ブレイブ!

桃楓

12

 昨日の騒ぎは、すぐに学校中に知れ渡った。
  テルとシュウは、実践ルームの事を事細かに聞かれ、結局保護室に帰って来たのは、7時過ぎだった。朝、学校に着くとみんなその話一色だった。
「さすがだね!みんな、テルに助けられたって喜んでたよ!」クラスの女の子達がテルの周りに集まっていた。
「私も助けて欲しかったなぁ〜。サボらず、実践ルーム行けばよかったぁ
」アヤナがまた絡みついている。
「アヤナが襲われてたら、面倒だから助けねーよ。」笑いながらテルが言った。
「モテモテだな。どうするんだ?」周りの男がテルをあおっている。
(多分本当に、助けないだろうな。)声を聞いたら、すぐにわかる。
「えー、シュウは助けたのに。酷くない?シュウなんて、自分で自分の身を守れる位強いのに!」アヤナは、少し離れた席にいるシュウに聞こえる位大きな声で言った。
「うるさいわよ。アヤナ。シュウを巻き込まないで。大体、シュウが助けて何て言うはずないでしょ?」アスカが睨み返しながら言った。
「テルが変な事いうからじゃん。」ユリアがテルを睨むが、まったく聞いてないようだ。肝心なシュウも、机に向かって、何か考え込んでいる。
「シュウ大丈夫?」もしかして、怒ってる?ユリアが恐る恐る顔を覗き込むとシュウはハッと顔を上げた。
「ごめん!昨日の事で、何か気づいた事あったらレポートにまとめてって、イリーナ教官から頼まれたの。それで、思い返してたんだけど、あの時はそんな余裕無くて…。」下唇に、ペンを当てながら考えている。「集中すると、周りの雑音とか耳に入らないタイプだから。」アスカが、シュウの頭を撫でながらユリアにいった。
「ごめんね?ユリア何か話してた?」
「ううん、なんでもない!それより、大変だね?大体、シュウは回復とかテルが倒し損ねたモンスターの処理とかで変わった事に気づく暇なんて、なかったよね?」
「みんなに比べたら、私は全体を見ながら戦わないといけないから…。イリーナ教官は私に言ったんだと思う。それに、テルくんやユリアは初めて使うんだから、変なとこなんて分からないよ。」シュウはまた机に向かって考えこんでしまった。
「イリーナ教官、シュウだけにそんな事たのんでたのか?」テルがいつの間にか話に入ってきた。驚くアスカとユリアを尻目に、シュウの前の席の椅子を引いた。
「ユリア、お前足引っ張ったんだから、お前が考えろ。」座った瞬間にこれだ。遠くから、アヤナが睨んでいる。シュウに相手にされなかったのと、テルがいってしまったのとで、頭にきているらしい。鈍いユリアでも分かった。
  テルは、何を考えているのか、全く分からない。アヤナ達が面倒だから、遠ざける理由としてシュウに近づいているのか、それとも本気で好きなのか。シュウは今のところ友達として接しているし、多分好きでも嫌いでもない…。
(もし面倒で近づいてるなら、シュウを巻き込まないで欲しい…)ユリアが考えていると、テルに頭を叩かれた。
「いたっ!何で?」結構強めだったので、大きな声がでてしまった。
「変わったところ考えろって言ってるんだよ!」
「そんな事言われても…。」考え込んでから、少し気になった事があった事を思い出した。
「そういえば…音がしてた。すごい高い音…。人間の聞こえる音じゃなかったから、いつも流れてるのかなって…」そこまで話してハッとした。テルがめちゃくちゃ睨んでる…。
「え、そんな音聞こえなかった。てか、なんで人間に聞こえない音がユリアに聞こえたの??」アスカが不思議そうに問いかけた。
「俺も聞こえた。気のせいかと思っていたけど、ユリアも聞こえてたんだな。」いつの間にかとなりにレイが来てユリアに同調した。
(ありがとう、レイ)
「そうなんだ、一応レポートに書いておくね。後から先生から話を聞かれるかも…。詳しく教えてもらっていい?」シュウはユリアとレイに確認を取りながらレポートを進めた。
「ああ、俺が騒ぎに、気づいて駆けつけた時、実践室入り口付近の連絡用スピーカーから音がしてた」レイはシュウの質問に淡々と答えている。
「そうそう!スピーカーから流れてたから、私も普段からなのかな?って思ったの。でも、よく考えたら、実践室に入った時には流れてなかった…」
(確かあの音は…)ユリアはハッとした。
「そうだ、あの音は、ドラゴンが現れた時に流れ出したんだ…。いつの間にか止まってたけど…。救護室に向かってる時には流れてなかった気がする」
「…その音にモンスターが反応したってこと?」
シュウがレポートに目を落としながら考え込んだ。
「でも、音に反応して、モンスターが集まるとかありえるの?匂いとかならわかるけど…」アスカも考えこんだ。
「ありえるだろ?人間だって声で呼ぶだろ?モンスターも、理性はないが、会話はするはず。研究はされてないけどな。」テルも、ユリアの意見に同調した。
「そうだね…。イリーナ先生に報告してみるよ」シュウはそう言うと、レポートに今の話をまとめ始めた。
 それと同時に、チャイムが鳴り出した。みんなが、席に帰って行く。そんな中、ユリアはレイの手を取った。
「さっきの話…」ずっと不思議だった。ユリアはセイレーンだから、聞こえていたと思っていたけど、レイはユリアが話してないことも知っていた。ユリアが言おうとしていることが分かったのか、レイが言葉を遮った。
「悪魔化した時も、身体が言う事を聞かないだけで、意識はあるんだ。その時に高い音が聞こえた。モンスターに近くなるからかもな。本能的に、その音に反応したんだ」レイはユリアの肩をポンと叩いて席に着いた。
(そう言う事か!)難しい事はいまいちよくわからなかったけど、レイにも聞こえていた事はわかった。多分悪魔の人格の話と関係があるのだろう、ら
ユリアも席に着こうとすると、教室の扉が開き、イリーナ教官が入って来た。
「みんな、昨日は大変だったわね。でも、それとこれとは別だから。実技の試験は予定通りやるわよ。」
全員からブーイングが起きた。
「着替えて、実践ルームに行きなさい

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