分解っ!

ノベルバユーザー194919

Ⅱ-3

第二深部。
そこは本格的に迷宮の探索が始まる場所。
第三深部への道は厳しいがために第二深部で店は出来た。
そして店は村。村は町。町は都市へと発展し、迷宮都市が出来上がった。
国に支配されないことを望む荒くれ者が集まる都市。
迷宮の仕事はその都市で貰い、都市で報酬をもらう。
冒険者ギルドの影が見え隠れする場所。
「主人…凄いな。王都よりも大きいのではないか?」
「まぁ特に用事もないから突っ切るだけだ」
「少しは買い物でもしたいぞ!」
「はぁ…分かった。銀貨五枚だ。あと人攫いには気をつけろよ」
「ふふふ。私の耳の良さを舐めては困るぞ!」
「都会で耳は使いものにならないぞ」
「え…?」
入ってみればわかる。とスカイは迷宮都市の門をくぐる。
門を越えればそこは人、人、人。
あまりの人数に熱気さえ立ち上るそこは、あまりの騒音に店の前では叫んでいる人々も見える。
「…確かに耳は使いものにならないな」
「まぁ体術も少しは出来るだろうし、行ってこい。俺はあっちの門の前で待っている。

主人と別れる私。
エルフ族はバラバラになり、私はつかまって奴隷となった。
そして私は個室の中で食事もせずただぼんやりと死を待っていた。
時々人間―――とくに男―――が来て、私の目を見ると共に諦めた目で帰っていく。
一ヵ月…私は生き延びた。エルフ族特有の栄養摂取をあまり必要としない体によって。
また人間がやってきた。そして私の体を見て、耳をみて、目を見た。
「you don't lose hope. have pride of elf」
忌まわしき―――しかし望んでいた言葉は確かに男の口から漏れ出ていた。
この男はエルフ族を理解している。そんな思いがよぎった。
だからだろう、素直に男に抱えられて、契約を結んだのは。
男―――スカイ―――は宿につき、私に食事をとらせた。
野菜や葉…そして今はもう取れない華月草を添えて。
ああ、やっぱり理解してくれていたのか。そんな思いが胸をいっぱいにした。
誰もエルフが菜食主義だと気づかない。奴隷商人でさえ知らない。
そしてエルフにとって最高の食べ物は華月草だということも。
だが、だが―――主人だけがエルフの菜食主義を知っていた。
まぁ私の好物など語っていても話が進まないな。
食事を食べ。あー…あー…うん。まぁその…だな…。
あの鬼畜めっ!
はっ!少し取り乱してしまった。危ない。
で、その後は準迷宮を一個攻略し、早速王都平原ノ迷宮に挑戦。
第一深部第二階層では私の聴力も役に立ったなぁ…。
「なぁじょうty―――ゴハッ」
その後、岩山で飛行系モンスターに苦戦出来てなんだか楽しかった。
ボスでは私がとどめを刺すことができてうれしかった。
い、いや、別に主人の役に立ったのが嬉しいわけじゃない。倒したのが嬉しかったのだ。
そう、倒したのが。うん。そうだよ。
「この都市に嬢ちゃん1人でくるとh―――バキッ」
気分は絶好調と言わんばかりにスキップするフィナの後ろにはナンパ男たちの残骸が残っていた。

スカイが門の前に立ち始めてから二十分ほどするとフィナが来る。
「主人、お待たせした!」
「よし、じゃあ第二深部も攻略していくぞ」
「はいっ!」
と、威勢よく門を飛び出たはいいものの、三時間ほどで階段を見つけたころにはすでに日は落ちていた。
「…ここで夜を迎えることになりそうだな」
「仕方ないな主人!」
「よいしょ」
スカイはテントを取り出す。
「はいれ。かなり大きいサイズだ」
フィナがテントに入るとそこは巨大なワンルームだった。
少しの家具と寛ぐためのソファ。キッチンにベッド。
天井には酸素を消費しない光魔法が設置されている。
スカイは魔法によって空間が広げられたテントを取り出していたのだった。
「す…すごいっ!」
「一回俺の魔力を少し流すだけで二日は設備を使える。結界具もあるからモンスターも寄ってこない」
「見張り要らずなのか主人!?」
「ああ。特に必要はないだろう。…さぁ、今日はもう遅いからベッドに行こうか?」
「しゅ…主人、私の身間違いでなければベッドが一つしかないのだがっ」
「そりゃそうだろ」
迷宮の夜もまた地上と同じように過ぎていく。

次の日。
不機嫌そうなフィナを後ろに、迷宮を探索するスカイ。
「おい…機嫌直せよ」
「主人の悪魔、鬼畜、変態…」
しばらく、愚痴を聞く必要があるようだ。と気分が落ち込むスカイ。
すでに第六階層を探索し終え、七階層を探索している。
「おい…そこの男…」
緊張が体に走る。
「俺と…戦えぇぇぇ!!!」
ブワッと森の中から姿を現した半透明な男。
「地縛霊かっ!」
とっさに剣を持つスカイ。
キンッと男の持っている剣とスカイの持つ剣が交わる。
「っのぉ!」
男の腹を蹴って吹き飛ばす。だが、あまりダメージは通っていないようだ。
「ククク…オレハァ…もう無敵ダァ…」
「ちっ」
「『浄化』」
ミスリル製の剣が魔法特有の淡い光を帯びる。
ズシャッと男が切れる。
「浄化完了と」
「主人…詠唱省略ができるのか!?」
「ああ。エルフ族に教えて貰ったから詠唱破棄もいける」
「私の役割がまた減った気がするのだが…」
「ソンナコトナイヨー」
雑談をしながら第七階層を2人は突破した。

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