異世界転移~俺は人生を異世界、この世界でやり直す~
入団当日
ズボン装着。シャツ、装着。最後にコートを。
鏡を見てみる。なるほど、いい感じだ。
騎士団入団初日。いつもより少し早く起きて自らの制服姿に勝手に口元がニヤける。学生時代に買った農具にされていたという剣を腰に携えればもう立派な騎士団員!
そういえばこの剣ずっと使ってるよな。もはや俺の相棒と言っても過言じゃない。よしよし、名前でも付けてやろうか……いやそれは流石に痛いか。しかしほんと、今までよく壊れてないよ。というか何故だろう、買った当初よりも綺麗になってる気がするがまぁ、あまりに愛着がありすぎてそう思うだけだけか。しかし鞘ほしいよな鞘。今度ベルナルドさんに作れるか聞いてみるとしよう。こいつも包帯を巻かれてるだけじゃ可哀想だからな。
そんな事を考えつつしばらく過ごすと、存外時間が経つのは早く、すぐに出勤の時間となった。
さて行くかと立ったところ、控えめに扉をノックする音が聞こえた。
「ア、アキいる?」
どうやらティミーらしい。一人で行くのははばかられたのだろう。仕方がないなぁ!
「おう、今行く」
扉を開けると、目の前には騎士団の制服姿が新鮮なティミーの姿があった。どうやら女性用はスカートらしい。確かにミアもハイリもそうだった気がする。
いやしかし、絶対の領域に白く輝く細い太ももはなんとも……おっとよくないなそういうのは。ゴホン。
「か、会議室だったよね」
ティミーはかなり緊張しているようだ。先ほどから声が詰まり気味。
「ああそうだ。まぁ気楽にな」
「はふっ!?」
軽く背中を叩いてやる。なになに、可愛い声出しちゃって、これから不意をついて何回も叩いちゃうぞ!
「そうだね、うん」
よしと可愛らしくティミーはグーにした手を振る。
「そういえばスーザンはいないのか?」
どうせなら一緒に行った方がいいだろう。ちなみに性悪金色メッシュの害虫野郎の事は一切考慮しない。
「ノックしたんだけどもういなくて」
「そうだったのか……」
一番にこっちへ来てくれたわけじゃないのか……。子供が親離れした時の親の心境ってこんな感じなんだろうな。まぁ俺の場合引きこもって親離れどころか親依存だったけどな! つまり俺は親を悲しませる事をしなかった世界でも稀に見る親孝行者! なんて口が裂けても言えません。ハイ。
「えっと、ファルク君は……」
「いらん、行くぞ」
ティミーは聞いた割には少しホッとしたように見える。一応の気遣いってやつだな。ザマぁ見ろファルク! 貴様はどうあがいてもティミーの隣には立てないからな!
って何熱くなってるんだ俺は……。まぁいい、会議室は確か隊長室の隣だったな。
溜まった熱を吐き出すべくフッと息を吐くと、集合場所に向かうため足を動かした。
扉の向こうは妙に静かだった。しかもここに来るまで同じ隊の人に会っていない。ここで考えられるのは三つ、早く来すぎたもしくは遅く来すぎた。あと場所を間違えた。この時間で早く来すぎたって事はないだろうし場所もここに違いないはずなので、自ずと遅刻したという考えに至る。
「ねぇアキ……」
ティミーも同じ事を思ったのか不安そうに扉を見つめている。
「は、八時だったよな?」
「わ、私もそう思ってたんだけど……」
現在の時刻は七時五十分、十分前行動する俺意識高EEE! とか思ってたのに。
「あっれー? アキちんとティミーちゃんじゃん。なんでそんなとこで突っ立ってんのー?」
しばらく入るのをはばかられていたところ、能天気にファルクが歩いてきた。一瞬やっぱり遅刻じゃなかったとホッとしかけたが、よくよく考えればファルクの事だ、平気で遅刻しかねないのに安心できるわけがない。
「一応聞くけど、集合時間は何時だったっけ?」
「え、八時っしょ? うっわーアキちんそんなんも覚えられないとか記憶力わっるー! アホウバードー?」
「一応だっての」
いちいちこいつは毒を吐かないと気が済まないらしい。確かアホウバードは鳥系の魔物でその名前の由来は人間と戦う時わざわざ剣の切っ先に突っ込んでいって自殺行為に及んでアホだからとかそういうのだったはずだ。チッ、改めて由来を再認識したら鬱陶しさが増すな!
