結縁町恋文郵便局
007「仮想ファンレター」
秋晴れの空が広がっていた。
開かれた窓から吹き込む風が心地いい。
結縁町の役場。
長机がコの字型に並べられた会議室には、10人程の男女が集まっている。
「えー、では。次の議題に移りたいと思います」
部屋の前方に置かれたホワイトボードの横に立ち、司会進行をしているのは痩せ型の中年男性。
眼鏡の奥の瞳に覇気はない。
それは彼に限ったことではなく、室内の誰もが一様に【帰りたいオーラ】を纏っていた。
その中に、フミヤの姿もあった。
恋文郵便局の局長であるフミヤ。
一応、町の有力者の1人に数えられているらしい。
そのため、この果てしなく長い割に内容がない【結縁まちおこし会議】への強制参加を強いられていた。
(……ねむい)
司会進行をする男性の声が遠のいて行く。
(……いかんいかん。起きないと)
眠気を吹き飛ばそうと、軽く頭を振った。
それでも睡魔は容赦なく忍び寄る。
遂にフミヤは、意識を手放した。
瞬間。
「……っあっつ!」
痛みにも似た熱さが左腕を襲った。
反射的に立ち上がったフミヤのパイプ椅子が倒れ、その音が会議室に響き渡る。
静まり返る室内。
カーテンが風に揺れている。
「岡本くん、大丈夫?」
隣に座っていた結縁町郵便局の局長・新藤ほなみが、心配そうにフミヤの左手を掴んだ。
「え……?」
「え?じゃなくて。ヤケドしてない?」
状況が掴めていないフミヤだったが、左腕が熱いのは確かだ。
「す……すみません!わ……わたしなんてことを……」
声がしたのはフミヤの視界の、かなり下。
そこには、空のお盆を持って泣きそうになっている小柄な女性の姿があった。
「……野間!またお前か!」
町役場の男性管理職が、その小柄な女性を叱責する。
「お茶汲みもまともに出来ないのか?」
ようやく状況を理解したフミヤ。
どうやら、この女性はフミヤの腕に熱いお茶をこぼしたらしい。
上司からの圧力に耐えられず、小さな体を更に小さくしている彼女が、可哀想になった。
「俺は大丈夫ですから。だから、そんなに怒らないでくださいよ」
それでも、男性は彼女を責め続けた。
執拗なその怒鳴り声に、さすがのフミヤもうんざりする。
「いい加減にしてくださいよ」
穏やかに言い放ちつつ、怒りを滲ませるフミヤ。
一瞬、怯んだように見えた管理職だったが、今度は怒りの矛先をこちらに向けた。
「なんだ、この役立たずが。予算の無駄使いばかりしている穀潰し。お遊びなら辞めて欲しいもんだ」
確かに恋文郵便局は赤字だ。
それは事実だから仕方ない。
しかし。
「俺のことは悪く言ってもいいですけどね。さっきから、あなたが彼女に対して言ってること。完全にセクハラとパワハラですよ」
「なにを……生意気な若造が」
「訴えられて今の地位を失ってもいいなら、どうぞ続けてください」
男が黙り込んだのを確認してから、フミヤは部屋を出た。
途端、左腕の痛みを思い出して廊下に座り込む。
かっこつけている場合ではなかった。
「……とりあえず冷やすか」
近くにあった給湯室。
水道水の冷たさが、痛みを和らげる。
幸い、たいしたことはなさそうだ。
「なにやってんだ俺は……」
あんな言い方をしてしまったら、次から会議に出にくくなる。
いや、もう呼んでもらえないかもしれない。
正直、楽しい会議ではないのだが、仲間はずれも寂しいものだ。
「……あの」
消え入りそうな声。
その、アニメのキャラクターのような愛らしい声の主は、先程フミヤが助けた女性職員だった。
「……腕……大丈夫ですか……?」
どうやらフミヤが心配で、あとをついてきたらしい。
責任を感じているのだろう。
お盆を抱き締める手が震えていた。
