ブレイブ!

桃楓

6

「レポート終わりっ!」ユリアは、鉛筆を置いて伸びをした。3人とも、終わっていたが、ユリアが終わるのを待っていた。
「ユリア、どっかよってく?後でシュウと合流する事にしてさっ!この辺来たばっかりでしょ?アイスすっごい美味しい店があるの案内するよ!」スマホを取り出し、シュウに何か送っている。
「うん!いいね!レイさんも行く?」
「俺はいい。」一言呟いて、カバンを持った。
「じゃあ、また明日ねっ!」ユリアがニコッと笑って手をふる。レイは小さく「ああ」と呟くと教室を出た。
「相変わらずねー。テルはどうする?」
アスカが聞くと、テルも悪いっと顔の前で手を合わせた。
「授業終わったあと、さっきの件の説明に来いって、イリーナに言われた。」
「…いつの間に?転校当日から?」ユリアがため息をついた。
「さっき、授業が始まる前に。」
「残念ね。ユリア行こうか♫じゃあね!テルまた明日〜!」アスカはヒラヒラと手を振った。ユリアもアスカの後について、教室を出た。
            *                  *                   *
  イリーナ教官から呼び出され、テルは事情を話に職員室に行った。怒っているかと思いきや、イリーナは笑っていた。
「まさか、転校初日で問題起こすとは思わなかったわ。まあ、事情は何と無く分かったけど。」
「それ、さっきユリアにも言われました。次はシュウを巻き込まない様に、ケンカをかいます」テルは、べっと舌を出した。
「あははっ、無理無理。シュウはあんな顔して、正義感強いから。目の前でケンカになると身体を張って止めに来るわよ?いい?あんな奴は気にしない事。分かったわね?」教官は優しく諭すと、テルを職員室から出した。失礼しました、と一礼して教室を後にした。職員室を出て教室に戻る途中、実戦室を通ると、実戦室内の救護室でシュウがまだ1人で片付けをしていた。
「お疲れ。」テルが後ろから声をかけると、シュウは驚いて振り向いた。
「ビックリしたぁっ!お疲れ様。」シュウがニッコリ笑う。
「ひとりで片付け?押し付けられた?」シュウは首を振った。
「みんな、回復術の使い過ぎで疲れて動けないの。本当の救護室で休んでるよ。約60人を5人で見てたから。」
「でも、重傷はシュウが引き受けてただろ?しかも、傷を負わなかった奴もいただろ?」
「テルさんと、レイ君とユリア位だよ。ほとんどが重傷で、軽い傷の人も数人位。今回のモンスターはそれ程、難しかったんじゃないかな?途中でギブアップした人もいたよ。」シュウはシーツや包帯を片付けながら言った。テルも横からそれを手伝う。シュウだって、疲れてるだろ?そう言っても、またニッコリ笑って『大丈夫』と言う気がして、その言葉をのみこんだ。
「ありがとう。手伝って貰って…。何か、また助けて貰っちゃったね。」綺麗になった救護室を後にしながら、シュウが言った。
「別に助けて無いって。あ、ブレザーだけど、弁償とかいいからなっ?大体、あれは悪いのは俺だし。さっきもイリーナに呼び出しくらったし…。転校初日で早速目をつけられるとか、凄いな俺。」テルがおどけるとシュウが笑った。笑顔が凄く可愛いくて、あどけない。さっきまで、大声を張り上げて、誰より動いていた人物と同じと思えない。
「じゃあ、洗って返すね。でも何かお礼させて。今手伝って貰った分!あ、今からアスカ達とアイス食べに行くけど、一緒に来ない?私に奢らせて。」
さっき、断った手前もあるし、ユリアと寄り道とか…家でも、一緒なのに。そう考えていると、シュウが不安そうな顔で覗き込んだ。
「安くすませすぎかな?」
「全然!ぢゃあ、奢ってもらおうかな」
それを、聞いてシュウが微笑む。
「良かった!じゃあ、教室で待ってて!すぐ着替えて来るね!」そう言って更衣室に走って行った。テルはその姿を見送り、教室に入った。教室には、アヤナ達が待ち伏せていて、テルを見つけると手を引いた。
「ねぇ、いまからみんなでプリ撮りに行こうかって話してるんだけど、一緒に行こうよ‼︎」
「ごめん!無理だわ。今からユリア達と出かけるから。また今度な」アヤナは何か言いたそうだったが、分かった。と言うと、拗ねた様子で取り巻きを連れて、出て行った。それと入れ替わりでシュウが教室に入って来た。急いで来たからか、息が上がっている。
「ごめんね。待った?」
「全然。ぢゃ、行くか。」うん、とシュウがうなづいた。
***
   ユリアとアスカはアイスショップで話し込んでいた。
「凄い美味しい〜!アスカちゃん、ありがとう。」
「でしょ?シュウとよく来るの。」アスカはスプーンをヒラヒラさせて言った。
「シュウももうすぐ着くって言ってるんだけど、結局テルも一緒に来るみたい。」アスカはスマホを見ながら言った。ユリアは思わずむせてしまった。
