ブレイブ!

桃楓

3

  ユリアとレイが教室に戻ろうとすると、バッタリテルとアスカに会った。
「テル!どうしたの?アスカちゃんと二人で?」
「そういう、お前らこそ、何で二人でいるんだよ!」テルがもっともなツッコミを入れた。ユリアはレイの顔を見てニコッと笑った。
「話がしたかっただけ。それより、シュウはどうしたの?」テルとアスカはさっきおきた事ををかいつまんで伝えた。レイは、少し考えてつぶやいた。
「…恨んでたからな。Bに落とされた事。」テルとアスカは顔を見合わせた。
「お前、喋るんじゃん!」
「レイっ!何の心境の変化⁇」
「…別に。」レイはむすっとして、足早に教室に入った。その様子を3人は微笑ましく見送った。
「シュウは大丈夫?」ユリアは心配そうにアスカに尋ねた。
「大丈夫よ。シュウは学校1の天使族だから。自分の傷位すぐに処置できるから。後で、一緒にお見舞い行こう!初めての、実技授業、遅れるわよ。」そう答えて、ユリアの手を引き教室に入った。
 午後からの授業は、実技室での授業だった。実技は魔法を使えるもの、使えないものも一緒な場所で行う。課題モンスターは、全員同じで倒し方や弱点をそれぞれで見つけ出すというものだった。間仕切りガラスルーム内を6室に区切り、その中で6人同時に行う。終わった後に戦い方と弱点をレポートにまとめて提出という形だ。終わった生徒から自由行動してもいいと、先生から伝えられた。
  ちなみに、天使族は戦い向きではないので、救護室で傷ついた生徒の回復に勤める。
  順番はガラスルーム外側の電光掲示板に映し出される。待ち時間は、ガラスルーム内の見学をおこなってもいい。
「よし!じゃあ、1番始めの人は見学も出来なくて不利だから、魔法部門と体術部門から1人ずつ手本となる人を選ぶわね。」イリーナがニッコリ笑って言った。
「テル、レイあなた達2人で手本を見せてあげて。」
「了解!」テルは立ち上がり、準備運動をした。レイは無言でガラスルームに入って行く。
「あ、おい!先走るなよっ!」テルも慌て剣を装備した。テルとレイはガラス側の部屋に隣同士で入った。
『始めはテルから。準備はいいかしら?』指示室からの呼びかけに、テルは手を上げて答えた。『モンスターを投入します。構えて下さい。』アナウンスが流れ、ゆっくり天井の扉が開いた。それと同時に、拳くらいのマリモのようなモンスターが飛び出してきた。マリモは、個体ごとに色が違うようだが、とても早いスピードで動きまわり、何匹いるのかも分からない。ビュンビュンと動き回りながら、魔法を放ってきた。テルはなんとかその魔法を交わしたが、あらゆる方向からイロイロな魔法が飛んでくる。剣で受けたりかわしたりしながら、モンスターの数を数えた。
(モンスターは、4匹。しかも、それぞれ、炎系、水系、雷系、風系の魔法を放ってくるようだな。)
  モンスターは、魔法を打つ瞬間一瞬止まった。本当に一瞬しか止まらない。
しかも魔法攻撃が飛んでくる。
(魔法攻撃自体はそこまで破壊力のあるものじゃないな。正面から切り込むか!)
  モンスターは、テルの狙い通り魔法をうってきた。その瞬間を狙って切り込んだ。1匹、赤いマリモが弾け飛んだ。次は氷の刃が真後から飛んでくる。それをジャンプしてやり過ごし、そのままの勢いでモンスターに剣を振り下ろした。青いマリモが弾け飛んだ。
連携してるのか、次は風の刃がとんできた。剣を使って、緑色のモンスターにそのまま弾き返した。モンスターにそのままあたり、弾け飛んだ。
(残り1匹!)連携の取れないモンスターが、1匹では攻撃出来ないのか逃げ回る。スピードが早いし、小さいので捕まえる事が出来ない。テルは追いかけるのをやめて、真ん中で立ち止まった。そこをモンスターが狙って魔法を放ってきた。
(よし!作戦通り。)雷がテルめがけて降ってくる。が、止まったモンスターにきりかかる。
『終了ね。タイムは4分。じゃあ、次はレイ。もう少し待ってて、モンスターの準備を始めるから。』
 ガラスルームの入口には、女子が群がっていた。テルは出るのをためらって、ガラスルームからレイの様子を見学しようとしている。
「…なんなの、テルって段違いじゃん!」アスカはユリアの顔を見た。
「そうなの?でも、なんか手こずってたよ?」
「だって、このモンスター、魔法攻撃の方が倒しやすい奴よ!それを、剣技だけで…。すごいセンスだね。」アスカに褒められると、なんだか照れ臭い気持ちになった。
『次はレイ。お待たせ。準備はいい?』レイは片手を掲げた。テルの時と同じように、モンスターが投下される。
  赤いマリモが火炎魔法を放った。それと同時に、レイは右手をかざして、氷の魔法を放った。氷は火炎を打ち消し、赤いマリモに当たった。左手は緑のマリモに向けられた。風の刃を放ったが、一足早く、レイの左手から炎の魔法が放たれ、風を受けて更に炎を増し緑のマリモに当たった。ほぼ同時に2匹を倒した。
「すごいね!レイさん!魔法を唱えなくても、魔法使えるんだ!」ユリアは興奮気味にアスカに聞いた。普通は魔法の紋章時間がかかる。唱える事で、魔力を集中させる事が出来る。そうしないと、魔法という形で放つ事が出来ない。悪魔族にしても、天使族にしても、人間と血が混じった時点で血が弱まるのだ。
「レイは魔力が強いから。まぁ、私も弱い魔法は唱えなくても大丈夫なんだけどね。」自慢げに言った。ガラスルームの中で、レイは最後のモンスターも倒し終わった所だった。

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