悪ゆめ飛び火

北河原 黒観

波長

 晩飯を食べ風呂から上がった俺は、他にする事もなくベットに寝転がり携帯を扱う。
 そしてどこの誰かもわからない奴のネットの書き込みを、ボーと眺めていた。


 ◆ ◆ ◆

『波長が合うと、見えてしまうらしい。
 波長が合うと、聞こえてしまうらしい。
 波長が合うと、引きずりこまれてしまうらしい。

 波長には、良い波長と悪い波長の二つがある。
 そして心は揺れるもの。
 振り子のように揺れ動くもの。
 良い波長の時もあれば、悪い波長の時もある。

 でも気をつけて。
 悪い波長のままでいると、波長がそれと合ったままになってしまうから。

 それは暗がりにいる。
 それは同類を求め彷徨っている。
 出会ってしまっても最初はじっと覗いているだけだけど、気が熟してしまえば、掴まれ引きずられていってしまうから。』

 ◆ ◆ ◆


 馬鹿げている。
 世の中、暇人がいるもんだ。
 どうせこれを書き込んだ奴も、人が怯えるのを想像してニタニタほくそ笑んでるようなクズ野郎なんだろう。

 だいいち世の中悪いことをして、今を楽してる奴ばっかりじゃないか。
 どこのサイトで見たか忘れたが、今世で悪い事をして楽して生きてる人間は、来世ではそれが跳ね返って苦しい人生を送ってしまう、ってあったが、来世があるって事を誰も証明出来ていない。
 だから嘘っぱちだ。

 まぁ〜今世で良いことしてたら、剣と魔法の異世界にチートを引っさげ転生出来る、とかだったら俺は今からでも善人になる努力を猛烈にするのだがな。

 さてと、そろそろ寝るか。
 ……念のため、明かりは付けっぱなしにしておくが。

 それから目を閉じたが、ふと押入れが開いていた事を思い出す。
 見ると僅かに開いた隙間のぶん、暗闇が縦長に出来ていた。

 面倒臭いが、一応、閉めとこう。

 再度横になり目を閉じようとすると、天井のしみのような模様が気になり始める。
 気にせず目を閉じるが、何故か頭から離れない。
 それらは、やがて色を持ち、刻々と形を変え、やがて顔のように変化していく。
 その辺りで無理やり目を開けた。

 くそ、あの変な事を書き込んだ奴の所為で、なんだか眠れないじゃないか。

 そして気がつく。







 押入れが僅かに開いている事に。

 あ、あれ?
 さっき、……閉めた、よな?

 俺は怖くなり頭から布団を被ると、身体をダンゴムシのように縮こまらせる。
 でも、見られているような感覚は一向に消えてくれない。


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