銀河を、この手のひらに。

巫夏希

断章

 都市伝説は時代を変えても存在する。
 例えばこの世界にはロボットしか住んでいないはずなのに、ロボットに姿を変えて生きる人間がいるというのだ。
 もし、そんな人間が居るというのならば、どうして彼らはロボットに姿を変えているのだろうか?


 ――やはり、この世界を人間のものに戻そうとしているのだろうか?


 ――やはり、この世界は人間が管理人であるべきなのだろうか?


 人間がこの世界を管理していたのは、ロボットが管理しているのとは別の意味なのだろうか?
 ロボットは人間が完成させたこの惑星の文明を使って、この惑星で生きている。
 即ち、ロボットは人間の力を借りて生きているということだ。
 即ち、あそこにいるロボットも、ここにいるロボットも、みんな人間である可能性があるということなのだ。
 人間がロボットに成り済ましていて、再び人間の世界へ戻ることを願っている。
 だが、その都市伝説は案外真実を突いているのかもしれない。
 『国家』がその都市伝説について箝口令を敷いたためだ。
 しかし、ロボットの口に戸は立てられない。
 戸を立てられないから、ロボットはその噂を口々にする。

「人間がロボットに成り済ましているんだって」

 そのフレーズはロボットに衝撃を与えた。
 そうしてそうしてそうしてそうして――。






 いつしか『国家』はその噂を闇に葬り去った。にもかかわらず、ロボットたちはその噂を影で語っていった。
 だから、その噂は『国家』が気付かないうちに、世間のほとんどが知る噂となっていた。

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