「何でっ⁉︎てか、シュウとなんで一緒に来るの⁈」
「んー、私に聞かれても分からないけど、シュウに一目惚れしたとか?」アスカが笑った。
「今日一日だから、何も分からないかもしれないけど、テル良い奴だよ?見た目はチャラいけど、喋ったら以外とそんなことないし。気が利くし。ユリア、まさかブラコン⁇」
「違うよ!」ユリアが必死になって言い返すのがおかしくて、アスカは大笑いしている。
「二人とも、お待たせっ!遅れてごめんね!」シュウとテルが二人で現れた。なんだか二人の距離が近い。笑あって、話をしている様子が、お似合いだった。
「買ってくるわ。シュウは何がいい?」テルがテーブルに荷物を置いてシュウに聞いた。
「え、いいよ!私が買ってくる!」
「俺何あるか知らないし。見て来たいから行くよ。シュウはユリアを構ってやって。後で金貰うから。」テルはシュウの頭をポンと叩くと、売り場へ行った。
  シュウが行こうとするのをユリアが止めた。
「シュウ、テルが何かしなかった?大丈夫?シュウ絶対綺麗だから、テルにエッチな事とかされそうで…心配。」
アスカがプッと吹き出しお腹を抱えて笑っている。ユリアはいたって真面目に言った。前の学校の時にも、色々あった。それで友達関係も上手く行かなくなったこともあった。
「大丈夫だよ。変な事されてないよ」シュウは、ニコッと笑ってユリアの頭を撫でた。
「シュウは手強いよ?簡単には落とせないし、なびかないから。」アスカはお腹を抱えながら言った。それでもユリアはやっぱり不安そうだ。
「アスカ、笑い声すごい響いてたぞ。何にそんなに受けてるんだ?」テルがタイミングよくアイスを持ってきた。ユリアは何でもないと慌てて首を振った。バレたら殴られる。テルはふーんとユリアを睨んだ。それを見てアスカが笑いをこらえている。
「はい、シュウの。」テルはトレイのアイスをシュウに渡し、自分はアイスカフェラテを飲んでいる。
「なぁ、アスカ、あの店員知ってるか?」テルはレジの方を、指差した。アスカは不思議そうにレジの方向に目をやった。見た目は金髪ショートで色白。目の色は淡い茶色でクリクリしている、綺麗なこと目があった。その子はアスカと目が合うと慌てて目を逸らした。
「んー、綺麗なこだけど…知らないな。でも、どっかで見たことある気がする」
「何か、テレビで見た事ある気がする」ユリアもうーんと考えている。
「あの子がどうしたの?」シュウが聞くとテルが険しい顔つきになった。
「あいつ、さっきここに着いた位から、俺に殺気むけてる。入った時はずっとアスカをみてたから。知り合いかと思ってた。」
「私を?よく来るからかな?勘違いじゃない?あ、もしかして綺麗なこだから、話しかけるきっかけ狙ってる?」
「違うって。しかも、あいつ結構強いぞ」
「なんでわかるの?」アスカが聞くと、テルはカフェラテを飲み干して何と無くと一言言った。
「悪い。気になるし、店でるわ。また明日な」テルがグラスを、テーブルに置いた。
「待って、お金っ…」シュウが渡そうとしたがテルはシュウの頭をポンと叩いて顔を近付けた。
「俺がシュウと一緒に居たかっただけだから。それで十分。」じゃあと言うと足早に店を出た。シュウは顔を赤らめてテルを見送った。
「テルのほうが手強いみたいね。」アスカは苦笑いした。
***
「いよいよ、ガイアとユウナの子達がシュウと同じガーディアン養成校に編入したのね。」
夕日が差し込むブルームーンの王室で、女王が窓の外を眺めた。
「あぁ。僕は全力でガイア達の子達を守るよ。もともと、ガーディアン養成校はそのために作ったんだから。」
女王は、窓を離れ王の側に寄り添った。
「分かってるわ…。私も同じ考えよ。イリヤ。でも、シュウを巻き込みたくなかった。」
「どのみち、あいつらが動き始めたらブルームーンの王族が1番に狙われるさ。奴らは、この国がセーレインをかくまっている事を知ってる。1番に狙われるのは多分シュウだ。僕を脅す材料にしてくるだろう。自分自身を守れる強さを身に付けて欲しかったんだ。」
「…あいつらは、ルシファーはもう気付いてるの⁇」
「分からない。ガイアからの連絡が途絶えてるんだ。…多分連絡も取れないほど緊迫してるんだ…。それか、もうやられたか。」
女王はその言葉を聞いて、声を詰まらせた。手は震えている。
「大丈夫。ミーナは心配しなくていいよ。ガイアは僕が知ってる限り1番強い。
 ただではやられないし、いま話したのはあくまで最悪の事態だ。」女王を抱きしめながらあやすような口調で言った。
女王は肩を震わせて、泣いているようだ。
「生きててくれ…ガイア…」王は祈るように呟いた。

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