膜を破く様な高音で叫ぶと同時に上空に舞い上がる鳥。
だが、この類はスカイの得意なモンスターだ。
矢を鳥へと放つ―――が、鳥もただやられるほど馬鹿ではなく、風魔法の障壁によって矢を弾き返す。
「ちっ…フィナ、一瞬でいいから風魔法で障壁を消せるか!」
「はいっ!」
そう会話する間にも鳥は羽根に風魔法を付与してこちらに飛ばしてくる。
今の所スカイの巨大な剣によって弾き返しているものの、このままでは反撃ができず、ジリ貧だ。
さらにいえば、羽根の威力が段々上がってきているとスカイは感じていた。
フィナが詠唱をする。
「『障破』!」
パンッと鳥の生み出した障壁が一瞬なくなる。
その隙間を寸分違わずに矢が通る。
グサリと頭に矢が突き刺さった鳥は空中で暴れながら地面へと衝突する。
ブワッとその体が粒子へと変わり、スカイとフィナに入り込む。
『王都平原ノ迷宮第二階層を攻略』
今回は味気ないな。と思うスカイ。
『固有体質【青羽】が崩壊。経験値に分解されました。
固有体質【経験値up】は変化しませんでした。
固有体質【魔眼】は変化しませんでした
固有魔法【分解】のレベルがⅡからⅢにレベルアップ。
【分解】の機能制限解除。分解範囲が半径10mから半径15mになりました』
目当ての【分解】の機能制限が解除されたようだ、と内心喜ぶスカイ。
『フィナの上昇状態を表示。
固有体質【青羽】が崩壊。経験値に分解されました。 
種族体質【魔法威力上昇】は変化しませんでした』
やはり『隷属関係が~』というのは一回確認すると必要無くなるようだ、
とあまり意味のない情報を獲得するスカイ。
『財宝【群青色の羽】、金貨10枚をスカイに授与します』
あまり努力せずにこれだけ金が稼げるのはさすがAランク冒険者か、と実力を見せつけたスカイだった。

ちなみに、ファシュール達は一時間ほど羽の攻撃に耐えるも、
上空への攻撃手段がなかったため、攻略を断念。
ジリジリと後ろに下がって扉を開き、ボス部屋から退散した。
迷宮からの帰還方法はボス部屋を除けば基本的に念じるだけで脱出が可能だ。

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