ファルクの事を睨み付けていると、廊下の突き当りからスーザンが歩いてくるのを発見した。
「あれ、もしかしてスーちゃん部屋にいた?」
ティミーが問う。確か俺の所へ来る前に行ったんだよな。俺の所へ来る前に! いやいや、何をそこまで悲観しているんだ俺は。親離れなんか立派じゃないか。うん。
「いや、少し朝風呂にな」
「そうだったんだね」
風呂か……あそこ広かったし居心地いいんだよな。騎士団は本当に優秀だと思う。
「それはそうと貴様らは何をやっているのだ?」
「今から入るとーころっ」
「貴様になど聞いておらん!」
「スーちゃんひっどー! 貴様らっていったじゃん! いじめだー最低だー!」
「な、貴様、その名を呼んでもいいのはティミーと……」
何故かスーザンはこちらを一瞥する。
え、昨日ファルクが抜かしやがった誤解は解いてロスト・キャニオンでの事もお礼は言ったし……あと何かあったっけ……そういえば確か出会った時に怒らせてたような……もしかしてそれ? てっきりもういいのかなとか思ってたりしたんだけど。
「ま、まぁいい、とにかくその名を呼ぶな汚らわしい」
「そこまで言う!? ねーねーティミーちゃんどう思うー? ひどくなーい?」
なんだこいつ、何いきなりティミーに話振ってるの? すごく困ってるじゃないか! クソッ、俺が一つでも多く魔鉱石を集めていれば賭けは俺が勝ってティミーにそんな大変な思いをさせることは無かったのに! たぶん! 罪滅ぼしもかねて俺が答えてやらねば。
「スーザンの言う通りだファルク。もう少し自分の……」
「アキちんに聞いてないからとりあえず死ねー」
「あ!? てめぇこそどこまで言ってんだ!」
しばらくにらみ合うと、不意に扉の向こうから少しざわめきが聞こえた。しまった、興奮しすぎて声のトーン間違えた。
「もう入っちゃおっかー。おっじゃまっしまーっす!」
物怖じせず扉をあけ放つファルクの姿にはもはや呆れを通り越して感心する。刹那。
「やっぱり新人だ!」
「うおぉ! 初々しい!」
「いいねぇ! 青春だねぇ!」
口々に言葉が飛んできたかと思えば、二十代後半あたりから中年くらいの男たち迫ってきた。え、なに、ここ騎士団? 盗賊団じゃなくて!?
「俺の名前は……」
いろいろな口から自己紹介が飛び交うがいかんせん俺は聖徳太子じゃないので把握できない。
他の皆もまさかの事態に戸惑いを隠せない様子だ。
「まぁ待てよお前ら。新人たちも驚いちまうだろ?」
十数名の男達の後ろから、低く聞き心地の良い声が耳に届く。
「副隊長!」
男たちがそう叫ぶが別に道が開くわけではない。一瞬静まった空気だが、またしても自己紹介が飛び交い騒がしくなる。え、さっきの副隊長コールなんだったの!?
「だからさお前ら……ちょっとは道を開けるなりしたらどうなの? 一応俺副隊長だよ?」
先ほどの声の主と思しき人が男をかき分けて姿を現すと、ようやく周りは少し落ち着いた。
「バリク隊の副隊長ブライデン・クリンゲだ、よろしく。生憎隊長は急に呼び出されて今はいない。そのうち帰ってくるだろうがね」
あごに髭をたたえ、昔も今もさぞかし女をぶいぶい言わせる事だろうと予測されるおじさまだ。髪の毛なんか後ろでまとめてある。
でもバリク隊って事はやっぱりここは騎士団だったのか……。
「副隊長だけずるいっすよ!」
「俺も自己紹介したいっす!」
「まぁ待てよ、ここは副隊長である俺から挨拶するのが筋ってもんだろ? だいたいお前らははしゃぎすぎんなんだよ」
それだけ言うと、野次の方向へ向いていた顔をまたこちらへ戻す。
「しかしすまんね、うちのがうるさくて。この通りうちの隊は他のに比べてちょっとばかりうるさいしあとむさ苦しいが許してやってくれ。唯一の華も今日も今日とて重役出勤だ。いや華にしちゃじゃじゃ馬すぎるか……」
最後の方は独り言に近そうだがたぶんハイリの事だろう、やはり遅刻常習犯らしい。
「ってなわけだが、まぁとりあえずはこいつらの自己紹介でも聞いてやってくれ」
クリンゲさんはそう言いつつ部屋の中へ入るよう促してくれた。
鏡を見てみる。なるほど、いい感じだ。
騎士団入団初日。いつもより少し早く起きて自らの制服姿に勝手に口元がニヤける。学生時代に買った農具にされていたという剣を腰に携えればもう立派な騎士団員!
