銀河を、この手のひらに。

巫夏希

プロローグ

 夜空はとても綺麗だ。
 星の一つ一つが煌めいて、宝石箱のような輝きを放つ。
 彼女にまた、この光景を見せてあげたかった。
 彼女にまた、会いたかった。話をしたかった。笑い合いたかった。
 そして――自分が何者なのか、打ち明けたかった。
 牢屋の中で私は考える。どうすれば彼女を救えたのか。どうすれば彼女を、同じ人間たちがいる惑星に送ってやることが出来たのか。
 ああ、銀河の煌めきは美しい。
 だが、夜の明かりを支配しているのは、ほかでもない、高層ビルなどから発せられるネオン群だ。
 今日も美しい夜空は見えない。
 今日も美しい夜空はネオンに遮られる。
 よく私は彼女に言っていた。


 ――もしも君に、輝く星空を見せられればいいのに。


 彼女は笑っていた。

「私の目が見えないことを、そんなにも気にしているのね。だけど、いいの。私は目が見えないけれど、それでも幸せ」

 うそだ。
 彼女は人間が居なくなった星で一人、ずっと人間の帰りを待っていたのだ。
 そして彼女は私を、人間と思い込んでいた。
 それは私が持つ、裁かれるべき罪だ。
 そしてその罰を受けている……そう考えれば道理だ。
 しかし。
 しかしながら、私は思った。彼女はどうなるんだ、ということに。
 彼女は同じ人間に会う前に死んだ。
 私と同じロボットに惨殺された。

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