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 実践室には、机が2つ縦に並べてあった。
テルは前の席に座り、その後ろにユリアが座る。10時のチャイムと共に、教官とみられる若い女が入ってきた。
「はい、お待たせ〜。私が試験官のイリーナ・スミスです。これから、一般5教科総合問題と選択教科、並びに実技のテストを始めます。ちょっとハードスケジュールだけど、頑張ってください。筆記は2時間。机の上は鉛筆と、消しゴムだけよ。でわ、配ります。」
 机の上にはノート位の問題集が並べられた。この量を2時間で？ユリアは真っ青になった。
 試験官は、腕時計をみた。
「はい、始めっ！今から12時5分まで。」 表紙をめくると、1ページ目は数学だった。1ページ目から全く分からない…。とりあえず分かるものから解いていこうと、次のページに移った。
 前の席のテルは、耐えず鉛筆を動かしていた。本当に、なんでこんなに違うんだろ。
 ユリアは、頭を抱えながら、次のページをめくった。
            ＊                 ＊                 ＊
 「はい、おしまい。回収するわよ。結果は実技試験の間にだします。知ってると思うけど、うちはエリートクラスと、一般クラスがあるから。筆記と一般の合計点数で決まります。まぁ、実技試験の結果が優先だけど。実技試験は、1時に
この校舎の5階、テストルームでやるから。じゃあ、お昼食べて。時間厳守ね」
 一気にそれだけ伝えると、試験官は教室を後にした。
「全然分からなかった。」ユリアは机に倒れこんだ。
「大丈夫だろ。実技あるなら、一般は確実だろ。」
テルはニヤつきながら言った。やっぱりバカにしてる。実技は、駆除対象モンスターとの実戦と書いてあった。
 ユリアは、短剣術と、体術の実技検定では、1級を持っている。モンスターとの実戦も何度もやってきた。だから、自信はある。でも、テルのようにどんと構えることがどうしても出来ない。
「そこでずっとしょげてろ。俺は昼メシ買ってくる」テルは鞄から、財布を取り出し、部屋を出ようとした。ユリアは緊張し過ぎて食べる気にならなかったので、教室に残ることにしてテルを見送った。テルが教室から出た瞬間女の子達の声が響いた。
「ウチの制服ぢゃないですね？」
「何才ですかー？」
「もう、編入決まってるんですかぁ？」テルは適当にあしらっていたが、すぐに教室に戻り、バタンと戸を閉めた。
「ユリア、お前が買ってこい！面倒くさい。弁当と、パンと唐揚げ。あと、コーラとサーモンサラダ！いいな。弁当はガッツリ系で。売店はこの校舎の真ん前！分からなかったら、電話しろ。いいな⁈」
…やっぱりこうなる。
ユリアは、渋々財布を受け取り、教室を後にした。扉を開けると、派手なかんじの女の子にかこまれた。
「ねねっ、彼なんて名前？あなた達兄妹？めっちゃ似てる！お兄ちゃん？めっちゃかっこいいね？」
「よかったら、この学校の事教えるし、アド交換しよー」
テルがダメなら、私に取り入る作戦かっ！確かに面倒。
ユリアは、猛ダッシュでその場を後にした。後ろから声はしたが、聞こえない振りで逃げ切った。
 休みで人もまばらなのに。テルは、身長185cmあるし、髪もアッシュ系の色だから、目立つ。
(帰りはいませんように！)
そう願いながら売店へ向かった。
         ＊                 ＊                 ＊
「ふぅ…」ユリアは大きな溜息を尽きながら、教室に入ってきた。
「あ、サンキュー♩」
 散々な目にあった。結局、帰りも待ち伏せされて、大変だった。
そんな事お構いなしに、テルは買ってきたものを開けた。
「あ、てめ〜。ガッツリ系だって言ったたろ。何でのり弁なんだよ。」
買ってきたのに文句まで言う。何て兄だ。ユリアは、テルを睨んだ。テルは、素知らぬ顔で、弁当と唐揚げ、パンを食べて満足そうだ。
「よし、食ったしそろそろ行くか！」
時計を見て、二人は5階に向かった。