銀河を、この手のひらに。
第5話
3
私は行動を開始した。今はスロウスとレンとは別れて、私一人で行動している。救援は心強いが、悲しきかな、単独行動の方が逃げるのには楽だ。こちらは戦力を分散させ、戦いづらくなってしまうが、その反応はあちらも同じのはずだ。
とにかく今は私が提案した無理難題を否定もせずに黙って頷いてくれたあの二人に感謝しなくてはならない。感謝も何も、私がこの牢獄から脱出しない限り、それも無駄になってしまうのだが。
「……出口は、どこだ……!」
必死に必死に必死に、駆け出す。思考が行動に追い付かない。私は今、彼女のために行動しているのだ。彼女は目が見えず、星空が見えなかった。だからこの惑星の――綺麗な星空を見せてやりたかったのだ。
『――あのロボット野郎、何処に行きやがった!』
不意に声が聞こえて、私は物陰に隠れた。その刹那、私が向かおうとしていた方角から一体のロボットがズシンズシンと大きな足音を立ててゆっくりと向かってきた。
そのロボットは私の何倍も大きかった。私の身体はどちらかといえば流線型で、彼女のように滑らかなフォルムをしていた。現代科学が成し遂げた、最新鋭のロボットだ。しかしそのロボットはゴツゴツとしていた。強引に付けられたかどうかは知らないが、腕を大きく見せるために、本来の腕に幾重もの拡張パーツを組み込んでいる。それでは逆に、腕があまりにも重すぎて充分に動くことが出来ないのではないか? ……そういう可能性すら浮上する。
ともかく、外形を見た限りでは、そのロボットは素早く動くことが出来ない――そう確信するのも、無理はない。
「……大方護衛ロボットといったところだが、しかし実際はそうでもないだろうな。私のような最新鋭のロボットを相手にすることもそう少なくないはずだ。ということはそのパターンは染み付いているはず」
だからといって、ここで立ち止まってはならない。
だからといって、ここで諦めてはならない。
まだ進める。
まだ戦える。
まだ彼女のために――ここで倒れてはならなかった。
そして、私は。
一歩を踏み出した。
それは、ほかの人から見れば小さな一歩かもしれない。
それでも。
私にとって、それは大きな一歩だった。
△
「なあ、スロウス。あれでいいのか?」
「あれでいいのよ」
私とレンは彼と別れて、牢獄をひたすら走っていた。
向かう場所は、彼の計画通り。
私たちはその計画に従うほかない。
私たちは彼の言う「銀河を、この手のひらに」という言葉を信じるしかなかった。
どうして、そこまで信じ込めるのか――って?
それは愚問だ。おかしな話だ。
信じられるから、信じているのだ。
ただ、それだけのこと。
それだけなのに……どうして勘繰ったりするのかな?
「……だってあんだけロボット見知りだったスロウスが、あそこまで肩入れできるロボットが居たなんて知らなかったからね」
レンはそう言った。
たしかにそうかもしれない。私はロボット見知りだ。
彼にどうしてそこまで肩入れするのか――もしかしたら、彼にはそれほどの魅力があるのかもしれないが――今はそれを考える必要もない。
私は行動を開始した。今はスロウスとレンとは別れて、私一人で行動している。救援は心強いが、悲しきかな、単独行動の方が逃げるのには楽だ。こちらは戦力を分散させ、戦いづらくなってしまうが、その反応はあちらも同じのはずだ。
とにかく今は私が提案した無理難題を否定もせずに黙って頷いてくれたあの二人に感謝しなくてはならない。感謝も何も、私がこの牢獄から脱出しない限り、それも無駄になってしまうのだが。
「……出口は、どこだ……!」
必死に必死に必死に、駆け出す。思考が行動に追い付かない。私は今、彼女のために行動しているのだ。彼女は目が見えず、星空が見えなかった。だからこの惑星の――綺麗な星空を見せてやりたかったのだ。
『――あのロボット野郎、何処に行きやがった!』
不意に声が聞こえて、私は物陰に隠れた。その刹那、私が向かおうとしていた方角から一体のロボットがズシンズシンと大きな足音を立ててゆっくりと向かってきた。
そのロボットは私の何倍も大きかった。私の身体はどちらかといえば流線型で、彼女のように滑らかなフォルムをしていた。現代科学が成し遂げた、最新鋭のロボットだ。しかしそのロボットはゴツゴツとしていた。強引に付けられたかどうかは知らないが、腕を大きく見せるために、本来の腕に幾重もの拡張パーツを組み込んでいる。それでは逆に、腕があまりにも重すぎて充分に動くことが出来ないのではないか? ……そういう可能性すら浮上する。
ともかく、外形を見た限りでは、そのロボットは素早く動くことが出来ない――そう確信するのも、無理はない。
「……大方護衛ロボットといったところだが、しかし実際はそうでもないだろうな。私のような最新鋭のロボットを相手にすることもそう少なくないはずだ。ということはそのパターンは染み付いているはず」
だからといって、ここで立ち止まってはならない。
だからといって、ここで諦めてはならない。
まだ進める。
まだ戦える。
まだ彼女のために――ここで倒れてはならなかった。
そして、私は。
一歩を踏み出した。
それは、ほかの人から見れば小さな一歩かもしれない。
それでも。
私にとって、それは大きな一歩だった。
△
「なあ、スロウス。あれでいいのか?」
「あれでいいのよ」
私とレンは彼と別れて、牢獄をひたすら走っていた。
向かう場所は、彼の計画通り。
私たちはその計画に従うほかない。
私たちは彼の言う「銀河を、この手のひらに」という言葉を信じるしかなかった。
どうして、そこまで信じ込めるのか――って?
それは愚問だ。おかしな話だ。
信じられるから、信じているのだ。
ただ、それだけのこと。
それだけなのに……どうして勘繰ったりするのかな?
「……だってあんだけロボット見知りだったスロウスが、あそこまで肩入れできるロボットが居たなんて知らなかったからね」
レンはそう言った。
たしかにそうかもしれない。私はロボット見知りだ。
彼にどうしてそこまで肩入れするのか――もしかしたら、彼にはそれほどの魅力があるのかもしれないが――今はそれを考える必要もない。
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