「大丈夫大丈夫。たいしたことないから」
歳はカレンとフミヤの間くらいだろうか。
肩で切りそろえられた黒髪に、分厚い黒縁メガネをかけている。
「俺は大丈夫だから。早く仕事に戻った方が……」
言いかけたフミヤだったが、彼女の瞳からこぼれる大粒の涙に気づいて動きを止めた。
女性の涙は苦手だ。
どう対処すべきか分からなくなる。
「えっと……野間……さん?」
その時。
給湯室に向かってくる町役場のベテラン女性職員の姿が見えた。
こんなところを見られたら、何を言われるか分かったものではない。
咄嗟に、泣きじゃくる彼女の腕を掴むと、裏口から外へ飛び出した。
そのまま走り続け、気づけば恋文郵便局の前。
乱れた呼吸を調えながら振り向けば、見慣れない少女が居た。
「……あれ?」
確かに、フミヤは地味で真面目そうな黒縁メガネの女性職員を連れてきたはずなのだが……。
今、目の前に居るのはカレンと並び立つのではないかという美少女。
しかし。
「ここ……どこですか……?」
その声は、聞き慣れたアニメ声。
目を細めて周囲を見回している。
人違いではない。
その地味な女性職員が、走っている最中にメガネを落としてしまったのだ。
「すみません……私、すごく目が悪くて……何も見えなくて……」
手探り状態で歩き出そうとするが、案の定すぐにつまづいた。
「おい、あぶな……」
「あ、先輩。おかえりなさ……」
これ以上ないという最悪のタイミングで、カレンが扉を開けた。
カレンの目に映ったのは、少女を抱き締めるフミヤの姿。
空気が凍りつく音が聞こえた。
「あ……桐崎……これは……」
「お邪魔しました」
閉まる郵便局の扉。
ご丁寧に鍵の閉まる音もした。
完全に誤解をされた。
いや、別に誤解をされてもいいのだが。
軽蔑される方が厄介だ。
(……どうするよ)
「僕以外の子と抱擁?」
「うわぁっ!」
今度はいつの間にか、目の前にユイが居た。
「妬けるなぁ」
「ユイ……これは」
「分かってるよ。アクシデント、でしょ?」
理解のあるユイに、安堵するが。
「だったら、いつまで抱き合ってるの?」
「……え」
「浮気者はキライだな」
その紅い瞳は笑っていない。
口調は軽いが、かなり怒っている。
「今日は帰って来なくていいから」
古女房のような捨て台詞を残し、ユイは姿を消した。
行き場を失ったフミヤ。
腕の中の少女を見ると、抵抗することもなくすっぽりと収まっている。
その肩は、微かに震えていた。
「……泣いてるのか?」
「……っすみません……わたし……あの……」
そこから先は、涙で言葉にならなかった。
仕方ない。
フミヤは諦めて、彼女が泣き止むのを待つ。
それは5分にも1時間にも感じられた。
通りかかる町民が居なかったのが唯一の救いだった。
日が傾く。
ようやく落ち着いてきたのか、少女はうつむいたままフミヤの胸を押した。
「大丈夫か?」
「……はい……すみませんでした……」
「いや、こっちこそ。こんなとこまで連れてきて、悪かった」
「こんな……とこ?」
そうだ。
彼女は目が悪い。
「恋文郵便局。俺の職場だ」
「あ……話には聞いたことがあります」
町の職員にも、恋文郵便局はその程度しか認識されていないらしい。
ちょっと凹む。
「えと……岡本さん」
「ん?」
「お願いが……あります……」
夕暮れの道。
長く伸びる影。
それは不自然な形をしていた。
「すみません……岡本さん……重いですよね」
「いや、大丈夫」
フミヤの背中には、少女……野間ほのか(ホノカ)が居た。
目が悪くて歩くことも出来ないホノカ。
フミヤはそんな彼女を背負い、しっかりした足取りで歩いていた。
向かっているのはホノカの自宅。