そういえばこの剣ずっと使ってるよな。もはや俺の相棒と言っても過言じゃない。よしよし、名前でも付けてやろうか……いやそれは流石に痛いか。しかしほんと、今までよく壊れてないよ。というか何故だろう、買った当初よりも綺麗になってる気がするがまぁ、あまりに愛着がありすぎてそう思うだけだけか。しかし鞘ほしいよな鞘。今度ベルナルドさんに作れるか聞いてみるとしよう。こいつも包帯を巻かれてるだけじゃ可哀想だからな。
そんな事を考えつつしばらく過ごすと、存外時間が経つのは早く、すぐに出勤の時間となった。
さて行くかと立ったところ、控えめに扉をノックする音が聞こえた。
「ア、アキいる?」
どうやらティミーらしい。一人で行くのははばかられたのだろう。仕方がないなぁ!
「おう、今行く」
扉を開けると、目の前には騎士団の制服姿が新鮮なティミーの姿があった。どうやら女性用はスカートらしい。確かにミアもハイリもそうだった気がする。
いやしかし、絶対の領域に白く輝く細い太ももはなんとも……おっとよくないなそういうのは。ゴホン。
「か、会議室だったよね」
ティミーはかなり緊張しているようだ。先ほどから声が詰まり気味。
「ああそうだ。まぁ気楽にな」
「はふっ!?」
軽く背中を叩いてやる。なになに、可愛い声出しちゃって、これから不意をついて何回も叩いちゃうぞ!
「そうだね、うん」
よしと可愛らしくティミーはグーにした手を振る。
「そういえばスーザンはいないのか?」
どうせなら一緒に行った方がいいだろう。ちなみに性悪金色メッシュの害虫野郎の事は一切考慮しない。
「ノックしたんだけどもういなくて」
「そうだったのか……」
一番にこっちへ来てくれたわけじゃないのか……。子供が親離れした時の親の心境ってこんな感じなんだろうな。まぁ俺の場合引きこもって親離れどころか親依存だったけどな! つまり俺は親を悲しませる事をしなかった世界でも稀に見る親孝行者! なんて口が裂けても言えません。ハイ。
「えっと、ファルク君は……」
「いらん、行くぞ」
ティミーは聞いた割には少しホッとしたように見える。一応の気遣いってやつだな。ザマぁ見ろファルク! 貴様はどうあがいてもティミーの隣には立てないからな!
って何熱くなってるんだ俺は……。まぁいい、会議室は確か隊長室の隣だったな。
溜まった熱を吐き出すべくフッと息を吐くと、集合場所に向かうため足を動かした。
扉の向こうは妙に静かだった。しかもここに来るまで同じ隊の人に会っていない。ここで考えられるのは三つ、早く来すぎたもしくは遅く来すぎた。あと場所を間違えた。この時間で早く来すぎたって事はないだろうし場所もここに違いないはずなので、自ずと遅刻したという考えに至る。
「ねぇアキ……」
ティミーも同じ事を思ったのか不安そうに扉を見つめている。
「は、八時だったよな?」
「わ、私もそう思ってたんだけど……」
現在の時刻は七時五十分、十分前行動する俺意識高EEE! とか思ってたのに。
「あっれー? アキちんとティミーちゃんじゃん。なんでそんなとこで突っ立ってんのー?」
しばらく入るのをはばかられていたところ、能天気にファルクが歩いてきた。一瞬やっぱり遅刻じゃなかったとホッとしかけたが、よくよく考えればファルクの事だ、平気で遅刻しかねないのに安心できるわけがない。
「一応聞くけど、集合時間は何時だったっけ?」
「え、八時っしょ? うっわーアキちんそんなんも覚えられないとか記憶力わっるー! アホウバードー?」
「一応だっての」
いちいちこいつは毒を吐かないと気が済まないらしい。確かアホウバードは鳥系の魔物でその名前の由来は人間と戦う時わざわざ剣の切っ先に突っ込んでいって自殺行為に及んでアホだからとかそういうのだったはずだ。チッ、改めて由来を再認識したら鬱陶しさが増すな!
