分解っ!

ノベルバユーザー194919

Ⅰ-5

扉の先には螺旋階段のみ。これを使って下に降りろということか?と理解するスカイ。
鉄製だったようで、カンカンと音が鳴る。
そして下へ降りる。
すでにそこにはいかにも商人と言わんばかりのヘラヘラ顔をさせた男。
「いらっしゃいませ。こちらは奴隷専門店でございます」
「ああ。知っている」
こういう男とは最低限の話で済ませるのが一番だと知っているスカイ。
「どのような奴隷をお探しでしょうか?」
「女奴隷。綺麗なことと健康なこと。出来れば盾を使える者」
「ふむ…女で綺麗で健康…加えて職業は守護系統ですか。うーむ。全てがそろうということはなかなか…」
「五秒の時間稼ぎを傷一つなく出来る腕があるならまぁなんでもいい」
それにしてもこの男はこの地下に居る奴隷を全て覚えているのだろうか。
「拳闘士ならいるのですが…」
「何秒持つ」
「王都平原のボス相手では二秒が限界かと」
どこで情報が漏れた…と考えたところでここは探索者ギルドの回し者だったと気づく。
「魔法使いは?」
「それでしたら良い者がおります」
と言って歩き出す商人。
「商人」
「はい何でしょうか?」
「歩きながらでいい。ここに居る奴隷は主に見売りか?犯罪者か?」
「犯罪者を売るほど落ちぶれておりませんよ。見売りしかおりません」
随分と奥の方にやってきた商人とスカイ。
「こちらになります」
ガチャッと扉が開く。
そこには痩せ細った体にもうしわけ程度の鎖と手錠。特徴的な長い耳。
エルフ。森の守護者だ。
「昨年の迷宮ラッシュによって大陸全土で不作になりましてなぁ。
この者は自身から身を売りに来たのです」
「そうか。少し話をしてもいいか?」
「ええ。魔法封じの手錠をつけていますのでどうぞゆっくり。私は螺旋階段で待っております」
「ああ。案内御苦労」
スッと部屋から消える商人。魔力による索敵も使って反応が無くなるまで待つ。
「…何の用だ人間」
「随分と森の加護も薄まったみたいだな」
「ふっ…私達はすでにエルフとしてまとまっていないのだ」
ここまで絶望するほど不作か。もう飢饉の領域だな。と思うスカイ。
一応試してみるか。
「you don't lose hope. have pride of elf(希望を失うな。エルフの誇りを持て)」
「エルフ語を喋れる………お前なら別に買われてもいい」
エルフ同士の合言葉。エルフの結束力を示す言葉。
一応通じたようだ。随分と刺々しい言葉だが、一応認めたと見える。
エルフを部屋から連れ出し、商人と話をする。
「は!?…そ、そうですか。それは良かった。ちなみに値段なんですが…金貨八枚となります」
「ちょうど八枚だ。問題ないな?」
商人に金貨を手渡すスカイ。
「…あ、あずからせていただきました。どうぞ。もうそのエルフはあなたの物です」
「ああ。連れていくぞ」
「どうぞ。お買い上げありがとうございました」
深々と頭を下げる商人。螺旋階段を上り、外へ連れ出すスカイ。
「とりあえず服を着ておけ」
自分の服をエルフにかぶせるスカイ。さすがに街中で裸のまま連れまわす趣味はないのだ。
「まぁ…まずは服か。その後宿だな。明日装備を揃えて準迷宮…になるか」
「ご主人様の言うとおりにするさ。服くらい選ばせてほしいが」
「俺が女物の服を選べるわけないからな。五着くらい買っておけ。」
「そうなると…銀貨一枚だな」
エルフの言葉にめまいが起きそうになるスカイ。
服にも金かかるんだな。まぁ食費もあるし…奴隷1人でも随分金がかかる…と思う。
「そう言えばお前の名前を聞いてなかったな。なんて名前だ?」
「フィナ。すでに姓は持たない。そう言えば…主人の名を私は知らないぞ?」
「スカイ。スカイ=フリーダムだ」
「ふーん…まぁ主人と私は呼ばせてもらう」
「こんな道端じゃなんだからさっさと服屋に行くぞ」
冊子に服屋の場所も記されていたのはスカイの救いだった。

「ふむ…大きさもあっているし動きやすいな」
財布から銀貨五枚が飛んだことはスカイと店員のみが知っている。
「次は宿だ。質はまぁまぁで良いだろう」
「特にこだわりはないぞ主人」
エルフに主人と言われるのはなんだか気持ち悪いな…と微妙に気持ち悪く感じるスカイだった。
一件目の宿が安い、食事うまい、部屋綺麗と良さそうな宿だった。
特にこだわりのないスカイが即決したのは言うまでもない。
「さて、明日フィナの装備を整えるわけだが、フィナの得意な武器は何だ?」
「魔法以外は槍だ。村では男に交って上位に食い込んでいたぞ!」
自信のある様子のフィナ。戦略の幅は随分ありそうだ、と思うスカイ。
「槍か。魔法は杖が必要か?」
「いや、杖は要らない。儀式魔法は使わない。詠唱魔法を使う。改変魔法も少しはできるな!」
「杖は要らないか。詠唱補助の腕輪だな。防具は軽装備の方がいいか」
「そうだな。後ろでブツブツ呪文を唱えるわけじゃないからな!」
何か因縁があるのか儀式魔法使用者の悪口をつくフィナ。
「そうか。俺は主武器が弓、補助武器が剣だ。
魔法は詠唱魔法と改変魔法。時間を稼げるなら魔法陣も可能だ」
「…なんか、エルフとして屈辱的なんだけどなぁ!」
バンバンッとベッドを叩くフィナ。
「まぁとりあえず装備を整えてから考えるべきだな」
「おう!…なぁ、もしかして私は姓奴隷としても買われた…」
「自分で言い出すとは随分だな。まぁ明日も動けるくらいにしてやる」
「わっ私しょ―――」
異世界の夜も更けていく…。

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