とりあえず、換えのメガネを取りに行きたいという彼女の要望に応えるためだ。
「住所からすると、この辺りだけど……」
目が悪すぎて道案内すら出来ないホノカから、フミヤは住所を聞いていた。
そこは郵便局員。
町の地理には自信がある。
「えと……白い外壁のアパートで……そこの2階の一番奥です……」
「了解」
ホノカを背負ったまま、フミヤはアパートの階段を上る。
そして、目当ての部屋の前まで来た。
「鍵、俺が開けるから」
「……」
ホノカの沈黙。
嫌な予感がする。
「鍵……無いのか?」
「すみません……」
役場から何も持たずに飛び出して来たのだ。
仕方ない。
再び、行き場を失った2人。
仕方ないので、町役場に向かって歩き出す。
ホノカは小柄で細身なのだが、大人の女性だ。
背負って歩くことに、フミヤは疲れ始める。
そして、容赦なく背中に押しつけられる柔らかさ。
意識してはいけないと思えば思うほど、気になって仕方ない。
(……落ち着け俺)
そうだ。カレンを背負っていると思えばいい。
それならば、憎たらしいだけだ。
(……いやでも。桐崎はこんなに胸が無い……)
かなり失礼な話だが、事実だから仕方ない。
黙り込んで歩くフミヤに、ホノカは不安を覚えていた。
(……岡本さん……怒ってる……?そうだよね……わたし、迷惑かけてばかりだし……)
また泣きたくなって来た。
ホノカは昔から、周囲に『ドジっ娘』と呼ばれていた。
一生懸命になればなるほど、結果が伴わない。
呆れられて諦められて。
ようやく入った町役場でも、邪魔者扱い。
役場の仕事を任せて貰えず、お茶汲みも満足にこなせない。
(……わたし……生きてる価値ない……)
(……俺……最低だな……)
それぞれに落ち込みながら、無言の時が過ぎた。
「……フミヤ?」
呼ばれて顔を上げれば、見知った青年がスーツ姿で立っている。
「……マヒロ?」
すると青年は、その整った顔に満面の笑みを浮かべた。
「おぉ!やっぱりフミヤか!久しぶり!」
それは、フミヤの学生時代の悪友・坂口真宙マヒロだった。
容姿端麗だが気取ったところがなく、異性だけだはなく同性からも好かれる好青年だ。
「久しぶりだな!……ってオマエ、何でココに?」
「シゴトだよシゴト」
「仕事って確か……隣の八久万市はちくましの職員だったよな」
「そそ。今は、市長秘書してる」
「市長秘書……すごいな」
「秘書って言っても雑用係みたいなもんだけど。で。フミヤは何してんの?」
「俺は、恋文郵便局の局長を……」
「それは知ってる。何で、郵便局の局長さんが、女の子背負って歩いてるのかってハナシ」
「あ……これは……」
フミヤはマヒロに、事の成り行きを簡単に説明した。
その間も、ホノカはフミヤの首に手を回してしがみついたままだった。
「なるほど。で。オマエもこの子も家に帰れないわけか」
「役場が開いてれば、とりあえずこの子は帰れる」
「あー、役場ね。さっき市長と寄ったけど、もう閉まってたかも」
「マジか……」
一気に疲れが出た。
落胆するフミヤの耳元で、小さな声がする。
「岡本さん……わたし……もう自分で歩きます……」
「歩くって、その目じゃ無理だろ」
「大丈夫……です……」
「ちょっと待っててくれ。何かいい方法を考えるから」
「……降ろしてください!」
突然、暴れ出したホノカを、フミヤは支えきれない。
崩れ落ちそうになるフミヤとホノカ。
それを、マヒロは容易く抱きとめた。
「……悪い、マヒロ」
「いいっていいって」
フミヤを立ち直らせると、マヒロはホノカに視線を移す。
「……あれ?キミ、どっかで……」
「おいおい。古典的なナンパだなマヒロ」
「いや、ナンパならもっと気の利いたこと言うけど。あ、そうだ。ユイちゃんだ」