ファルクの事を睨み付けていると、廊下の突き当りからスーザンが歩いてくるのを発見した。
「あれ、もしかしてスーちゃん部屋にいた?」
ティミーが問う。確か俺の所へ来る前に行ったんだよな。俺の所へ来る前に! いやいや、何をそこまで悲観しているんだ俺は。親離れなんか立派じゃないか。うん。
「いや、少し朝風呂にな」
「そうだったんだね」
風呂か……あそこ広かったし居心地いいんだよな。騎士団は本当に優秀だと思う。
「それはそうと貴様らは何をやっているのだ?」
「今から入るとーころっ」
「貴様になど聞いておらん!」
「スーちゃんひっどー! 貴様らっていったじゃん! いじめだー最低だー!」
「な、貴様、その名を呼んでもいいのはティミーと……」
何故かスーザンはこちらを一瞥する。
え、昨日ファルクが抜かしやがった誤解は解いてロスト・キャニオンでの事もお礼は言ったし……あと何かあったっけ……そういえば確か出会った時に怒らせてたような……もしかしてそれ? てっきりもういいのかなとか思ってたりしたんだけど。
「ま、まぁいい、とにかくその名を呼ぶな汚らわしい」
「そこまで言う!? ねーねーティミーちゃんどう思うー? ひどくなーい?」
なんだこいつ、何いきなりティミーに話振ってるの? すごく困ってるじゃないか! クソッ、俺が一つでも多く魔鉱石を集めていれば賭けは俺が勝ってティミーにそんな大変な思いをさせることは無かったのに! たぶん! 罪滅ぼしもかねて俺が答えてやらねば。
「スーザンの言う通りだファルク。もう少し自分の……」
「アキちんに聞いてないからとりあえず死ねー」
「あ!? てめぇこそどこまで言ってんだ!」
しばらくにらみ合うと、不意に扉の向こうから少しざわめきが聞こえた。しまった、興奮しすぎて声のトーン間違えた。
「もう入っちゃおっかー。おっじゃまっしまーっす!」
物怖じせず扉をあけ放つファルクの姿にはもはや呆れを通り越して感心する。刹那。
「やっぱり新人だ!」
「うおぉ! 初々しい!」
「いいねぇ! 青春だねぇ!」
口々に言葉が飛んできたかと思えば、二十代後半あたりから中年くらいの男たち迫ってきた。え、なに、ここ騎士団? 盗賊団じゃなくて!?
「俺の名前は……」
いろいろな口から自己紹介が飛び交うがいかんせん俺は聖徳太子じゃないので把握できない。
他の皆もまさかの事態に戸惑いを隠せない様子だ。
「まぁ待てよお前ら。新人たちも驚いちまうだろ?」
十数名の男達の後ろから、低く聞き心地の良い声が耳に届く。
「副隊長!」
男たちがそう叫ぶが別に道が開くわけではない。一瞬静まった空気だが、またしても自己紹介が飛び交い騒がしくなる。え、さっきの副隊長コールなんだったの!?
「だからさお前ら……ちょっとは道を開けるなりしたらどうなの? 一応俺副隊長だよ?」
先ほどの声の主と思しき人が男をかき分けて姿を現すと、ようやく周りは少し落ち着いた。
「バリク隊の副隊長ブライデン・クリンゲだ、よろしく。生憎隊長は急に呼び出されて今はいない。そのうち帰ってくるだろうがね」
あごに髭をたたえ、昔も今もさぞかし女をぶいぶい言わせる事だろうと予測されるおじさまだ。髪の毛なんか後ろでまとめてある。
でもバリク隊って事はやっぱりここは騎士団だったのか……。
「副隊長だけずるいっすよ!」
「俺も自己紹介したいっす!」
「まぁ待てよ、ここは副隊長である俺から挨拶するのが筋ってもんだろ? だいたいお前らははしゃぎすぎんなんだよ」
それだけ言うと、野次の方向へ向いていた顔をまたこちらへ戻す。
「しかしすまんね、うちのがうるさくて。この通りうちの隊は他のに比べてちょっとばかりうるさいしあとむさ苦しいが許してやってくれ。唯一の華も今日も今日とて重役出勤だ。いや華にしちゃじゃじゃ馬すぎるか……」
最後の方は独り言に近そうだがたぶんハイリの事だろう、やはり遅刻常習犯らしい。
「ってなわけだが、まぁとりあえずはこいつらの自己紹介でも聞いてやってくれ」
クリンゲさんはそう言いつつ部屋の中へ入るよう促してくれた。
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