手紙をあなたに……(ゾンビ世界で)

鬼怒川 ますず

ゾンビのいる国

ゾンビゲームがリアルに起こると何が起こるか。

それはパニックと誰1人として信用できない状況が起こる。
一説によれば、国の手引書にはゾンビに対抗する為のマニュアルが載っていると言われていた。

真偽は不明だが、それほどまでにゾンビという存在が本当にいたらどれだけ恐ろしいかということが分かる。
無論私はこんな話を信じない。

あの日が起きるまで。

私の国の近くでははまだ帝国を名乗る国があった。
その国が行う政策は非人道的であり、その思想や倫理観には国際社会から批判を受けていた。


だが帝国はそれらを全て無視し、非人道を貫き続けた。
隣国は侵略を受け、多くの民が亡くなった。


痺れを切らした世界各国はついに腰を上げた。
起きたのは戦争。悪を討つ名目の戦いだ。

しかし幸いにも大規模な戦争になはならず、交渉における最終手段はたったの2ヶ月で終わりを告げた。
皇帝は処刑され、世界から帝国が消えた。

……はずだった。

平和を取り戻した近隣諸国。
しかし、帝国の危険思想に心酔した残党たちがある生物兵器を使い始め、近隣諸国はたちまち地獄と化した。

そう、生物兵器は人間を殺しその身体をただの動く死体にして増やす。

いわゆるゾンビと呼ばれるものだった。

生物兵器は世界中で同時刻に一斉に散布され、それは人が多い首都や電車などがメインであった。

吸った人間はたちまち生き絶え、ゾンビとなって復活すると生きている人間に襲いかかる。噛まれたら感染し、直ぐに死亡しまた復活すれば人間に襲いかかる。

数が増えるのはあっという間だった。

軍隊が一層すれば良いだろうと思うが、私がいた国の軍事基地の殆どは既に生物兵器が散布されて機能不全であった。
警察署も然り、もちろん空港もそうだ。
町中、いや世界中で同じようなことが起こり始める。

幸いにも私はただの大学生で、この日は自宅でゆっくりと寛いでいた。
本を読み、自身の進路について考えていたと思う。

外の騒動に気付いたのは家の周りから悲鳴が聞こえ始めた頃だったか、2階の窓から見下ろすと人が人を喰らう場面。

私は悲鳴を上げそうになるが、昔見た映画を思い出すと直ぐにテレビをつけて確認する。
だがテレビはどれも休止中の表示ばかりで、聞こえる音声はゾンビの唸り声ばかりだ。

ただ事じゃないことが分かった。
そう思って愕然としている間にも世界は悲鳴で包まれていく。
私の人生は変わった。


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