突然、友人の口から出たユイの名前にフミヤはビクリとする。
しかし冷静になれば、マヒロがユイを知っているわけがない。
「……誰だソレ。この子の名前は、野間ほのかだって言ったよな。人違いだろ」
「いや、間違いない。その声は、ユイちゃんの声だ」
「……声?」
「フミヤ、知らないの?この結縁町の非公認ご当地キャラのユイちゃん」
「……そんなの居たのか」
「動画サイトで見たことあってさ。キミがユイちゃんなの?」
無邪気に問うマヒロだったが、問われたホノカの表情が歪む。
「ちがい……ます……」
「あれ。人違いかなー。俺、人の顔と声を覚えるの得意なんだけど」
「本人が違うって言ってるんだから違うんだろ」
「いや、でも。背格好も似てるんだよなー」
「しつこいぞマヒロ」
「俺、Twitterでユイちゃんと話したことあるんだけど。けっこう前からファンでさ。Twitterでは【ソラ】って言うんだけど……」
それを聞いたホノカの顔は、明らかに青ざめた。
そして次は、みるみる赤くなる。
この野間ほのかという町職員と、ユイちゃんというご当地キャラに繋がりがあるのは間違いなさそうだ。
「ソラ……さん……」
「心当たりあるのか?」
フミヤの問いに、ホノカは首を思いきり横に振る。
その壊れんばかりの否定が、逆に怪しい。
「言いたくないなら言わなくてもいい」
そう言うと、ホノカは突然フミヤの腕を掴んだ。
引っ張られて倒れそうになるフミヤの耳元で、愛らしい声が囁く。
「……みんなには秘密にしてください」
「……何を?」
「だから……私がユイってこと……」
「……マヒロにも?」
「……はい」
女の子の頼みごとを無下に断れるフミヤではない。
「マヒロ」
「なに?」
「彼女が、『人違いとかマジキモい』って」
言い放つフミヤを、慌てたホノカが引っ張る。
「……わたし、そんなこと言ってないです!」
「だけど、マヒロに正体を知られたくないんだろ?」
「そう……ですけど……」
「好きなのか?マヒロが」
「!」
頭から立ち上る湯気が見えそうなくらい、ホノカの頬が赤くなる。
分かりやすい肯定だ。
「それなら、自分がユイだって正直に言えばいいだろ。マヒロはユイのファンらしいし」
「……ダメです」
「なんで」
「だって……本当のわたしは……こんなだし……きっと……嫌われる……」
複雑な乙女心。
正直、フミヤには理解が出来なかった。
「ホノカは可愛いし、一生懸命だろ」
「え……」
「マヒロはいい奴だ。オマエを嫌ったりしない」
「岡本さん……」
腕を掴むホノカの手を、フミヤは優しく解いた。
「マヒロ、ちょっと来い」
「なに。内緒話は終わったの?」
「あとは任せた」
「え?」
「泣かせるなよ」
戸惑う2人を残し、フミヤは走り出す。
行く宛ては無かったが、足は自然と郵便局に向いていた。
「……なんだ、フミヤのヤツ。変なの」
フミヤが消えた方を見ていた2人だったが。
「……あの……ソラ……さん」
「ん?なに」
「わたし……その……」
「言わなくてもいいよ」
「でも……」
苦しそうなホノカの唇に、マヒロは人差し指を押し当てた。
「ヒーローは、自分の正体を明かしたらダメだから」
「え……」
「ユイちゃんは、俺のヒーローなんだ」
仕事に行き詰まって、落ち込んでいたマヒロが、何となく見ていた動画にユイが居た。
真っ白な髪に紅い瞳。
整った顔立ち。
小柄だが、均整のとれた身体。
何より、生き生きと歌い踊る姿に勇気を貰った。
「……っわたしは!」
最初は、フォロワーの1人に過ぎなかったソラ。
しかし、会話を重ねるごとに惹かれていった。
顔も本名も知らない。
画面の向こうのマヒロに、想いを募らせた。
「手紙、書くよ」
「……てがみ?」
首を傾げるホノカ。
その頬に、マヒロが触れる。
「俺からユイちゃんへのファンレター」
その言葉に、ホノカの表情が綻んだ。
マヒロの大きな手に、そっと自分の手を重ねる。
「……ユイちゃん……きっと喜びますよ」
夕暮れが、古びた窓ガラスを染める。
外を眺めていたカレンの目に、駆けてくる長い影が映った。
細い指が、扉の鍵を開ける。
恐る恐るドアノブを回したフミヤ。
そこに抵抗は無かった。
「……開いてる」
「おかえりなさい。早かったですね」
ぶっきらぼうな物言いは、いつものカレンだ。
「ただいま、桐崎。仕事任せて悪かったな」
「大丈夫です。いつも通り暇でしたから」
「そうか……」
「どこに捨ててきたんですか」
「……なにを?」
「さっきの女の子」
「……捨ててはいない」
「先輩のことですから、きっとまたお節介したんでしょ」
「……まあな」
とりあえず、郵便局には戻れたが。
ユイの怒りが収まるまで、家には帰れない。
仕事を終えたフミヤは、仕方なく町をブラつくことにした。
もう開いている店も少ない。
たまに入る焼き鳥屋の暖簾をくぐる。
「いらっしゃい!お、局長さん!」
若い店主が笑顔でフミヤを迎え入れた。
「局長さんは止めてくれ……」
「はいはい。フミヤさん。ご注文は?」
「とりあえず、ウーロン茶」
「飲まないんですか?」
「明日も仕事だからな」
「まっじめー」
軽口を叩きながら、店主は慣れた手つきで注文をさばく。
「……となり、いいですか?」
混み合う店のカウンター。
フミヤに声をかけたのは、若い女性だった。
「あ、どうぞ」
気にもとめず、マイペースに飲み食いする。
が。
「……っあっつ!」
本日二度目の災難がフミヤの左手を襲った。
「ご……ごめんなさい!」
隣に座っていた若い女性が、誤って湯呑みを倒したらしい。
「大丈夫ですか?……すみません」
おしぼりでフミヤの腕を拭う女性。
この辺りでは見かけない顔だ。
スラリとしたモデル体型。
しっかりしたメイク。
田舎町の焼き鳥屋。
いつも顔ぶれは決まっている。
「どうしよう……」
「大丈夫ですよ。慣れてるんで」
焦る女性を安心させようと、フミヤは微笑んでみせた。
「ダメです!とりあえず冷やさないと。こっちへ!」
半ば強引に、フミヤは狭い手洗いへと連れていかれる。
女性はフミヤの腕をしっかり掴み、洗面台で冷やし始めた。
「もう大丈夫だから。ありがとう」
女性を店内へ戻そうと、その華奢な手を振り払うが。
「責任……」
「え?」
「責任、取りますから」
拒む間もなく。
フミヤの首に細い腕が絡む。
鼻の奥に広がる甘い香り。
唇に触れる柔らかな……。
「っやめろ!」
反射的に顔を背け、女性を突き飛ばす。
相手は女性だ。
壁に背中をぶつけて、床に座り込んだ。
「あ……大丈夫か?」
「責任……」
「え?」
「責任……取ってください」
無茶苦茶なことを言い出す彼女に、フミヤは困惑した。
「責任って……」
再び、女性の腕がフミヤを抱き寄せる。
「女に言わせるの?」
「あ……いや、ちょっと待て」
「待てない」
「悪ふざけが過ぎる……酔ってるのか?」
「飲んでない。まだ未成年だし」
「余計にタチが悪い!」
必死に逃れようとするフミヤ。
女性は不満を露わにする。
「もしかして、女に興味ないの?」
「そうじゃない」
「じゃあ。好きな人が居るの?」
「それは……」
「桐崎華恋とか」
綺麗に口紅が塗られた唇から聞いた、カレンの名前。
「オマエ……桐崎を知ってるのか?」
返事の代わりに、彼女は妖艶に微笑んだ。
【つづく】
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